週末、沖縄本島で一番早い海開きが行われた(石垣島では先週だったらしい)。そう、沖縄では3月から海水浴ができるのだ。一番乗りを目指して行ってきました。
(安藤 昌教)
海開きはお祭りです
今回開かれる海は沖縄本島南部、南城市のあざまサンサンビーチ。気温は朝から20度を超えていた。絶好の海開き日和だ。会場に着くとすでにお祭りムード一色だった。
海開きに先立って行われたセレモニーでは、盛大なエイサーのあとに偉い方々がスピーチを行った。地元出身の国会議員さんはこのために4時に起きて東京から来たと言っていた。
実はある計画が
実は僕がこの日目指していたのは「一番乗り」だ。この時点ですでに何人かの子供がフライング気味に海で遊んでいたりしたが、僕は「正式に海開き宣言がされてから一番に海に入った人」になりにやってきたのだ。今年の残りはその称号を頼りに生きていこうと思う。
そんな僕の暗い計画をよそに、明るい日差しの下、セレモニーは粛々と進行していく。海からシーカヤックに乗って海開き宣言書が届いた。
実行委員長が宣言書を読み上げ、ファンファーレが鳴り響き、会場の期待と興奮はピークを迎える。同時に僕の手も汗ばみ始める。一番の男になるため、これからテープカットの会場へと移動するのだ。
いよいよ海開きの瞬間がせまる。テープが切られるのを子供たちが待ち構えている。対して一番を狙う僕は少し離れたところで待機している。スタート時の混雑を避け、一気にトップを狙う計画だ。砕いて言えば横入りだが、これも巧みな戦術の一つといえる。さあこい。
テープが切られた瞬間に子供が走る。やっぱりみんな一番を狙っていたのだ。ということは全員が敵だ、負けていられない。もちろん僕も走る。横から子供の群れに合流した。ここからは圧倒的な体力差で僕が勝つこと請け合いだ。
さあ走れ、目の前にある海だけを目指して。
と思ったのだが、実際に目の前にいたのはなんと新聞やテレビのクルーたちだった。子供が飛び込んでくるのを正面で撮っているのだ。これは一番乗りすると確実に今日のニュースと明日の朝刊に出る。
「子供を押しのけ、横入りの男性が一番乗り」 「楽しいはずの海開きが横暴な大人により台無し」
短い時間の中でぐるぐると悩んだ末、足が止まった。そんな僕を子供たちが抜かしていく。遠慮気味に走り、海に着いたときにはたぶん僕は10番目くらいだったんじゃないかと思う。
暗い計画、撃沈
というわけで僕のささやかな計画、今年沖縄本島で海水浴一番乗り、はメディアの力によって阻止されてしまった。だがしかし、この日この場所に立ち会ったことは事実だ。今年は沖縄本島で十番目くらいに海水浴した男、として中途半端に過ごしたいと思う。
初泳ぎの海は少し冷たかったが、日差しにはすでに夏の鋭さが感じられて気持ちがよかった。なにより楽しそうに泳ぐ子供たちの顔を見ていると、十番目でも一番目でもどうでもよくなってきた。
わけがない。やっぱり僕は一番がよかった。今年の教訓を踏まえ、来年はもうちょっと計画的にその座を狙いに行きたいと思っている。見てろ。
やっぱり載っていました
写真に撮られるのだけは避けていたつもりなのだが、やっぱり目立っていたのだろうか。某新聞社の記者さんと話をした会話がそのまま翌日の朝刊に載せられていた。しかも実名入りで。この勢いだと一番乗りなんかしていたら確実につるし上げられていたに違いない。
沖縄はこれから夏本番です。