デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


ひらめきの月曜日
 
積丹岬の歌をつくる
積丹岬に行く車中では、ずっと「他の岬の歌」が流れていた。


以前、襟裳岬に取材に行った際、あることに気がつきました。

友人「北海道の有名な岬って、みんな歌になってるんだね」
私「……積丹(しゃこたん)岬は歌がない!!」

なんてことでしょう。景色が美しく、食べ物がおいしい積丹岬。その積丹岬に歌がないなんて。


…………。
それじゃあ積丹岬に行って、自分で積丹岬の歌をつくりますか!

(text by 加藤 和美



■北海道の岬と歌

まずは、こちらの図を見ていただきたい。
道内の有名な岬と、その岬を歌った曲名だ(カッコでくくってあるのが曲名)。

このように、有名な岬はたいてい歌にうたわれている。
札幌に近いのもあって、積丹岬を一番身近に感じていただけに、歌がないのは意外だった。
積丹岬のすぐ隣、神威(かむい)岬にだって歌があったのに…。

これは積丹岬も、歌をつくらねばなるまい!
そう思ったのはいいが、私は音楽の素養がゼロ。
というわけで助っ人を呼んだ。

「積丹に、ウニ食べに行かない?」

そう誘われて、うかうかとやって来たのは、「quartza-quartza」という音楽ユニットをやっている友人、吉田さんと新井さん。
さらに撮影係の同行者も加わり、みんなで積丹岬にロケハンだ!


うっかり呼ばれてしまった新井さん(左)と吉田さん。
作成した旅のしおり。歌詞の参考に積丹岬の情報を集めた。

 

寿司屋にて。歌詞の相談をしているはずが、みんなもう「早く来ないかな、ウニ」ってきもち。
ギリギリ漁期に間に合ったウニ丼。

■まずはウニ、いや会議

われわれが積丹岬に行ったのは、残暑ガンガンの9月1日。
積丹に着くなり、寿司店に直行である。

「ウニ食べに行きましょう」と2人を誘い出したまではいいが、いざ積丹に着いてみたら、積丹のウニの漁期は6月中旬〜8月だった!

がしかし、8月31日にとったウニがまだあるということで、ギリギリ、ウニを食することができた。

ウニはすばらしかった。
どんぶり一杯食べても、生臭さなんて感じないほどのなめらかさ! うまい!

いや、われわれがここまで来たのは、ウニが主目的ではない。
一応「歌詞どうする会議」を行ったのだが、ウニを食べる前だったため、みんな心ここにあらずといった状況で、あまり歌詞は決まらなかった。

ただ、「歌詞に『ウニ』入れようよ!」という意見には一同賛成。
ウニに関する良いフレーズが飛び出し、それはいただくことにする。

ここでウニに終始して、食べて満足、「さあ帰ろうか」くらいの雰囲気になってしまったため、あわてて積丹岬に向かう。

 

遊歩道をテクテク歩いていく。ものすごい晴天で、暑い!
島武意海岸、笠泊周辺を眺める。

■島武意海岸

積丹半島に到着した。
厳密に言うと、積丹岬自体には遊歩道がないので近づけず、眺められるのは島武意(しまむい)海岸である。

積丹岬に近づけないというのが、歌がない原因なのだろうか…。
やっぱり歌手の人だって、岬の歌をうたうなら、PVでその岬の先端にたたずんで歌ったりしたいもんなあ…。
などと悩みながらも、炎天下、坂道のきつい遊歩道を歩いていく。


島武意海岸の笠泊(かさどまり)方面を眺められるポイントにつくと、見渡すかぎり、鮮やかな海の青、青、青!
たまに白い船が通ったりして、それがまた絵になる。

コバルトブルーの輝く海は南国だけのものじゃない、北国にだってあるんだい!と胸をはりたい風景である。


あざやかな海の色!

 

真っ暗でこわかった。

■海岸に下りてみる

笠泊の西側には、島武意海岸に下りられる場所がある。

今来た遊歩道を戻り、小さなトンネルを抜けると…。


こちらもすばらしい眺め!

