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ちしきの金曜日
 
学ランは今
ヒップホップ?スケーターパンツ?


学生時代の制服って学ランでした?『ビーバップハイスクール』は読んでました?まぁ『ゴリラーマン』でもいいや。その辺のマンガを学生時代読んでて、制服が黒の詰め襟、いわゆる学ランだった人は総じて「変形学生服」に胸をときめかせた事があると思います。休み時間、制服カタログを中心に男2,3人集まって「『ヒロシPART2』カッケー!」とか言い合ったり。

しかし同時期、全国で制服のブレザー化が進み学ランは減少していったような気もします。それと共に変形学生服も。当時の中高生にとっておそらくファッションに興味を持った最初のきっかけである学ラン。その現状をお店の方に聞いてみました。学生時代は中ラン・ボンタン派、ブランドは共にBLACK ONEの大坪がお伝えします。

大坪ケムタ



学ランからブレザーに変わった理由、それは‥

学ラン、特に変形学生服の現状について話を聞くために最初はメーカーをあたろうとしたのだけど、これが全然見あたらない。メーカーの公式サイト的なものもほとんどなく、ようやく見つけた連絡先に電話して取材を申し込もうとしても「そういうのは分かりかねます‥」と断られる始末。うーん。

そこで平行して探していた学生服ショップの一軒に取材を快諾していただきました。埼玉県川越市の「学生服のマスコ」さんだ。制服の販売をはじめて31年という老舗にして、HPに浮かぶ文字は「中ラン・短ラン・ボンタン・ドカン」。これですよ、コレ。ちなみに今回は学ラン専門用語多少入ってきますので、分からない場合はマスコさんのHPで詳細を。セミ短・短ラン・極短の違いも一目で分かる初心者にも優しいサイトです。

取材当日、制服のモデルとして同行をお願いした水曜ライターの大塚さんとお店に行ってみると‥学生服よりもパンクとフラなファッションが前面に出されてる。


店頭は左がフラ、右がパンク系中心。

よく見たら「学生服は店内奥」の案内が。

今回話をうかがう店長の益子さんにあいさつして、学生服コーナーを見せてもらうと、それはお店の奥の一角。たしかに漆黒の空間があるけども‥もっとズラっと並んでいると思ったら。

でも、貼られてあるラベルを見ると「そうそうこれこれ!」と早々に嬉しくなる!この独特のネーミングこそ変形学生服。


現在の制服コーナーはこれだけ。

でも、このネーミングの感覚とかは

昔と変わってないんだなぁ。

益子さんによると昔はこの10倍以上、それこそこの店ワンフロア全てが制服で占めていたという。その数、上着だけで200着、ズボンが300着!まずは最盛期の頃の話を聞いてみた。

「最初は普通の学生服を販売してたんですけど、77年くらいからデザインが増えてきて。メーカーさんもカタログ作り出したりしてね。それで最盛期が80年代半ばくらいですね。85年に『ビーバップハイスクール』が映画化されたんですけど、その頃がピークで。」

−−一番多い時期って何社くらいあったんですか?

「はっきりは分からないけど‥当時は主要なところだけで20社くらいメーカーがあったんじゃないかなぁ。カンコーとかトンボとか標準学生服に、変形学生服だとジョニーケイとかベンクーガーとか‥もうずいぶんおとなしくなっちゃいましたけどねー」

−−当時は川越市中から中高生がお店に来てたんですか?

「当時は川越を中心とした半径15キロくらいが商圏でしたね。東は大宮の手前、南は所沢あたりで」


おおよそこの範囲で西から!東から!

−−当時はどこも学ランで。

「そうですね、100校くらい相手にしてたんじゃないですか。それが80年代後半からブレザーに変更していくんです」

−−あー、その頃の印象ありますね。「かわいい制服」を売りにする学校が出来たり。

「それはどういうことかというと、先生方が生徒の制服の取り締まりが大変だと。それに加えて、学生服メーカーが自社の売り上げを確保するために生地メーカー・小売店と組んで『オリジナルの制服を作りませんか』ともちかけたんです」

−−そういう理由が!ある意味、変形学生服メーカー潰しみたいな。

「それはありましたね。ブレザー制服って学校とタイアップして作るからひとつひとつ違うんですね。黒の詰め襟みたいに、ひとつの種類をロットで作れないんですよ。まとまった数にならないから。それに生地もメーカーさんが出してくれないし」

−−学ランみたいに「ちょっと違う制服」てのが作れないんですね。


なるほど、学ランと違って「変形ブレザー」てのが出来ないはずだ。ただ、では80年代以降どこの学校もブレザーに‥というとそうでもないとか。

「もともと学ランだったところの60か70%はまだ学ランですよ。まだ昔ながらの伝統校や有名進学校なんかは黒なんで」と言う益子さん。あれ、では何で変形学生服のスペースはこんな狭くなっちゃってるんですか?


「学生服自体に興味のある子が減ってるんですよ。興味がないから別になんでもいいんです。だから、今入学時期とかになるとお父さんと子供が学生服を買いに来るんですけど、お父さんは自分が来てた中ランとか短ランを見て『こっちの方がいいんじゃない?』って子供に薦めるんですよ(笑)。でも子供は『何でもいい』って。そういう光景が非常に多いですねー」

−−「制服で個性を出す」ってのが無いんですねぇ。

「少なくなりましたね、そういう意識は。昔は中2以上でお父さんやお母さんと学生服買いに来てるのを見ると『ずいぶん奥手だなぁ』って思ってたけど、今はそういうのも感じなくなりましたね」

−−子供も納得してるなら仕方ないですもんねー。

「あとお母さん方も『中学は学ランでも高校はブレザーになっちゃうかもしれない』と思って、3年間を一着で済ませようとするんですね。だからすごくデカいのを買っちゃうんですよ、最初のうちに。昔は入学の際、最初の身長より10cm大きくなっても大丈夫なサイズをこちらも選んでたんですけど、それじゃもうダメですね。15cm、20cmじゃないと。だから入学当初は皆ブカブカですよ」

−−買い控え傾向なんですね、制服も。

「80年代当時は中高続けて学ラン着るってのが多かったから、普通の人で中学入学・中2・高1から2年の間、と最低3着は買うんですよ。これが学生服に興味ある子ならこの倍買いますから。2着3着買う子も珍しくなかったですね」


変形学生服が減った理由、それはブレザーが増えたからだけではなかった!今の中高生もオシャレさんだからねぇ、『メンズナックル』とか読んでんだろ?どうせなら制服より普段の服装に金かけたいのだろうか。

あらためて見直そう、学ランのオシャレ!ということで80年代、90年代、そして最近の人気の学ランスタイリングを益子さんにお願いしてみました!


見えないおしゃれといえば裏ボタン。
悪悪髑髏悪悪。悪すぎ。

 

 
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