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はっけんの水曜日
 
コーヒーでフィルム現像をしよう

アルカリコーヒーを作る

それではさらに化学を続けます。フィルムの現像環境にはpH10くらいが理想的だ(pH7が中性なのでpH10というのはかなり強いアルカリ性)。1リットルの水に炭酸ナトリウムを10グラム溶かすとだいたいpH10くらいになるはずなので、今回は余裕をみて1リットルの水に20グラムの炭酸ナトリウムを溶かしてみた。このあたりになってくると日常にたとえ話が見つからない。


ざーっと入れて。
かき混ぜながら溶かします。
この中にハイドロキノンが含まれているのか。

さてここでいよいよコーヒーが登場する。安定した性能で試すため、コーヒーは市販のインスタントを使う。どの銘柄が現像に向くのか、つまりハイドロキノンを豊富に含んでいるのか、もちろん商品にはそんな記載はないので、冷たい水にもさっと溶ける、といううたい文句の商品を買ってきた。ティースプーンで計量したコーヒーを炭酸ナトリウム溶液で溶かす。

どう見てもコーヒーだ。

できた現像液はまるでコーヒーだった。試しに飲んでみたかったのだけれど、そうとう強いアルカリ溶液のはずなので止めたほうが懸命。強いアルカリはたんぱく質を分解するので当然体によくない。アルカリ性の温泉につかると皮膚がぬるぬるするのは、古い角質がアルカリで溶けているのだよ。

ではいよいよこのアルカリコーヒーを使ってフィルムを現像してみよう。テスト用のフィルムはダークバッグとよばれる簡易暗室の中で短くカットして現像用タンクに詰めた。

このバッグの中でフィルムをタンクに詰める。
この作業は手探りです。

 

こぼしたとしてもコーヒーだし。

いよいよコーヒー現像の開始です

現像タンクは上から現像液を注ぎいれられるようになっているので、ここからアルカリコーヒーを注ぐ。普通の現像液だったら注ぐときにこぼさないようかなり気を使うところだが、今回はコーヒーなので適当で大丈夫。

現像中は定期的に撹拌します。

現像で大切なのは液温と現像時間。今回液温は35度付近で固定、現像時間は20分と設定した。これらの数字にまったく根拠はないのだけれど、市販の現像液を使う場合が26度で5分くらいなので、かなり余裕をとって設定している(温度は高いほど、時間は長いほど現像は進行する)。

20分間アルカリコーヒーにつけた状態。
うっすらとではあるが像が見えるのがわかる。

 

水洗いのあと定着液へ。

現像中は1分毎にタンクを振って撹拌する。フィルム周りの現像液を入れ替えるのだ。これを20分間繰り返す。

そして得られたフィルムが上の写真。うっすらとではあるが、ちゃんと像が見えているのがわかる。なんと現像が成功しているのだ。正直こんな見事にできるとは思っていなかった。

 

おおおおー。

ちゃんとできてるぞ

コーヒー浴を終えたフィルムはいったん水洗いをし、定着液という薬品に通す。定着液は像以外の部分を透明にする。今回は市販の定着液を使っているが、こちらも時間があったらなにか代用品を見つけたいものだ。

定着を終えて完成したコーヒーフィルムがこちら。かなり薄いがちゃんと像が浮き出ているのが見える。コーヒーよ、よくやった。

テスト現像の結果。

テスト用のフィルムはいくつか条件を変えて現像した。左の写真は上からコーヒーをティースプーンで1杯、2杯、3杯とそれぞれ加えたもの。いずれも水温35度で現像時間は20分。一番下のフィルムはコーヒー3杯で現像時間を40分に延ばしたもの。薄くてわかり難いが、コーヒーの量は像の濃さにはさほど影響していないように見える。コーヒーの量が増すとフィルム全体が茶色くなるが、これはコーヒーに含まれるタンニン等の成分がフィルムを着色したのだろう。

テスト現像の結果を踏まえて(あまり踏まえていないが)、最適条件はコーヒーをティースプーンに3杯、現像時間40分とすることにした。

本番用フィルムをコーヒー現像したところ。
ちゃんと現像できている。
市販の現像液で現像したフィルム(上)とコーヒー現像したフィルム(下)

最適条件下で本番用フィルムを現像した。かなり薄いネガではあるものの、ちゃんと像が見えている。このネガを使って得られたモノクロプリントが下の写真。かなりコントラストの薄いプリントになってしまったが、これは撮影の際に光の量を調節することである程度改善できそうだ。

 

変な格好で写っているのは自分撮りだからです。

楽しいよ、自家現像

本当にコーヒーでフィルムが現像できるということが確かめられた。この先、市販の現像液がなくなってしまっても、この世にコーヒーと重曹がある限り現像ができるわけだ(その前にフィルム自体がなくならないか心配だけど)。

どうだろう、自家現像。やってみたくなったでしょう。市販の現像液以外では、コーヒーの他にアスコルビン酸を含む液体でも現像が可能だという。アスコルビン酸というのはいわゆるビタミンCなので、緑茶とかハイチオールCとかでもできる可能性があるということだ。この簡単デジカメ時代だからこそ、わざわざ面倒くさい方法で写真を作ってみてもおもしろいんじゃないかと思います。


 
 
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