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土曜ワイド工場
 
田舎でフリーハグ


フリーハグという行為が静かなムーヴメントになっているらしい。『FREE HUGS/フリーハグ』と書いたものを持ってただ街頭にたち、道行く他人と抱擁するというものである。自分のほうから声をかけて誘ったりはしない。誰かが応じて抱きついてきてくれるのを待つのみだ。 ぼくがこれを知ったのは、テレビ番組『探偵! ナイトスクープ』でだった。西田敏行は例によって号泣していて、実際ぼくも、なんだか感動した。 だが、こういった行為というのは、(日本においては)都会だからこそ受け容れられるものだという気がする。都会には新しいもの・変わったものを受け容れる土壌ができているのだ。 じゃあ、田舎でフリーハグをやってみたら、どんな反応がかえってくるのだろう。知りたかったのでやってみた。

(text by 櫻田 智也



● 田舎を目指す

ぼくの住んでいるところは岩手の県北にある葛巻という町で、いちいち目指さなくてもここでじゅうぶん田舎である。しかしながら、知らない人とハグしたいというのに顔見知りばかりの町内に突っ立っていても意味がないので、隣村へと足をのばすことにした。 この日、気温は日中でも2℃。はやく抱き合ってあたたまりたいものだ。


ひろがる牧歌的風景

あたたかみのある立て看板
そのぬくもりに用がある

というわけで、車で20分ほどのところにある九戸という村にやってきた。ここがフリーハグ決行の予定地である。寒さのなか、もうじき白い雪に埋もれてしまうであろう畑で作業をする初老の男性をみつけ、こちらから抱きつきたい衝動にかられるも、それはフリーハグではない。どちらかといえば痴漢行為である。

さっそく立つのに適した場所をさがそうとウロウロしてみる。すると……。



 !!

いやいや。ここでそんなの持って立ったらダメだから。
抱きつかれたら大変だから。



!!

ダメだってば。
デジカメのせてるそれ狛犬だってば。

さて、気温2℃のなか遊んでいる場合でもないので本腰を入れて場所をみつけることにしよう。さらに車を走らせると、だいぶ街といえる雰囲気になってきた。いいぞいいぞ。
途中、乳母車を押したおばあさんを追い越した。先に行ってるぜ。あとで抱いてやっから!

そんなわけでテンションも上がってきたのだが、それと同時に先刻まではなかった緊張感が湧き起こってきた。申し遅れましたが、わたくし、産まれついての人見知りでございます。大丈夫だろうか、うまく抱けるだろうか。震えたりしないかな。それはちょっと恥ずかしいな。

緊張をほぐすためにも、本番前になにか抱いておいたほうがよさそうだ。
なにかないかとさがしていると、ちょうどいいカボチャがあった


道端の巨大カボチャを抱く

感極まる

というわけで、フリーハグに応じてくれる人は皆カボチャだとおもって抱くことにしよう。
そういえば、緊張しないための方法で、そんなの聞いたことあるな。


 

 
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