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フェティッシュの火曜日
 
トイレ文庫の傾向と対策
我が家の図書館。司書は不在。


なぞなぞで「上は洪水、下は火事」というと、答えは「お風呂」。では「下は洪水、上は手持ちぶさた」というと?その答えは「トイレ」。生理現象に追い立てられ、下半身は用をたしても上半身は手が空いてる。そんな最中のために、トイレに本を置いたりするのを「トイレ文庫」「便所文庫」と呼ばれたりする。

自分も学生時代に一人暮らしを始めてから間もなくトイレ文庫を開設、もはや老舗文庫である。しかし自分ち以外のトイレ文庫の蔵書はどんな傾向なのか?じっくり読むためではないこのパーソナルな図書室に最も向いてる本とは何なのか?トイレ文庫を開設してる人・したい人に聞いてみましたよ。

大坪ケムタ



まずはトイレ文庫非推薦図書

基本的にトイレ文庫の開設のきっかけというのは、「トイレで読む用に置いておこう」と意識してオープンというよりも、「本を読んでいる時に便意が」→「本持ったままトイレへ」→「なんとなくそのままに」というのが開設のきっかけだったりするだろう。

トイレ文庫、と言いながらも実際は床の端にポテ、と本を置いてるだけがほとんど。とりあえず今回は撮影用に一応本棚らしきもんを作ってみた。


専用の本棚を設置してみました。
突っ張り棚に布被せただけですが。

さて今回はデイリーポータルZライター陣+友人の20人近くから推薦図書を聞くことが出来たので、それを参考にトイレ文庫委員会を(一人で)設立、「最強のトイレ文庫」を作る事を目標にしてみた。

さて最強トイレ文庫を紹介する前に「これはどうか‥」という本、トイレ文庫委員会非推薦書籍というのを紹介しておこう。

「友人宅のトイレにあって、一度入るとなかなか出なくなっていた」(ざんはわ大北さん)

というトイレ文庫を再現したのがこちら。


便器の上に中原の荒野が広がる

大北さんの友人宅にはコミックス版60巻あったらしいから、ここで並べたコンビニコミックス版(の一部)の比ではない。こういうシリーズ物、しかもご丁寧に全冊揃えられると用をたし終わってもトイレを出るタイミングを逸してしまう。途中で巻が抜けてたりしたら、それはそれでガッカリだけども。「なんで赤壁だけないんだよ!」とか個室から叫びが聞こえてきそうだ。

「三国志」、それ以外にも「ガラスの仮面」「王家の紋章」あたりは「トイレ悪書追放」の白いポストがあったら入れたくなる本といえる。尻を重くしてはトイレ図書としては失格なのだ。もちろんトイレ以外ではいい本ですが。同じ長寿シリーズでも「こち亀」「ゴルゴ13」はストーリーの区切りがいいからセーフ!

 

4つに分かれるトイレ文庫推薦図書

それではトイレ文庫委員会が周囲に聞いたトイレ文庫のベストセラーはこちら!自分の友人の趣味が色濃く出たセレクトになってますが、あなたのトイレ文庫に並んでる本はあるかなー?


トイレ文庫委員会推薦図書一覧です。

ただし、と発表するやいなや言い訳をすると、皆さんに挙げてもらった書籍を探そうとブックオフを回ったんですが、見つからなかったのもあるので類似する本・同じ作者の本もここでは並べております。ご注意のほど。

さて、とりあえずトイレ文庫ベストセラーを並べてみましたが、大きく4つに方向性が分かれるようです。


便器の上にドラマがいっぱい。

1.手短に読める系

左から『オタク・イン・USA』(パトリック・マシアス/太田出版)・『バカはサイレンで泣く』(山田ゴメス他/扶桑社)・『死ぬかと思った2』(林雄司/アスペクト)・『ハッピーロンリーウォーリーソング』(枡野浩一/角川書店)・『ナンシー関の記憶スケッチアカデミー』(ナンシー関/カタログハウス)・『死言状』(山田風太郎/角川書店)・『因果鉄道の旅』(根本敬/KKベストセラーズ)、右手前『おとなの自由研究』(デイリーポータルZ編/アスペクト)

(注:『ナンシー関の〜』は「ナンシー関の本」という推薦だったので、手元にある本から。『死言状』は同じ山田風太郎の『人間臨終図巻』(徳間書店)の代打、『因果鉄道』は同じ根本敬の『夜間中学』(情報センター出版局)の代打として)

系統を分けると、最も多かったのがこのあたり。要は「用をたすのと同じくらいの時間でサッと読める」という本。57577の短歌集から、そんなにトイレ長いのか?と言いたくなる本までありますが、まぁ今回だけのジャンルということで。

たしかにひと記事数ページのコラム集・エッセイ集的なものは、基本数分しか滞在しないトイレに最も向いてるかもしれない。短歌集の『ハッピー〜』、長くてもひとネタ2ページ程度の『死ぬかと思った』、死ぬ繋がりの『人間臨終図鑑』あたりはズルズル読み続ける事も避けやすく、尿意と相談しやすそうだ。

またコラム集は文庫版も多く、そのコンパクトさはソファ感覚で読むわけにはいかないトイレ向き。あとトイレにPCを持ち込めない人は『おとなの自由研究』を置いてみてもいいと思います。風水的に便のキレがよくなるという噂!嘘です。


