●もはや飛び地であることを忘れ去って
飛び地であるということでやってきたこの船橋市丸山なのだが、もうそのことは別に忘れてくれてもいいです。
昔風情のそば屋さん。入口の引き戸におすすめメニューらしきものの張り紙がしてある。「さんま丼」。あんまり聞いたことがないどんぶり物だと思う。
丸山の町は基本的に住宅街と言っていいと思うのだが、新興の住宅地にあるような、企図が顕著に感じられるような雰囲気ではない。住んでいる人たちの生活のにおいが自然と色濃く漂う、味わいのある町だった。
駄菓子屋に置いてあるゲーム機も、最近のカードタイプのものではない、かなり懐かしいもの。
取材したのは土曜日の午後、まだ4時前だったがカラオケ居酒屋からはいい調子で音楽が流れ漏れてきていた。小さなスーパーに立ち寄ったら、トマトが6個で198円と安かった。
町内には個人商店もいろいろと立ち並ぶ。街灯には「第一踏切商店会」との表示があった。
踏切を商店街の名前にフィーチャー。これはアグレッシブなのかディフェンシブなのか、一体どっちなんだろうとしばらく考えたが、そういう軸で見るべきものでもないように思えた。
当日撮った写真を整理していると、またも謎のものを発見。
どうしてこんな写真を撮ったんだとしばらく考えて思い出した。同行の妻から、うちにもあんな軒をつけたいから撮っておけと命じられて撮影した一枚だ。
こんな軒をつけたいのか。初めて知る妻の心。
飛び地をさまよう中、どんどん無口になっていった妻が久々に口を開いたのがこれだった。画像の外に私たちを包む重苦しい雰囲気が読み取れると思う。
この写真も、妻が「撮っておけば」と言ったので撮っておいたもの。松が斜めに長いね、と、そんな言葉のやりとりをした覚えがある。確かに松が斜めに長いと思う。
ただ、家に帰ってパソコンの大きな画面で見て気がついたことがあった。写真右側の部分の奥だ。
●柴犬が気になる
最後の写真の「柴犬 柴犬」っていうのはなんだろう。撮ったときは気がつくことができなかった。気がついていたらもっと近くまで寄って確かめたのに。
今となっては悔しいばかり。いつかもう一度、柴犬のことをはっきりさせるために訪れてみたいと思う。