たいていのものは、叩けば音がなる。そういう意味で、すべてのものは楽器だといえなくもない。
たとえばすべり台のU字型の部分を手で叩くと、ゴワーンと低くて澄んだ音がなる。こどものころはこれを聞くのが好きだった。
街の中で目についたものを楽器だと思って叩いてみて、その音を聞いてみる。そして楽器だと思って音楽をつくってみる。今回はそういうことをしてみたいと思います。
(text by 三土たつお)
街を歩いて、目につくものを手で叩いていきます
子供のころ、雨上がりの帰り道に、傘を欄干にカンカンさせながら歩いたことのある人は多いと思う。今回は、それを大人の今になってやってみるという企画。
ただし傘で叩いたりするとものを壊してしまうかもしれないし、あまり大きな音を立てると周りにも迷惑だ。やさしく手で叩いていくことにしよう。
まずは公園でやってみる
近所の公園へやってきた。ふだんは散歩にやってきてベンチで休むくらいなのだが、今回はちがう。置いてあるものの本来の目的を忘れ、どんな音で鳴りそうかだけを考えるのだ。
楽器その1: 看板
まずは次のような看板が目についた。どこにでもある花火禁止の看板だが、今回はその内容には関係がない。
材質はうすい鉄板のようだ。途中で折れているため響きそう。
すぐ下にあるボタン(何といおうとボタンです)を押すと、この看板を叩いたときの音をお聞きいただけます。ただし音は少し遅れてきます。
楽器その2: すべり台
冒頭でもふれた、すべり台。叩くのはこどものとき以来だが、どんな音がするだろう。
これもいい音がするんです
(ボタンを押すと音が聞こえます)
ああ、そうだよね。こんなだったよねという音だ。ただ、懐かしいようでいて、ついこの前も聞いたような気がする音だと思う。
すべる部分にうつぶせになって寝ると、まわりの音が反響してとても気持ちいい。この公園独り占め!という気分になる。などといっているが、さっきからぼくだけかもしれないと少々不安だ。
音楽っぽくしてみた
では、この看板とすべり台の音を使って、音楽をつくってみたい。
看板の音はなんだかスネアドラムのようだ。すべり台の音はシンバルにも似ている。この二つを打楽器だと思って、簡単なリズムをきざんでみることにしよう。
ハイハットにあたる短い音は、となりにあった固めの看板のものを使った。
公園でこんな風にドラムっぽく鳴らしていたら迷惑きわまりないが、じっさいにはごく小さな音ですのでご安心ください。