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ロマンの木曜日
昔の人のように歩いてみる

正確に言うと、昔の映像に写っている人たちのように歩いてみたいと思ったのだ。昔のニュースフィルムなどを見るとみんなカクカクとコマ落ちして動いて見える。昔の人はみんなあんな感じで歩いていたんだ、と子供の頃は信じて疑わなかった。もちろん、昔の人があんな風に歩いていた訳ではなく、フィルムがコマ落ちしているだけだと大人になって分かった訳だが、あの独特な動きを自分の体で再現しようと思う。

(text by 住 正徳



そもそも何でカクカクするのか?

昔のフィルム風に歩くにあたって、まずは資料映像でその動きを確認してみた。




出典:IPA「教育用画像素材集サイト」 https://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

bunner


やはり、みんなカクカクとして先を急いでいるような歩き方である。
今回は、この歩きをマスターしようという試みであるが、では何故、昔のフィルムはあのように見えるのか? 調べてみる事にした。仕組みが分かれば真似やすいと考えたのだ。



参考図書

「デジタル映像制作ガイドブック(発行:ワークスコーポレーション)」というマニュアル本を参考にした。映像制作に必要な周辺知識を体系化した学習図書で、映像の歴史についても詳しい。その「カメラ・記録装置」の章にカクカクのヒントがあった。以下、「2-2.フィルムカメラとフィルム映写機」の項から文章を抜粋する。

「シネカメラと映写機は、1895年にリュミエール兄弟が作ったシネマトグラフが世界初となる。 〜中略〜 人間の眼の残像現象と脳が動いていると認識するぎりぎりの速度ということで、1秒に16コマの間隔で撮影し、10コマ/秒で映写していた。」

つまり、撮影速度と映写速度が違っていたのだ。そのため、映像の再生速度が変わってしまい、カクカクして見えてしまう。きっとそういう事なのだ。


リュミエール兄弟のシネマトグラフなど

という事は、16コマが10コマに間引きされるような感覚で歩けばいいのである。
でもそれは、一体どんな感覚なのか?

……。

ちっとも想像出来ないので、とにかく「カクカク動いて若干早送り」と意識して歩く事にした。




服装も大事だ

昔のフィルム風に見せるには、服装も大事である。どれだけうまく歩いてみせても、格好が現代のままであったら、それはもう現代にしか見えない。

レンタル衣装の東京衣装さんに問い合わせると、大正時代風の衣装には夏服と冬服があるらしく、夏服は白い麻のジャケットにパナマ帽で、冬服は3ピースのスーツに蝶ネクタイと山高帽というスタイルだという。どちらかというと冬服の方がイメージに近かったので、冬服を借りる事にした。ちなみに、「山高帽」と検索をかけると、上位に山田隆夫さんの公式ページが表示される。事務所の名前が「株式会社山高帽」らしい。



大正時代の衣装セット ステッキも借りた

かなり厚手の生地なので、ここ最近の気温だとかなり厳しそうである。
だがそれも昔の人風に歩くため。我慢しよう。


紳士?

大正時代の紳士というよりも、漫画「タイガーマスク」に出て来る悪徳マネージャー・ミスターXのようである。どこか胡散臭い。





練習しよう

歩き方を練習するため、大正時代スタイルのまま外に出た。


カク

カク

カク

カク

資料映像を頭に思い浮かべながらカクカク歩いてみた。その様子を動画に収めてその場でプレビューする。自分の歩きを見て、脚の繰り出し方や手の振りなど、細かい部分を修正していく。何度も何度もそれを繰り返し、昔の映像の歩き方に近づけていく。


暑い

しかし、この日の気温は29度。夏日に厚手の3ピースは想像以上に辛い。山高帽が焼けるように熱い。スーツの下は汗だくである。

そんな過酷な練習の結果、なんとか昔の映像風の歩き方をマスターする事が出来た。
その成果を動画でご覧いただきたい。

まずは、「横断歩道を渡る昔の人」である。



動画「横断歩道」
*音が出ます。



映像を白黒にして映写機の音を合わせてみた。

周りの人たちが普通に歩いているので、全体的には2007年の6月のままであるが、僕だけを見ているとどうだろう。そこだけ大正時代にタイムスリップしたように見えるではないか。文明開化の音が聞こえてきそうである。


信号待ちをする昔の人



次は昔のニュース映像風に歩いてみよう。





 
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