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ちしきの金曜日
 
お子様ランチにあらず、「小供洋食」を食べる
 


 子供の頃によく食べた「お子様ランチ」。もう大人なので食べることはできないが、今でもレストランに行くとメニューにあるのを見て軽く憧れることがある。

 そんなお子様ランチによく似た名前のメニューが、群馬県の桐生市に昔からあると聞いた。名前は「小供洋食」。

 なんとなくレトロな響きのあるこのメニュー。子供でないと注文できないメニューであるわけではないらしいし、いわゆるお子様ランチとはずいぶん違ったもののようだ。

 これは気になる。そういうわけで、食べに行ってきました。

小野法師丸



●大人を拒否しない「小供洋食」を求めて

  「小供洋食」を求めてやってきたのは、群馬県の桐生市。個人的にはこれまで訪れたことはなかったのだが、市内に入るとある特徴に気がついた。


西桐生駅の駅舎
時代と趣きを感じさせる建物が多い

 歴史を感じるような建物が目に付くのだ。駅舎もちょっとした商店も、なんだか味わいがある。

 特に観光の街といったイメージはない桐生市だが、こうした建物が並んでいることで、普通に散策するだけでもちょっとした旅気分になった。中でも印象的だったのは工場だ。


ギザギザの屋根の工場
反対から見てもまた味わい深まる

 ギザギザした屋根がいかにもひと昔前の工場という風情を漂わせる。このスタイルは「ノコギリ屋根」とも言われるようで、市内にはいくつも残っている。

 織物で栄えた桐生の町。ノコギリ屋根に窓をつけると、いつでも一定の明るさの光を取り込むことができ、織物の出来具合を確認するために都合がよかったということらしい。


左の屋根に窓が確認できる
レンガ造りもあった

 最近注目されている千葉の海沿いにあるような工場とは対極的なこの工場たち。こちらにもまた鑑賞に値する味わいがあると思う。

 さて、そうこうしているうちに目的の店に着いた。


あくまでごく普通の食堂「仲よし」
駐車場の表示は「仲よし様」

 市内にある食堂「仲よし」。ひらがなで書くと、なかよしであり、ちょっとかわいい響きであるが、看板にある書体は結構渋めでそのギャップもいい。

 そういう店なので、駐車場の表示も「仲よし様」。いや、べつにそういうわけでは…と思いながら車をとめて店に入る。


微妙な違いの焼そばたち

 群馬県のこのあたりは、焼そばにジャガイモを入れる習慣があるようで、メニューにも「じゃが入り焼そば」の文字が見える。それにしても焼そばのバリエーションがずいぶん豊富だ。

 野菜や玉子など、何を具にするかによって選べる焼そばたち。さて、目当ての「小供洋食」は……。


あったあった、これだ

 「焼そば」の隣にあった「小供洋食」。洋食という名前がついているとは言え、カテゴリーとしては焼そばの類になるものなのだろうか。

 早速注文。フロアを仕切るおかみさんが、「洋食一丁!」と厨房にオーダーを通す。

 待つこと数分。やってきたのがこれだ。


これが「小供洋食」の正体だ

 ジャガイモ・モヤシ・キャベツといった野菜を炒めて、ソースで味付けしたもの、と言えば料理の説明になるだろうか。いわゆる洋食という風情ではない。

 シンプルながら、ありそうでない料理だとも思う。では食べてみよう、いただきます。


意外だった「小供洋食」の実体
食べてるのはおっさんですが

 ジャガイモはふかしてあるのだろうか、ちょうどよいやわらかさになっている。味はソースがベースなのだが、ただそれだけではない深みや味わいがあるように感じた。

 うん、かなりうまいぞこれは。

 味わいの秘密についてお店の人に詳しく聞きたかったのだが、あとからお客さんが入ってきて、かなり忙しそうだったので断念。このおいしさはなんなんだろう…。

 名前のことが気になって、会計のときに「どうして小供洋食っていうんですか?」と聞いてみたところ、「うーん、なんでだろうねえ…。私も親からそう聞いたって感じでねえ」という返事。

 お店の人にとっても謎の小供洋食。ベールをはがしきることはできなくてちょっと残念なのだが、おいしくいただきました。


趣きある町並み
このまま残ってほしい建物がたくさんある

 ここから先はおまけです。記事冒頭にも書いた通り、風情のある建物が居並ぶ桐生市内。

 知らない町に来たときの楽しみのひとつは、地元のコンビニに入り微妙な違いを探すこと だったりする。そういうわけで市街地に来たのだが、駅近くの商店街の様子はこんな感じだった。さて、コンビニはあるかな…。


おんなじような感じであった

 同じような雰囲気の建物の一階がコンビニになっていた。たたずまいからして、なんとなくうれしい。

 売場でも何か変わったものは見つかるだろうかと思ってうろうろしていると、アイスクリームの入った冷凍ケース内に、見慣れないものを発見。


なんか見たことないぞ、これ
パッケージもいい感じ

 「アイスまんじゅう」なるものを発見。ほぼ同じ名前のものはよく見かけるのだが、 これはそれとは違う。市内の会社が古くから作っているもののようで、地元の人たちには長く愛されているらしい。

 ちょうどデザートがほしかったこともあって購入。


カチカチで歯が立たなかったアイスまんじゅう

 よく見かけるものよりも、まんじゅう感が高いように思われるアイスまんじゅう。これは確かにまんじゅうだ。

 やわらかくなるのを待ってかじると、あんここそ入っているがトロッとした練乳は入っていないタイプであることがわかる。素朴な味わい。おいしかったです。


黄葉の木々に抱かれた右下の小屋風建物

「八坂神社」と書いてあって驚いた

謎は完全に解けなかったものの、その実体を確かめることができた「小供洋食」。他にもソースカツ丼などが知られている桐生市ですが、そこまでおなかか空いてないというときのおやつにもちょうどよい感じでした


 
 
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