島武意海岸を見下ろす。
すごく急な階段を下りていく。

海岸に下りるには、急な階段、しかも段差の激しい階段を下りていかなければならない。

しかしこの絶景を見てしまうと、まだ歩けないような幼子を連れた人も、犬を数匹引き連れた人も、きゃしゃなミュール履きの女の子も、ついフラフラと海岸に下りていってしまう。
「行きは良い良い、帰りは怖い」とも知らずに…(帰り道はすごくしんどかった)。
われわれもヒザをガクガク言わせながら、海岸まで下りてみた。

砂浜ではないのであまり海水浴には向いていないが、それでもみんな水遊びをしていた。

「海だ!」
「海に入るのなんて何年ぶりだー」
などと騒ぎながらわれわれも海に足をつける。
北海道の海は盛夏を過ぎると冷たいので覚悟していたが、猛暑のせいか海水がぬるくて拍子抜け。


ひとしきり水遊びをした後、あることに気づく。

「歌詞考えてない…!」
「じゃあそろそろ考えますか」

そこで、集めて持ってきた積丹の資料に目を通す。
また、自分が積丹に来た時に体験したことなどを話しながら、出てきたフレーズをつなげていく。


なんとか歌詞っぽくなってきた。
次はメロディーだ。

子供たちが海につかっていた。
当然、われわれも海につかる。「わー、やどかりー」
海岸で歌詞を決めていく。「んーいいんじゃない?」

 

黄金岬入口。わかりやすい!
丸太づくり風の展望台があった。

■黄金岬でメロディーを考える

積丹岬の近くには、神威岬がある。
正直、眺望なら神威岬が抜群である。
神威岬は長く細く海に飛び出しているため、遊歩道を通ってかなり岬の先端まで行くことができる。

しかしわれわれが向かったのは黄金岬。

なぜ神威岬ではないのかというと、
「だって、神威岬は歌になってるじゃん。黄金岬は歌になってないから…」
という、歌になっていない岬への同情というか、よくわからない感情で黄金岬へゴーである。


吉田さんと新井さんが持参した楽器を手に、黄金岬の突端への坂道を登っていく。

それにしても岬の先へ行くために、さっきから坂道や階段を登りっぱなしなので、約1名、というか私なのだが、バテ気味である。


黄金岬の先端へ行くと、展望台が立っていたので登ってみる。

 


黄金岬からの眺め。遊覧船のアナウンスまで聞こえてきた。

ギターを鳴らしながら、メロディーをつくる吉田さん。

吉田さんが展望台の上で、ギターを取り出し、メロディーを考え始める。

「歌詞からすると、ゆるい感じがいいよね」
と、吉田さん。


展望台でギターを弾いたり、マラカスを鳴らしたり、ボンゴを叩いたりと模索していたら、他の観光客の人が登ってきて、ビクッとしていた。
すみません。

展望台から撤収し、再度メロディー作り。
吉田さんが「曲が見えてきた」というので、あとは自宅で作業してもらうことになった。

 

コーラス録音中。

■歌を録音

後日、吉田さんからデモMP3が送られてきた。
通常新井さん(女性)がボーカルなのに、歌っていたのは吉田さんなのでビックリ。

吉田さんのボーカルも含め、「歌も演奏も一発録り! ちょっとズレてるけどそこがまたいい」というゆるいグルーヴ感を活かした曲だった。

さらに集まってコーラス部分を録音し、それをミックスしてもらい、完成ーー!


それでは積丹岬の歌、その名も「積丹岬」を、どうぞ。

積丹の美しい海の動画とともに、歌が流れます。

■人はなぜ岬に惹かれるのか

きっかけは私が積丹周辺(神威岬も含め)の景色が好きで、さらにウニも好きで、というところから始まったのですが、協力者のおかげで面白い曲ができました。

前奏のさわやかな感じと、歌と演奏ののんびりかわいらしい感じが、積丹の雰囲気をあらわしていると思うのですが、いかがでしょうか。

今度積丹岬に行く際は、車中はこの積丹ソングで決まり!?

さらば夏の積丹。また来年。

 
 
関連記事
歌の舞台となった場所でその歌を歌う
襟裳の春は本当に何もないのか
いちご煮でコメを炊く

 

 
Ad by DailyPortalZ
 

▲トップに戻る バックナンバーいちらんへ
個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.