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はっけんの水曜日
 
168円で立体的に録音する
耳にマイクを突っ込んで録音しています。音楽を聴いている様に見えて、実は録音している。まるで盗聴。


 バイノーラル録音という録音方法があります。大雑把に言うと、耳の位置にマイクを仕掛けて録音する方法です。ヘッドフォンで聴くと普通のステレオ録音よりも臨場感がある録音が出来ます。

 今回はバイノーラル録音の説明をしつつ、マイクの自作と録音をしてみたいと思います。奥さん!200円以下で立体的に録音出来ちゃうんですってよ!

(text by 松本 圭司

■まずはこれをヘッドフォンで聴いてみて下さい

 まずはバイノーラル録音で収録したサンプルの音を聴いてみて下さい。頭の周りをマッチ箱を振りながら移動します。終始右でマウスのクリック音がします。

 スピーカーでは効果が出ないので必ずステレオイヤホンかヘッドフォンで聴いて下さい。耳の奥に入れるタイプのイヤホン(カナルタイプ)がベターです。音量はサーというノイズが聞こえなくなる上限辺りが良いと思います。心持ち大きめの方が良いでしょう。


こういうタイプのイヤホンが最適ですが普通のでも大丈夫です。

 また、出来るだけ音のしない静かな場所で聴いてください。周りの音が混じると臨場感が上手く再現されません。では↓のサンプルをどうぞ(当記事ではDewplayerを使用してMP3を再生しています)。

マッチ箱を振りながら頭の周りを移動

00:05 頭の後ろから右を通って顔の前へ
00:08 顔正面から左耳へ移動
00:09 右下で物音 マッチは右耳へ
00:11 右から左へ
00:18 また顔の前を通って右へ
00:20 頭の上に移動
00:23 首の後ろに降りてからまた上へ
00:25 右耳の近くへ
00:26 顔の前を通って左耳へ

うまく聴けたでしょうか?では、バイノーラル録音とはなにか?からはじめていきましょう。

 

■バイノーラル録音とは?

 バイノーラル録音とは、前述した様に耳の位置にマイクを付けて録音する方法のことです。こうして録音すると、頭を回り込んだ音や耳の形の影響を受けた音が録音されます。

 その音をヘッドフォンやイヤホンで聴くとその「場」の音が再現される仕組みです。入力と出力の場所を同じにすることで再現性を上げている訳です。こういう仕組みなのでスピーカーで聴いても音の立体感は再現されません。

 

■コラム 頭内定位と頭外定位

 ステレオ録音された音をヘッドフォンで聴くと頭の中で音が鳴っている様に感じます。これを頭内定位と呼びます。圧迫感があり、長時間聴いていると息苦しくなります。

 ステレオはスピーカーで聴くことを想定した録音方式で、正確にはステレオフォニックと言います。ヘッドフォンで聴くことを想定した録音方式がバイノーラルです。まとめると以下の通りです。

対象 2チャンネル 1チャンネル
スピーカー ステレオフォニック モノフォニック
ヘッドフォン バイノーラル モノーラル

 ステレオフォニックで録音した音はステレオスピーカーで聴くのが正しく、バイノーラルで録音した音はヘッドフォンで聴くのが正しいわけです。この組み合わせが正しくてはじめて、制作者の意図した音が再現されることになります(※)。

 頭の外で音が鳴っている状況、「頭外定位」を再現するには録音と再生の方式を合わせる必要があります。

※・・・ヘッドフォンでステレオフォニックの再生をシミュレートする計算をしている場合などなど、例外もありますがここでは無視します。

 

■バイノーラルマイクを作ります

 仕組みが判ったら自分でも録音したい。でも完成品のバイノーラルマイクは1万円ちかくします。高いので自分で作ることにします。半田付けが出来れば誰でも作れるくらい簡単です。

材料は以下の通り。

■材料

  • コンデンサマイク(秋葉原のパーツ屋さんで1個84円)
  • どこのご家庭にもあるいらないステレオイヤホン(100円ショップでも売ってるよ)
  • 半田

主役のコンデンサマイク。2個で168円でした。

■作り方
1.ステレオイヤホンのスピーカー部分の覆いを外します。すると小さなスピーカーが出てきます。緑の線が右(R)の+で赤い線が左(L)の+です。銅線色はマイナスです。


プラスとマイナスは間違えない様に注意。

2.半田を溶かしてスピーカーを外します。線を切って外すと絶縁皮膜を取るのが大変なのでやめた方が無難です。半田を溶かして外しましょう。

3.外した線をコンデンサマイクのプラスとマイナスに半田付けします。マイクの+と−は、外装に繋がってる方が−で、繋がってないのが+です。


独立してるのが+、外と繋がってるのが−です。

4.人肌に冷めたら完成です。


緑の線がL、赤い線がRです。それぞれ耳の穴に突っ込んで録音します。耳の穴が小さい人は痛いと思うけど。

材料費168円。超お安くバイノーラルマイクが完成してしまいました。

 

■マイクが完成したので耳に入れて録音します

 バイノーラル録音は耳にマイクを仕込むわけですから、作ったバイノーラルマイクの集音部分を外に向けて耳の穴に突っ込みます。覆いとか付けたいところですが、僕の耳の穴はマイクだけで一杯なので無理です。

だから直接突っ込んで録音します。これが結構痛いんです。


僕の耳の穴よりちょっと大きい感じ。みっちり。

 録音機材はICレコーダー(Xacti ICR-PS285RM)。これはリニアPCMというファイル形式で録音出来ます。音声が圧縮されてしまう機種は立体音響の収録には向きません。圧縮で高音と低音を削られると音の臨場感が無くなってしまいます。臨場感はそういう周波数域に存在するものなのかも知れません。

 今回の音源はMP3で圧縮してあるので15000Hz以上の高音域はカットされているのですが、録音時にカットされるのと後でカットされるのとではワケが違います。とりあえず自分は無圧縮で聴けるし、圧縮率を自分で設定出来ます。

と言うことで、作ったマイクをICレコーダーに繋いで録音に出かけてきました。

 

■電車がきます

ホームに電車が入ってきます。最初のナレーション、途中で首の向きを変えたので聞こえる方向が変わりました。電車が来ると右で親子が「来た、来た、来た」と言います。最後は車内に入ります。音がこもります。

ベルの音が綺麗に録れたかなと。

 

■公園で遊ぶ親子

近所の公園で親子連れが遊んでました。右でサッカーしてる親子。僕の周りを自転車で回る幼女。幼女のお父さんが左から自転車の操作についてアドバイスを送っています。

僕の周りを回る自転車の音がわかるでしょうか。

 

■環七の交差点

環七の交差点に立ちました。まずは左から右に右折車が移動します。右で信号待ちのバイクがアイドリングをしています。後半は右後ろから左斜め前方へ走ります。

移動するエンジン音を感じて下さい。

そこそこ綺麗に録れましたが色々不満です。

  • 耳に無理矢理突っ込むので痛い。耳が壊れちゃうぅ。
  • 半田付けした部分が剥き出しで外れないか心配。扱いに神経を使う。
  • 音がいまいち。

ここは是非積極的に改良していきたいと思います。そこでバイノーラルマイク2号を作りました。


 

 
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