世の中で一番気持ちのいい行為はアイボンだと思う。アイボンというのは小林製薬さんの商品で、専用のカップを使用することで目を直に洗浄できるという非常に優れたアイテムだ(医薬品です)。だけど僕の顔はこのアイボンのカップにフィットしないのだ。なぜだ、こんなに好きなのに。
やりきれない気持ちで新しい装置を作りました。
(安藤 昌教)
瞬きする間に逃げていく
コンタクトレンズユーザーにとってアイボンは聖なる水だ。世界がアイボンで満ちていたらどんなにすばらしいだろうか(溺れても本望だとすら思う)。今日もひと時の快感を求めてアイボンのカップを目に押し付けるわけだが、なぜかいつもうまくいかないのだ。カップの中で目を3回くらいぱちくりさせるともうすべての液が頬を伝って流れていってしまう。いくらカップを目にしっかりと押し付けても同じだ。
要するに僕の顔がアイボンのカップがカバーするはずの平均顔を逸しているのだ。頬骨が出っ張っていてしかも目の周りに肉が少ないからだろうか。カップをしっかり押し付けようにも骨に当たって隙間ができてしまうのだ。そのたびに「あなたは不適合です」とはじかれたような気分になる。愛はどこだ。
ならば作ろう
そんな鬱積した気分を晴らすべく新しいアイボンカップ、というか装置を作ってみた。水泳のゴーグルにチューブを取り付けただけのシンプルな装置だが、実は作るのに結構時間がかかっている。穴を開けているときにゴーグルも一つ割ってしまった。ゴーグルとチューブとの接合部はシーリング剤で漏れを防いでいる。
装着するとこんな感じだ。どことなく電撃ネットワークさんを彷彿とさせる。いつものように僕のお店で撮影を行っているわけだが、今回ほど撮影中にお客さんが来ないことを願った回もない。実際誰も来なかったので助かった(外から覗いて帰ったのかもしれない)。
それではいよいよアイボンを注入だ。
装置の仕組みは単純だ。片方のチューブからアイボンの液を注入する。ゴーグルは顔に完全に密着しているため、内部の空気は他方のチューブを通って隣のグラスへと移り、アイボンは無事片方のグラスを充填する。
アイボンが隣のグラスへの連絡チューブの高さまで注入されると今度はチューブを通ってアイボンは隣のグラスも満たしていく。
単純な装置だが実際にやってみると実に愉快だ。ピタゴラ装置を見ているかのように効率的に片目ずつアイボンに包まれていく。そして僕は快楽の渦に溺れていく。
欠点があった
とまあ完璧な装置に思えたわけだが、使ってみて一つだけ欠点を発見してしまった。やめられないのだ。グラスを外そうとすると中をアイボンで満たされていたことに気付く。つまり外すとそのままこぼれてしまうのだ。
意味もなくチューブの口をふさいだりしながらグラスを外すと予想通りアイボンがこぼれた。野外ならばともかく室内での使用に関しては今後の改良が待たれるところだ。
今日も使います
どうせこぼれるんだからカップを使ったって同じじゃないか、とお思いの方、それは違います。見て欲しいのは使用後のこの笑顔だ。なんていったってこれで好きなだけアイボンの中で瞬きができるのだ、使っているうちに液がどんどんなくなっていくカップとはわけが違う。本当によい装置を作ったと思う。これからもこの装置と共にアイボンに溺れて生きて行きたい。