台所でゴージャス

口からお湯が出る金色のライオン、そいつがいる場所はいつも決まってお風呂です。しかし、なぜお風呂だけなのでしょうか。ゴージャスな気分を味わえるなら、もっと他の場所、例えば台所などにあってもいいと思うのです。

というわけでライオンをセットした台所で洗い物をしてみました。が、なんでしょう、ゴージャスとはちょっと違う気がします。まずこの見た目、決して優雅というものではなく、なんか日常の中に異物が紛れ込んでるぞ、という違和感。そしてそこに加わる洗い物という行為。この行為自体がゴージャスとかけ離れているというか、優雅さは必要なくて、ただ一心不乱にやりたいという欲求さえ沸いてきました。

もしかしたら家事というものは達成感を得るための自分との戦いなのかもしれません。きっとそこに、ちゃらついた気分など必要ないのでしょう。

ビールでゴージャス

わかりました。家事にライオンは必要ありません。ならば、もっと愉快な気分のときにライオンを使うべきです。愉快な気分、それはビールかもしれません。

親戚の全面バックアップの元、ライオンとビールサーバーのコラボレーションが実現しました。ろくな説明もしなかったのに快く引き受けてくれたみなさん、ほんとうにありがとうございます。

やりました、いとも簡単にあっさりとビールが出ました。早く、早くそのビールを僕の手元に。

どうですかこのうまさ。やっぱビールは美味しいですよね。缶とか瓶とかあるけど、やっぱサーバーのビールってのは格別なものがありますよ。

しまった。しくじりました。ビールが飲める喜びが先行して、迂闊にもライオンのことを忘れていました。今飲んだビールはゴージャスな味がしましたか？いえ、わかりません。だって酔っちゃったから。

いや、でもちょっと待ってください。よく考えてみたら、ビールもライオンと同じ金色じゃないですか。そうです、そうだったのです。ビールはライオンなんか無くとも、すでにそれだけでゴージャスだったのです。なるほどビールはうまいわけですよ。僕はビールが大好きです。

灯油でゴージャス

ビールとライオンのコラボはよくわからない結果になってしまいました。ビールは人を変にする飲み物かもしれません。ここは気を取り直して、灯油でゴージャスな気分を味わってみたいと思います。

のんびりしていたらストーブがピーピー鳴って灯油切れを知らせてくれました。今だ、チャンスだ、金色のライオンを使うのです。

なんかその、ゴージャスというよりも必死です。やたらと狭い給油口にどうやって灯油をこぼさず注ぐか。普通にやっても失敗してしまうことがある難しい作業を、そこにライオンが加わることでかなり高度なスキルを要求されてしまいました。しかもポンプが電池式なために流量の調節が効かず、こっちの都合はお構いなしにすごい勢いで汲み上げてしまうのです。

当然、灯油をこぼす結果になってしまいました。部屋着のジャージまでも灯油まみれです。灯油の値段が高くなったのになんてもったいないんだと、ゴージャスを味わうつもりが気がつけばお金のことを考えていました。

公園でゴージャス

日常は屋内に限ったことではありません。屋外、例えば公園などでもゴージャスな気分を味わえるはずです。

横でボール遊びをしている子供たちの会話が聞こえてきました。「あのひとたちなにしてんの？」「しらねえよ」。よく考えたら僕自身でも何をしてるか良くわかりません。帰ろ。