ただの角材でも担いでいるうちに気分も高揚してきた。渋谷という街をこの手にしたような心地だ。渋谷の中に祭りがあるのではなく、祭りの中に渋谷がある。
さっきから材木を担いで歩き回っていたせいで、そろそろ疲れてきた。ちょっとカフェで一休みしよう。
一度席について街の様子を眺めると、本当に穏やかなものだ。「今日」という1日は漫然と続く日常の単位でしかない・・・。
いけない。ついうっかり素に戻りかけてしまった。お祭りイベントのグルーヴ感を維持させ続けるためには、「素」とか「日常」が大敵だ。
休憩はおしまいだ。お祭り感覚が残っているうちにお祭りの続きを楽しもう。
通りがかりに鏡のような壁があった。
鏡で自分を客観視したら、急激に冷めてしまった。持っていたのは明らかに神輿ではなくて、ただの角材だった。
イベントや祭りを成立させるもの
こういうイベント事を成立させるには、もちろん自分の気持ちが高揚することが重要なのは確かだ。けれど、まわりの人たちがそのテンションを維持し続けてくれないとだめだ。周りが騒いでくれないと、自分が冷静になってしまった瞬間が祭りの終わりになる。かくして祭りに必要なのは根拠とか起源ではなくて、みんなのテンションそのものなのであった。