私が小学校の頃だろうか。
父は毎日、晩酌をしていた。最初は瓶ビール、じょじょに強いお酒に切り替える。
そしてある日、何を思ったか「白いほかほかのゴハンに、日本酒をかけて食べる」ということを、はじめた。
「さーけちゃーづけー」
彼はそう言って笑いながら、お茶わんに、日本酒を「じゃばー」っとかけていた。
ぶわーっと広がる、アルコールの匂い。
家族全員、「うわ、それは幾ら何でも、絶対ナシでしょう!」という目でソレを見た。でも、指摘すると「なーにーをー!」とキレられるのが分かっていたので、何も言わなかった。
父は「家族がヒいてる」のも含め、面白がっていたのかもしれない、かなり頻繁に「ソレ」をやっていた。
まあ、そんな食生活がたたったのか、平均寿命よりずっと早めに、他界してしまったのだけれど…。
時は流れ、私も大人になり、遺伝してしまったのか「酒飲み」になった。
20代のころは、12時間居酒屋で連続飲み、なんてこともザラだった。なんとか肝臓を壊さずにやってきた。でも30代まではお酒の味なんて、正直、味わっていなかった。酔えりゃ何でも良かった。
「ああ、日本酒美味しいな」と思いはじめたのも、最近だ。
飲みながら思った。「これだけ、飲めるようになったんだから、私も、例の『さけちゃづけ』の良さが、分かるかもしれないぞ……?」「や、やっちゃおうか? 長年、恐れてきたアレを試してみちゃおうか……?」と。
でも、いきなり「日本酒ぶっかけ」は、やはり抵抗がある。
そこで「特製・日本酒だけで作ったスープ」から、慣らしていこう、という作戦をたてた |