どうしておなかを壊すのか
ホットケーキの材料は主に、小麦粉、砂糖、牛乳、卵、そして少量の膨張剤だ。 膨張剤はよくわからないが、それ以外の材料はふだんの食事でふつうに口にしているものばかりである。
膨張剤は大丈夫そうだ
いちばん怪しそうな、膨張剤について調べてみた。 ホットケーキに使われる膨張剤は主にベーキングパウダーだが、いくら調べても、それを生で摂取すると毒だという情報は得られなかった。
ということは
おなかを壊す原因が膨張剤じゃないとすると、牛乳と卵は生で食べても問題ないので、あとは小麦粉だろうか。 まさか。 生の小麦粉に毒があるなんて…。
小麦粉が原因らしい
調べを進めてゆくうちに、どうやら小麦粉を生で食べるとおなかを壊すということがわかってきた。 しかも、それには科学的根拠があるらしい。
βデンプンとαデンプン
小麦粉に含まれるでんぷん質というのは、非加熱では「βデンプン」という状態であるらしい。 そのβデンプンに水分を加えて加熱すると「αデンプン」という状態に変化するというのだ。
だめだってことらしい
非加熱の「βデンプン」の状態では消化酵素が働かないため、消化されずにそのまま腸に送られてしまい、それが腸を刺激し、おなかを壊してしまうということらしい。 よく聞く「生きたまま腸に届く」というのはこういうことなのか。 ちがうな。
全員が必ずおなかを壊すわけでは…
しかし、いろいろ調べてみても、小麦粉が消化されないというのは事実のようだが、そのことと「おなかを壊す」ということの因果関係は、あまりはっきり見えてこない。 ある資料には「場合により腹痛、下痢などを伴うことがある」と記されている。 ということは、食べてもおなかを壊さないこともあるのではないのだろうか。
腸に自信はありません
けれども僕自身、腸にあんまり自信がない。 お酒を飲み過ぎてしまうと、翌日はかならずおなかを壊すし、脂っこいものを食べた後も調子が良くない。 はたして、僕の腸は未消化の小麦粉攻撃に耐え得るのだろうか?
食べちゃえ
いろいろな知識を得、自分なりに判断してみたが、本来は食べるべきものではない生の小麦粉を、食べてみようという決断を下した。 腸に自信はないが、逆に言うと、おなかを壊すことに関しては、慣れている。 きっとガマンできるに違いない。
急に怖くなってきた
というわけで、自己の責任において、生のホットケーキを心ゆくまで食べた。 甘くておいしかった。 おいしかったのだが、食べ終えると急に、母の言葉が思い浮かんだ。
「そんなの食べたら死ぬよ!」
大げさで、信じがたい言葉ではあるが、しかし頭から離れない。 そういえば、母の言葉はいつも正しかった。 不安がよぎる。 僕に残された時間ははもう長くないのか? そう思うと、人生においてやり残してしまったことが心に浮かんでくる。 そうだ、あれをやりとげなければ。