これはモンブランか?
卵黄を加えたネギトロ風味のマグロは、こちらの予想をはるかに上回る勢いでニョロニョロとごはんの上に山を築いてゆく。
絞っている途中で成功を確信した。確かに山の形になっている。面白いくらいに標高が増す。
しかし、果たしてこれはモンブランなのだろうか。
完成した時は感動した。そして「これはモンブランだ!」と思いながら夢中で食べた。普通においしかった。
しかし、こうして改めて写真で見ると生肉っぽく見えるせいか、どこかグロテスクな気配を感じなくもない。
成功したはずなのに、なにかしっくり来ない。ナマっぽい見た目がいけないのか、赤い色がアウトなのか。
ならば、と次なる標的に的を絞った。
火を通せばいいのだろうか
冷蔵庫には、前の日に買ったサバが入っている。当初の計画通り味噌煮にしたのだが、これならどうだろう。
加熱されているし、身も白っぽいし、よりモンブランに近づくような気がする。間違ってもグロテスクな見た目にだけはならないだろう。
どうも、さっきのマグロに比べるとなめらかさが格段に足りないような気がする。よかれと思った「加熱」がアダとなったのだろうか。それとも味噌が足りないのか。
ともかく、ごはんの上に絞り出そうではないか。
見ようによっては、さっきのマグロよりもよっぽどグロテスクかもしれない。しかし、味はあくまでサバ味噌だ。当たり前だ。ポロポロになったが、これはこれで食べやすい。見た目もどこかシーチキンっぽいし。
…って、待て。こういうことがやりたかったのではない。目に美しく、スイーツにも引けを取らない辛党なりのモンブランを作ろうという当初の目的を忘れてないか。