自分のプライバシーは自分で守るしかない。例えば、夕方のニュース番組にチラッと写ってしまい、それが仕事をさぼっている最中だったりしたら最悪だ。そういう時に限って、その映像を関係者が見てしまったりする。「あ、東京にいないって言ってたのに!」と一発で嘘がバレてしまう。
そんな事にならない為に、プライバシーを保護してくれるメガネを作ってみた。
(text by 住 正徳)
モザイク処理で目線を隠す
プライバシーの保護、といえばやはりモザイク処理であろう。隠したいもの、見せてはいけないもの、そういった事情のある画像にモザイク処理を施すのだ。日本のテレビ番組で初めてモザイク処理を導入したのは「象印クイズヒントでピント」だ、とテレビで言っていた。番組のためにNECが開発したらしい。
「プライバシー保護メガネ」にもそのモザイク処理を使う。顔写真にモザイク処理を施して実寸で出力、それをメガネに貼付けるのだ。
作り方は簡単なので、順を追って説明しよう。
まずは普通に顔写真を撮影する。実寸で出力するため、なるべく解像度は大きめにするのがポイントだ。
撮影した写真にモザイク処理を施す。フォトショップなどの画像加工ソフトを使えばあっという間にモザイクが出来る。今回のモザイクは1セルあたり50平方ピクセルとした。1セルあたりのピクセル数が小さければ小さいほど、元の画像が見えやすくなってしまうので注意しよう。モザイク処理におけるピクセル値は、日焼け止めクリームのSPF値のようなものであろう。SPF値は、その数値が高ければ高いほど効果の持続時間が長い。
モザイク処理をかけた部分だけを切り抜き、A4用紙に実寸サイズで出力する。失敗してもいいように、モザイク部分を用紙いっぱいに並べるのが2つ目のポイントだ。
出力した用紙をハレパネに貼り付け、カッターで切り落としていく。
ハレパネを切り落とす際、定規を原稿側(モザイク画像)にあてる。これが3つ目のポイントである。こうする事により、誤って原稿部分を切り落とさずに済むのだ。
モザイク画像を切り落としたら覗き穴をあけよう。あまり大きな穴をあけてしまうと、そこからプライバシーが漏れてしまう可能性があるので、出来るだけ小さな穴にしなければならない。そこで今回は画鋲を使う事にした。画鋲ほどの穴でも視界は十分に確保出来る。
穴をあけたら両面テープでメガネに貼り付ける。 これで「プライバシー保護メガネ」の完成である。
装着してみよう。
かけるだけで見事にプライバシーが保護された。これならば誰だか分からない。僕の親が見ても分からない。
「こないだ、まーちゃんにそっくりな人を見かけたわ」
きっと母はそう言うだろう。
しかし、
画鋲の穴は想像以上に小さく、視界が極めて悪い。ここぞ、という時にはメガネをずり降ろさないと良く見えないのだ。
視界の確保において、多少の改善点はあるものの、とりあえずこの「プライバシー保護メガネ」の威力を試してみる事にした。
普段の生活において、もっともプライバシーの漏洩が気にかかる場所に行く。そう、レンタルビデオ屋さんである。
レンタルビデオ店でプライバシーを保護
プライバシー保護メガネを持って、都内某所のレンタルビデオ店にやって来た。プライバシーの保護を徹底するため、生活圏内から大きく外れる場所を選んだ。プライバシー保護メガネがあるのでもちろん安全なのだが、念には念を入れた。
18歳以下は入る事の出来ない場所。そこでプライバシーを守りつつ、じっくりと作品を選ぶ。それが今回の目的である。
「18禁」ののれんをくぐると、そこには一筋の光が射し込めていた。ポケットから「プライバシー保護メガネ」を取出し、素早く装着する。これで僕のプライバシーは守られるのだ。
プライバシーを守りつつ、
作品を吟味。
ジャケットの裏には作品に関する情報が詰まっている。作品のダイジェスト写真やストーリーの概要など。それらを画鋲の穴越しに閲覧するのは難しいので、メガネをずらして作品情報を吟味する事にした。少しずらせば良く見えるのだが、メガネをずらしている時、僕のプライバシーは漏れてしまっているのである。このような危険な行為はなるべく避けなければならない。
大きな落とし穴が
検討の結果、いくつかの作品に絞る事が出来た。あとは、このメガネをつけたまま受付に行ってお金を払いお店を出る。そうすれば僕のプライバシーは完全に守られる訳だ。
あと一息。 と、その時、ある重大な事実に気付いてしまった。
DVDを借りるには、会員登録が必要だ。
あえて遠い場所を選んでしまったので、このお店に来るのも初めてである。もちろん会員登録もしていない。どうしたらいい?
仕方ない。会員にならなければ作品を借りる事は出来ない。カウンターで会員登録の手続きをする事にした。
免許証の提示を求められ、入会申込書に個人情報を書き込んだ。これまで「プライバシー保護メガネ」によって守られてきた僕のプライバシーがだだ漏れである。
もうこうなったら堂々とさっき選んだ作品を借りてしまおうか。
不測の事態に備え、「ローマの休日」も手に取っていたのだ。全ての個人情報が伝わってしまった今、さっきまで吟味した作品を借りる訳にはいかない。
「真実の口のシーンってグレゴリー・ペックのアドリブなんですよねぇ」
などと店員さんに声をかければ、「この人は本当にローマの休日が好きな人なんだなぁ」と信じてもらえるので、是非参考にしていただきたい。
プライバシーの保護は大変だ
まあ、そもそもあんなメガネをかけて外をウロウロしている時点で目立ってしまう訳で、プライバシーを守る前に「人として大切な何か」を失ってしまう可能性がありそうです。
つまり、プライバシーが漏れて困るような場所にはいかない事。それを冬休みの目標に掲げたいと思います。