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フェティッシュの火曜日
 
ダム湖に沈んだカメラを見に行く

あの日見た泡がここによみがえった

続いてカメラを見つけに行く

水中カメラはその場でモニターチェックができないので、どんな映像が撮れたのかはわからない。それでもカメラを故意に沈めるという作業の珍しさからかそれとも達成感からか、何か一つ整理できた気がした。続いてカメラを見つけに行く。

今日の目的は「カメラを探しに行く」ではなく「カメラを見に行く」である。湖底のカメラを引き上げることなんてできないだろう。なくした物を取り戻すのではなく、見に行くという行為が今日をやりきれない気持ちにさせていた。前年度甲子園の敗者が予選敗退しても決勝を見に行くようなものである。

しかしそれでも見るだけでも見たい。見られるものなら見ておきたい。高校球児は皆こんな思いでいたのか。

 

ダム愛好家萩原さんに発見の可能性を聞いた

「ああ、あそこのダムの…。うーん、でも多分、土砂に埋まってるかもしれないですね。ダム湖って土砂がすごいんですよ。どんどん上から土砂が積もってくから…むずかしいかもしれないですね。」

 

見つかるかどうかじゃない、これは神話だ

カメラを沈めたあの日のことはできるだけ思い出さないよう記憶の層の一番深いところにしまっていた。水中カメラが探るのは、僕の記憶の湖底に沈むカメラであり、カイツブリが水の底に潜り泥をくわえて戻って大地を創造した神話のようである。大変残念なことに僕は本気だった。


行け、おれのアースダイバー

単体では浮いたので、三脚を重りにして再度挑戦する

成功、後は映ってることを願うのみである

全部終わったら、なぜか顔がおじいちゃんのようになりました

 

全て終わり、なぜか老いた

とある野球マンガに、実年齢は老人なのに異様に若いピッチャーが出てくる。しかしライバルに渾身の一球を投げた後、なぜかおじいちゃんになってしまうのだ。つまりそれだけ渾身だった、とマンガ内ではそんな解説があったように思う。

こうして僕はダム湖に沈んだカメラを見に行った。そしたら顔がおじいちゃんのようになった。分かったような分からないような話だった。

家に帰って水中カメラの映像をチェックした。


果たして、沈んだカメラは写っているのだろうか

 

終わりに

正直に言うと、湖底のカメラが写っていても写っていなくてもどうでもよかった。(もっと正直に言うと、写るわけがないとも思っていた)

しかし今日僕は何かを回収した。沈んだカメラを見に行くだけだったが、全部終わると欠落した何かを、それこそ本当にカメラを探し当て取り戻したような気がしたのだ。

さてこういうレポートはどうしめくくるものだったか。

カメラを沈めるのは最高である。あなたも湖底にカメラを沈め、そして後日見に行ってはいかがだろう?

これではなかったか。

終了後バスを待っている間の一枚。この後、後ろの外国人カップルとバスに乗り合わせるのだが…

充実した一日だった

こうして写真や動画でふりかえると、やり終えた後はちゃんと笑顔に(そしておじいちゃんに)なっている。すぐ顔に出てしまう方だがここまで顕著だと恥ずかしい。ということで、バス停近くで雨宿りの一枚も充実がうかがえる写真になっている。しかしこの後ろのカップルであるが覚えているだろうか?

行きのバスでの一枚であるがここでも乗り合わせていた。それは覚えていたのだが…


こちらは行きの青梅線での一枚。なんとここでも写っていた。

ダム神様だ

帰りのバス車内では同行者の石川と「またあの人たちと一緒になった」と笑っていたのである。しかし今記事を書いてて写真を見直して驚いた。

ずっと一緒だったのである。オフシーズン、雨でしかも寒かった奥多摩である。誰もいないと思っていたらずっと一緒にいたのである。

僕は今、もしかしてこの人たちはダムの神様(の化身?)だったんではないだろうかと思っている。それこそ初めに言った、ビデオカメラをダムの神様にささげたということなんだろうか。いや、疲れたからもうそういうのはやめにしよう。


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