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ひらめきの月曜日
 
フカヒレを日常に引きずり込む

これはどうだ

私は味噌汁を食べる習慣がないのだが、納豆以上に庶民の食卓に根付いた食べ物といえば、やはり味噌汁なのだろうと思う。

というわけで、さっそく豆腐とネギの味噌汁の上にフカヒレを置いてみた。トッピングというやつだ。


鎮座という表現がピッタリか。

別にトッピング扱いする必要はなかったのだが、最初から鍋に入れると存在感がゼロになってしまう(木っ端なだけに)と心配してのことだ。フカヒレに敬意を表していると言ってもいい。

無味なフカヒレは、スープがおいしければ問題なく食べられると思うのだが、果たして味噌汁はどうだろうか。


フカヒレに申し訳ない気持ちになるのは何故。
最後のひとくちまで残してなるものか。

…うむ、これも普通にうまい。というか、普通の味噌汁だ。やはり味の邪魔をせず、食感のみで己の存在をアピールしている。

味噌汁、なんの問題もなし。

「やっぱ、フカヒレっていいヤツだよな」という気分になってきた。味噌汁に投入されても文句ひとつ言わず、気配すら消そうとしている様子さえ見える。

もしかして、自分が高級食材だという自覚がないのだろうか。それならそれで、なお好感が持てるというものだ。いいぞフカヒレ。人間、偉ぶらないのが一番だ。

気を良くして、先を続けよう。


砂糖・醤油・みりん・水でグツグツ煮込みます。
佃煮が出来ました。

さしものフカヒレも、まさか自分が佃煮にされる運命だったとは思いもしまい。

納豆、味噌汁と続いて、一番心がチクリとしたのが、実はこの佃煮だった。どうしても「フカヒレだぞ。昆布や小魚とはワケが違うんだぞ」と思ってしまうのだ。

そんなこちらの葛藤を知ってか知らずか、フカヒレはまたも文句一つこぼさず、鍋に身を投げる。…泣ける。高貴さゆえの潔さに、泣ける。


美しく飴色に輝くフカヒレ。

結果は分かっていた。フカヒレ自身の人の良さ、そして「あなた色に染まります」という受け身の姿勢、どれをとっても不味くなりようがない。

しかしまぁ佃煮ってのは、使う食材の味がダシのような役割を果たすわけで、この佃煮は見事に砂糖と醤油の味しかしなかった。鰹だしでも入れれば良かったか。

腰が引けた

最後の佃煮だけはちょっとどうかという結果に終わったが、フカヒレは庶民の食卓になんの問題もなく紛れ込める食材なことが分かった。

それにしても、なぜこうも「バチが当たりそう」と思ってしまうのだろう。悪いことをしてるワケでもないし、食べ物を粗末に扱ってもいない。なのに、この罪悪感。

フカヒレは「いいよ」と言ってくれても、心の底で「こんなことしていいんだろうか」と、どうしても躊躇してしまうのだ。

結局、私は物の値段から自由になれないということなのだろう。もしもフカヒレが100g300円で売られるような食材ならば、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。

結論:フカヒレは庶民の食卓に対応可能な食材だが、私には精神的に扱いが困難である。

…そういえば、明日の肌の状態が楽しみだ。

フカヒレ様を弁当に。畏れ多い。

 
 
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