●最高にオッパイ的な「む」を求めて
ここまで読んでくださったのであれば、そろそろ「もう『む』を見たらオッパイにしか見えない」というところまで心の目が育ってきている頃だと思う。期待に沿えるような「む」を書けるよう、がんばってみよう。
しかしいざやってみると、なかなか難しい。書く前は「こんなの簡単にできるだろう」と思っていたのだが、かなりの数を書いても納得のいくものはできない。実際に書いてみたものを検証してみよう。
ある部分がうまくいっても別のところがうまくいかなかったりと、完全なオッパイ性を持ったものが生まれてこない。
目をつぶって気持ちを集中させる。暗闇の中に理想的なオッパイ像をイメージする。それがはっきりしてきたところで目を開き、一気に書き上げる。
それでもダメなのだ。こんなに難しいことだったのか。
そんな私の様子を見た妻が、「うーん、こんな感じ?」と、ひとつ書いてみせた。
まずい、うっかり欲情してしまいそうな「む」だ。
私がさんざん苦労していたのに、一発でこれを書いた妻。斜面を滑り落ちる線が先っぽのところでくるりと向きを変え、ふくよかな曲線を描いて下降し、再び持ち上がる。すばらしい、美しいではないか。
負けたくない。自分の「む」もどうにかしたい。
他にもより適した見本を探して、家にあった習字のテキストを開いてみた。別にオッパイ的な字を書くためのテキストではないだろうが、何かの参考にはなるのではないかと思う。
さすがにひらがなのページにある見本はかなり達筆だ。ここにある「む」はどんなものだろうか。
なるほど…。筆のやわらかい線が効果的に生かされていて、つるんとした感じのオッパイ性が浮かび上がっている。こういう感じも出したいものだ。
そういうわけで、今度は筆記具を筆ペンに変えて練習。サッとフランクに書いたり、慎重に筆を進めてみたりと、いろいろ変えながらひたすら「む」を書く。
それでもなかなかうまくいかず、イライラしたりもした。コーヒーブレイクをはさんで新しい紙に向き合ったりもした。
繰り返して書いた中、今回のベストはこの「む」としたい。
自分のイメージの中にある最高のオッパイが書けたというところまでは行かなかったが、まあ悪くはないと思えるものは書けただろう。じっと見つめていると、愛しさのようなものも湧いてくる。
今回はこれを到達点とするが、これからもより理想的な「む」を書いていこうとする気持ちを忘れないようにしたい。
●心開けば見えてくる
何気ないひらがなの新しいビジョンを提案した今回の記事。みなさんの心に「む」がオッパイに見えてくる眼鏡をかけることができたなら、私が試みたことは成功である。
これからも「む」を書くときは、特別な感情をもって丁寧に書いていこうと思う。