先日、実家のある秋田に帰った時のこと。家でゴロゴロとヒマそうにしている娘を案じたのか、年老いた両親が「どっかドライブにでも行かないか」と、しきりに声をかけてきた。
いきなりドライブって言われても、特に行きたい所もないなぁ…。と、うだうだと考えていて「ハッ!」と思った。去年の夏休み、阿仁という町にある「道の駅」で素敵な物を見たことを思い出したのだ。あれが欲しい。あれを買いに行こう。
ガバリと起きあがり、両親に「阿仁の道の駅に行きたい!」と力強く宣言すると、不審な表情で「阿仁?」と聞き返された。
「うん、阿仁! あそこで熊の肉を買いたい!」
(高瀬 克子)
道の駅を満喫
そう、阿仁というのは「マタギ」で有名な場所なのだ。ここで私は去年の夏、冷凍ケースに中に熊の肉を見つけ「わーっ!」と興奮したのであった。
欲しくて堪らなかったが、保冷剤などの準備を何もしていなかったため、肉の購入は諦めざるを得ず、泣く泣く帰ってきた…という経緯がある。
しかし今回は、最初から熊の肉を購入するのが目的だ。同じ轍を踏まないように、実家から保冷バッグや保冷剤などを山のように持って出かけた。
両親は、買い物カゴを手に「あ、わらび買って行こうかね。あんた食べるでしょ?」とか「タケノコがあるよ。今日はタケノコ御飯にしようか」と、すっかり買い物に夢中の様子。
私も滅多に来られない場所だけに、阿仁の名産品をじっくりと見て回った。
すっかり夢中になってしまった。ああ、道の駅って、なんて楽しいんだろう。いつか、全国の道の駅を回ってみたい。そして知らない食べ物を見てみたい。
…あ、大丈夫ですよ。熊の肉のことを忘れているワケではありませんよ。
さっそく、熊肉コーナーに行ってみましょう。
これが余所の道の駅ならば、中に入っているのは「地元名産のアイスクリーム」なのだろうが、ここでは違う。
あるのは肉・肉・肉だ。
しばらくケースの前にいたが、他のお客さんは「ふぅん、熊の肉ねぇ…」と物珍しそうに見て行くだけで、私が見た限り、購入する人は誰もいなかった。
ま、熊の肉はクサイという先入観もあるのだろうが、もうひとつの要因は値段だと思う。
だってあなた、なんと5,000円もするんですよ!
「熊の肉に5,000円も出すんだったら、霜降り和牛を買った方がいいよなぁ…」と咄嗟に思ってしまったことをここに白状しておこう。
買う気まんまんで来た私がコレである。フラリと訪れた観光客の手が出ないのも無理はないのかもしれない。
でも、私は買うぞ! そのために来たんだもの!
というわけで、迷わず3,000円の方の肉を手に取り、レジへと向かった。