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ロマンの木曜日
 
あの味のお菓子であのスープを作る
コンソメパンチ味なスープへ生まれ変わりたーーい!


この間まで「コンソメスープ」に取り憑かれていた。

たまたま入った紅茶屋さんで飲んだ黄金のスープ。 澄みきったあの味が忘れられなかったのだ。

なんとしても自分で再現しようと試行錯誤をくりかえし、正直、その域まで達したという自負がある。

しかし、あいにく本日は肝心のコンソメスープがない。
あんな途方もない旅のような、作る時間もない。
けれども息子は「紅茶屋のコンソメスープを飲んだら明日のテスト頑張れる気がする」と言っている。
そうか、がんばれるのか。

私は、ポテトチップをほおばりながら教科書ではなくマンガを読んでいる息子に目をやった。上半身ハダカだ。いやそれはいい。

そのお菓子の袋には、「コンソメパンチ味」と書いてあった。
コンソメ、しかもパンチ。

「わかりました。がんばっていただきましょう」

(text by 土屋 遊



ベビースターラーメンラーメンよ、再び

日常を下心のみで生活している私のこと、もちろんこのコンソメ発想には「下心」がないわけではなかった。
「これはネタにもなるな」
そう思ったことも事実だ。

だが、もうひとつ。ベビースターラーメンが好きで好きでたまらなかった小学生の私が発明したベビースターラーメンラーメン、あれを思い出していたのだ。

みなさんも経験があるかもしれない、あのベビースターラーメンの袋の中に、お湯を入れて食ったときの意外なおいしさ。量が増えたと錯覚するあの感動。

もちろん各学校、各時代ごとにその道の第一人者がいることだろう。私も極めた一人だ。

  • けっして沸騰したばかりのお湯を入れてはならない
  • 欲張ってお湯は袋の3分の1以上は入れてはならない
  • そしてなによりも、入れたら速攻で食べる

あのときは、駄菓子屋のばあちゃんやヤマザキ(菓子屋)のおばちゃんの機嫌をとり、頼みこんでお湯を分けてもらわなければならなかった。私はそれも達者だった。

発明者でありお湯確保の達人、こんな私をだれもありがたがらなかったのはどういうわけだったのだろう。  


通常の我が家のコンソメスープ。
牛スネや香味野菜の出汁で、なぜか具にはササミを入れるひねくれたいい味。

とにかく、今や私はババアやおばちゃんの機嫌をとることなく、先生の目を盗むことなく、手間をかけることなく、お菓子というジャンクな食べ物を晩飯の一品に仕立てようとしているのだった。

 


コンソメパンチスープ 秘伝のレシピ

水 (300ml)
タマネギ (薄切り)
ニンジン(千切り少々)
セロリ(薄切り)
セロリの葉(細かくきざむ)

調味料一切なし


大事なもの忘れてました。
あとポテトチップス(コンソメでパンチの効いたやつ)

鍋に水とポテトチップス(山盛り)
中火にかけるとすぐに弱腰になるポテチ軍
15分たったらアクを取ります
アクよりも油が気になり始める頃

火にかけると、すぐにクターとなったポテトチップス。弱々しくなったイモを眺めながら、 「ああ、ポテトチップスってジャガイモからできてるんだ……」とあらためて認識した。

鍋の中でもだえている彼らはまぎれもなくジャガイモの薄切りだった。

懸念されていた「濁り」もはげしく、油もしぶとそうだ。 アクよりも浮いた油を取りすぎて、ずいぶんと量が減ってしまった。


匂いは完全にコンソメ。色はなぜかミネストローネに……?
早めに切り上げて濾す作業にうつる

 

パンチの秘密

40分ほど経過したころ、煮込みすぎか化学反応か不明だが、色が"コンソメ"ではなく"トマト"になってしまった。

これが"パンチ"なのか……。

だいたいパンチってなんだろう……不気味なので予定を早めに切り上げ、あわてて濾す作業に入った。

濾すこと4回。かろうじて"トマト"は逃れたようだ。どちらかというとみそ汁に近い。


濾して、絞って……とくり返す
一応スープは完了。料理ポリシーとして味見はしない

濾したコンソメパンチスープにタマネギを乱入させ、約10分ほど弱火にかけできあがり。

他の材料は生で食べられる大きさにカットしてあるので、カップに直接入れて火を通さない。これがあの、伝説の「紅茶屋コンソメスープ」、野菜の歯ごたえの秘訣なのだ。


やはり濁った心の持ち主は、澄んだコンソメパンチスープは無理だった。
息子のテストの点の悪さを、このスープのせいにされても文句の言えなかった一品。

「コンソメパンチスープ」感想

一言で言うと、「油だった」。

半日ギトギトだったこのクチで、味がどうのとか言ってる余裕はなかった。

ただ、パンチ色になりかけたときにビビって水を追加投入してしまったので、あれさえなければ味はしっかりしていた(かもしれない)。 けれども「油」にほかならない。

そもそも"パンチ"と名のつくものは皆イミがわからない。平凡パンチから団塊パンチ、パンチラに至るまでこぞってさっぱりわからない。

私はこのスープを改名して、「油パンチ」というネーミングにしたいとさえ思う。

心の葛藤、改名騒動とともに、私はリベンジを誓っていた。

「あ、ポタージュならカンタンじゃない?」


 

 
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