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ロマンの木曜日
 
ふつうの日記を日本史風に

僕のふつうの一日、ダムめぐりしますよ

 たとえば「本能寺の変」とか「島原の乱」のように、日本史ではかつての出来事を「変」とか「乱」などの漢字一文字で表現しますよね。今でいうクーデターのような大事件でも、単に「変」。

あれが、超クールだと思いました。

自分でも、後々の世にこういう表記で何かを残したい。

かと言って騒ぎを起こすわけにはいかないので、ふつうの日記を日本史風に表現してみました。

萩原 雅紀



まずは基礎知識

歴史上の出来事の表現について少し調べたところ、主に使われる一文字は「変(へん)」、「乱(らん)」、「役(えき)」の3種類。あれ、そんなもんでしたっけ。そして、どれも争乱を伴って世の中が動いたことや、争乱そのものを指していることが多いようです。

どうも使い分けに明確な定義はなさそうなのですが、大まかに以下のような基準で使用されるようです。

  • 「変」…成功したクーデター。成功して世の中が変わった、という勝者の視点から。
  • 「乱」…失敗したクーデター。反乱が起きたものの鎮圧した、というこれも勝者の視点。
  • 「役」…他国や辺境での戦争。他国からの侵略(元寇=弘安の役)でも使われる。

超クールだけど、どれも物騒なものばかり。ちょっと自分の日記で使う機会はなさそうなので、ここでは一文字表記を新たに作り出すことにします。

 

ここから日記です

ちょくちょく書いていますが、僕はダムが好きで、全国各地のダムを見てまわるのを趣味としています。でも多くのダムは山間部にあり、冬の間は積雪や路面凍結のため、ダムめぐりはオフシーズン。しかし3月になり、だいぶ暖かくなってきました。路面凍結の心配もなくなったので、今シーズンのダムめぐり開幕として、少し遠くのダムに出かけてみることにしました。

しかし春眠暁を覚えず、とはよく言ったもので、この日も見事に寝坊。明け方には出かけるつもりだったのですが、気がついたときにはすっかり明るくなってしまっています。頭はまだ目覚めずぼーっとしていますが、目的地は遠いのであわてて出発しました。

手はじめに、この起床の模様を、歴史的な出来事として表現してみましょう(NHK大河ドラマの語り部の声を想像して読んでください)。

 

――長く厳しい冬も終わりを告げ、堰堤巡礼に旅立つ平成二十年弥生の月。しかし春眠暁を覚えずの言葉通りに寝坊し、大慌てで武蔵国を発ちました。これを見た人々が後に「弥生の起(き)」と呼んだのであります――


…おあようございます

ダムを撮影するためのカメラや三脚、地図などを抱えて、愛車が停めてある駐車場へ来たとこえろ、一瞬目を疑いました。数日前に洗車したばかりにも関わらず、車の上には花粉、黄砂、鳥糞、猫の足跡が蓄積し、見るも無惨な姿に汚れているのです。くそーっ、洗ったばかりなのに!花粉のバカ、黄砂のバカ、鳥のバカ、猫のバカ。

 

――数日前に手入れをしたものの、花粉や鳥糞により汚され無惨な姿を晒す愛馬。この汚れは俗に「粉糞の汚(お)」と言われます――


洗ったばかりなのに


…完成度はともかく、やりたいことは何となく分かってもらえたでしょうか。

分かっても分からなくても、とりあえずダムに向かいます。

 

美濃国のダムへ

出かけるのが遅くなったので途中すっ飛ばして、岐阜県と愛知県の県境にある矢作ダムというところにやってきました。初めて来るアーチダムですが、中京地域のダム好きは皆ここでアーチダムデビューを飾る、と言われているだけあって、高さと幅のバランスが良くとてもカッコいいダムです。久しぶりのダム見学ですっかり興奮。長時間の運転の疲れも忘れて歩き回ります。


はるばる岐阜までやってきましたよ このカッコいいダムを見に

この日は気候がよく暖かかった上に風が強く、こんな山奥では花粉の飛ぶ量が凄まじかったようです。僕はふだん花粉症の症状は出ないのですが、ここではさすがに目や鼻がむずむずしてきました。へーっくしょい!

鼻水が垂れてきたので見学を中断。鼻をかんでスッキリさせましょう。ずびー。

 

――矢作堰堤上で大量の花粉の襲撃に遭い、痛手を負ったためやむなく一時退却。鼻紙で応急手当を行ないました。これがいわゆる「矢作の噴(ふん)」にございます――


チーン

続いて向かったのは、30分ほどの距離にある小里川ダム。最近完成したばかりの重力式コンクリートダムで、新世代のダムを象徴するかのような大胆なデザインが特徴。以前にも「水車がでかい」という記事で紹介したことがあるほどお気に入りのダムです。

そこへ向かう途中、喉が渇いたので飲み物を買おうとお店を探していると、「明智駅」というローカル鉄道の小さな駅にたどり着きました。おおっ、この企画を思いついたのも明智光秀による本能寺の変があったからこそ。不思議な因縁を感じたので記念撮影。また、その近くに謂れが不明の「明智警部補交番」という不思議な名前の交番があったので、こちらもいちおう撮影。明智警部補って誰なのでしょうか。

 

――次の堰堤への旅の途中、光秀公ゆかりの茶店に立ち寄って喉を潤し、また近くで奇妙な名前の奉行詰所を発見したと残しています。つまり有名な「明智の飲(いん)」と「明智の撮(さつ)」です――


コーラうめー 明智警部補交番?

 

欧羅巴のダム

寄り道のあと、小里川ダムに到着。このダムはエレベーターでダムの下に降りて、100m以上もある神殿のような巨大なコンクリートの壁を下流側から見上げることができます。僕のいちばん好きなダムのアングルなので、さっそくエレベーターで下へ。いやー、何度見てもいい光景です。癒されます。

 

――愛馬に鞭を入れて、小里川堰堤へ。此処は籠で河原に降り、大阪城の倍高い壮大な欧羅巴建築の堰堤を眺めると、我が身の小ささを痛感するのです。これが「小里川の癒(い)」として伝えられています――


癒されるわー

エレベーターで上に戻ると、行方不明の人の捜索チラシが貼られていました。さっそく周囲を探しましたが、行方不明の人はおろか、ダムにはほとんど人がおらず探すまでもありませんでした。

 

――尋ね人の張り紙を見つけるものの、此処に来るまで旅人にも会っておらず、探しても手がかりひとつ見つけられなかったとのことです。このことは「小里川の探(たん)」と呼ばれています――


そもそも人がいなかった

完全にワンパターンな展開なので、もう飽きました?

でもあくまで日記なので、もう少し続けさせてください。


 

 
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