竿がすごい力で水中に持って行かれそうになる。ものすごい力だ。
船中のみんなが見守る中、今までに体験したことのないヒキを味わいながら、ゆっくりと慎重に85メートルの釣り糸を巻き上げる。
針には黒くて大きな魚がかかっていた。
これがシーラカンスか!
船長が取り込もうとタモ網を海に入れたこの時、船が大きく揺れた。全員がシーラカンスに夢中になっていたため気が付かなかったのだが、大波がきていたのだ。
幸いシーラカンスは船長の熟練の網さばきによってスッポリとタモ網に収まったのだが、なんとこの波でカメラが濡れてしまい、以降の撮影ができなくなってしまったのだ。
このアクシデント、カメラマンを責めることはできないだろう。船のデッキ上に横たわったシーラカンス眺めながら、私は心のシャッターをカシャっと押した。
腕に残った疲労が気持ちよかった。 |