大人のマナーと知識を半ケツ状態で。

2.繰り返し読んでためになる系

左から『詳説世界史』(山川出版社)・『シンプルマナー生活』(辰巳渚/幻冬舎)・『ニッポン面白ランキング地図』(ビジネス情報出版社)

(注:『シンプルマナー生活』は「おとなのマナー集」という推薦だったので、古本でそれっぽい本をチョイス。『ニッポン面白〜』は『今がわかる時代がわかる日本地図 (2007年版)』(成美堂出版)の代打として)

トイレ文庫は読みたくてわざわざ入るものではない。どうせ入ったなら、手持ち無沙汰な上半身を何か使えないか?という発想のたまものだ。そこを勉学に使う、というのは悪くないアイデアだろう。世界史に地図にマナー、のんびりしながらではサラリと読んでしまう本も、トイレに置いておくことで繰り返し読まれ、頭に入っていく。

ちなみに『今がわかる〜』は小野法師丸さんのチョイスで「本の後半の地図ももちろんいいのですが、前半のいろいろな都道府県別データ集(出生率とかJリーグのチームとか)がかなり充実していて楽しいです」とのこと。あと『世界史』は自分チョイス。この辺は読む順を考えずに適当にパラパラっと開いた所から読めるのもいい。学生時代ひそかに社会とか好きだった人は、教科書とか置いてるとあらためて楽しめますよ!

あと同系として「本屋でもらった世界地図と日本地図を貼っています」というのがデイリー女性ライター(一応女性は名を伏せておきます、シモのことだけに)の意見にあった。そういえば自分の実家にも貼ってあったけども、結構ポピュラーなのだろうか?そしてそれはおねしょの事を「布団に地図が出来た」と言う事に関連した隠喩みたいなものなのだろうか。


なぜか食事系のジャケが揃ってしまった。

3.マンガ系

左から『美味しんぼ』(雁屋哲・花咲アキラ/小学館)・『OL進化論』(秋月りす/講談社)

特別トイレ文庫でなくてはならない理由はないがなんとなく置いてる、という感じのにはマンガが多い。20人近く聞いた中で何故か3人が挙げたのが『美味しんぼ』。トイレでグルメ漫画というのはどーなんだろ?と思いつつも、だいたい1エピソードが1〜2話で完結するし、ループして読むことで山岡・栗田の関係をさらにもどかしく思えたりして、新作を読む際にテンションが上がるかもしれない。

ただ、マンガ派の意見に「ブックオフで買ってきた」とか「コンビニ版コミック」といった「ちょい安め」のイメージがついてるのが不思議。やはり「便器に落ちてもいいもの」という了解があるのか。


小さいコラムや情報が詰まった雑誌が向いてるよう。

4.情報誌・雑誌系

左から『映画秘宝』(洋泉社)・『オリーブ倶楽部』(DHC)・『TV BROS』(東京ニュース通信社)

自称・雑誌好き、という人なら分かると思うけれど、毎月雑誌は何冊買ってても全部読み切ることはそれほどない。読み切る前に次の号が出てる、なんてことが何度あったことか‥そういう雑誌ジャンキーに多いのがこのタイプ。コラムの多いテレビ情報誌なんか、放送後にコラムだけじっくり読む、なんて使い方もいいかも。

また、DHCの雑誌のようなフリーペーパー系・通販カタログ系雑誌もいくつか名前が上がった。「R25」「メトロミニッツ」「縁のない街のホットペッパー」「ニッセンのカタログ」など。この辺のなんとなく街中で取ってなんとなくバッグに入ったままっぽい本、といい、さっきのマンガといい、トイレ図書ってどこか「読み捨て感」のあるものが選ばれる傾向にありそう。トイレ図書、それは刹那的!

 

これから広まりそうな期待の推薦図書

様々な人に聞いて集まったのトイレ文庫はこの4パターン。ただ今後発展が望めそうな、委員会が特に推す本がこの第5のジャンル。


小の方が見つからなかったんだよなー。

5.下半身系

左から『おならばんざい』(福田岩緒/ポプラ社)・『ウンココロ』(寄藤文平・藤田 紘一郎/実業之日本社)・『雲古百話』(大便工学研究所/情報センター出版局)・『おなら大全』(ロミ&ジャン・フェクサス/作品社)

見ての通り、ズバリそのものを扱った書籍。デイリー女性ライターさんから「やっぱりこんな内容の本がよろしいのではないかと‥」と教えてもらったのがこちらの絵本のサイト。なるほど、と思い古本屋でソレ系の本を集めてみました。たしかにコレは便座に座って読むからこそ実感する本だよなぁ。ベッドに横たわって読む本じゃない。特に『ウンココロ』は実物と見比べてチェック出来るウンコカラーチャートもあるから体調チェックも出来るという出来た本です。生理欲求の時だからこそ、それによって自らの健康を知る。ベストじゃないですか!

あと、コレ系で入れたいけど世界に一冊しかないから禁帯出なウンコの本があった。しかもデイリー経由で。『となりの自由研究』『いきもののフンしらべ』の流れでご覧くださいませ。でも、この本がトイレにあったら落としそうで怖いよなー。

「日本一泣けるトイレ」とか目指します。

トイレでしか感じ得ない感動もある

トイレの個室感というのが落ち着く、という人は結構居る。まだちょっと冬でトイレに籠もるには肌寒いけれど(お尻も出すし)、春に向けて充実したトイレ文庫を設立してみてはいかがでしょう。トイレにはトイレでしか感じ得ない感性もある!たぶん。


 
 
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