普通、東京23区内において「駅前には何もなくて」という場合、ドトールはあるけどスタバはないとか、せいぜい全日食チェーンはあるけどセブンイレブンはないとか、そんな意味である。 駅前に、見渡すかぎりの荒野が広がっているという意味では決してない。 しかし、本当に駅前に何もない駅が、銀座からわずか3km程の東京の都心部にあるのだ。 その駅に行って、何もなさを確かめてきた。
(工藤 考浩)
ゆりかもめ「市場前駅」
市場前駅は東京の湾岸地域を走る「ゆりかもめ」が2006年3月に豊洲まで延長した際に新しくできた駅である。 駅名が「市場前駅」なのに駅前に市場がない。 そして、市場どころか、ホントになんにもないのがこの駅の最大の特徴であり見どころである。 「市場前」の市場というのは2012年に東京築地市場の移転先として作られる予定の豊洲市場のことだ。 これは、まだ存在しない架空の施設を駅の名称にしていることを意味する。 つまり、未来の駅だということだ。
誰のための駅か
豊洲駅からゆりかもめに乗り、二駅先の市場前駅に向かった。 豊洲は最近急速に開発されていて、大型のタワーマンションがいくつも建設され、ららぽ−と豊洲などの商業施設もオープンしている。 しかし、東京の都心部にしてはまだまだ空き地も多く、これからさらなる発展が期待されている。 …のだが、こと市場前駅に関しては、まったくの空き地で、気持ちいいほど何もない。 降りても何もすることがないので、乗降客も極端に少ない。
何もないにも程がある
とはいうものの、すこしくらい何かあるだろうと思われるかもしれないが、まったく何もない。 駅を降りてみて、「失敗したな」と思った。 何もなさを記事にしようとここへ来たのだが、何にもないということは、書くべきことが何もないということなのだ。 どうしよう、何にもないのである。