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ロマンの木曜日
 
樹海でコンパスが使えるか
青木ヶ原樹海の看板。


年末に帰省する際、地元の友人と富士五湖のあたりへドライブに行こうと約束して、それを札幌の友人に言ったところ、

友人「富士五湖ってどのあたり?」
私「山梨の、青木ヶ原樹海のあたり」

友人「えーっ、正月から心霊スポットめぐり!?」

ちょっと待て。

確かに私はオカルト好きだし、青木ヶ原樹海は自殺者が多いと言われ、ちょっとしたホラースポットでもあります。
しかし、樹海へ行くのは心霊スポットめぐりではなく、ただのレジャーのつもり。


そう説明しても、友人は怖いものを見るような顔。
どうも「青木ヶ原樹海」に対して誤解しているようだ。

「そんなに怖いばかりの場所じゃないんだー!」

と声高に主張すべく、青木ヶ原樹海でいろいろ試してきました。

(text by 加藤 和美



■樹海のイメージって

確かに「青木ヶ原樹海」といえば、おどろおどろしいイメージがつきまとう。
自殺者がいるのは事実だし、なおかつコンパスが効かないので一度遭難したら助からないとか、そういったウワサがまことしやかに流れている。


しかし、地元や、近くに住む人々にとって、青木ヶ原はこわいだけの場所ではない。
私の実家から青木ヶ原までは、車で約1時間という距離。
そのため富士五湖近辺に遊びに来ることが多かった。

遠足で本栖湖(もとすこ)に行ったし、、林間学校は西湖(さいこ)のバンガローだった。
バス釣りにハマっていた弟は、しょっちゅう河口湖あたりに通っていた。


このように、近くに住む人々にとって、青木ヶ原は身近なレジャースポット。

「青木ヶ原樹海は(そんなに)こわくない!」
と実証するべく、出かけてみた。

……勇者気分で。


本栖湖畔にたたずむ勇者。
日本っぽくない場所になると、あらわれるらしい。

当然のことながら、同行の友人に不審がられた。


友人「その格好、するの」
私「ええ、勇者なので」
友人「勇者、手ぶらだよ」
私「あっ、忘れた、武器忘れた!」
友人「武器ってどうせカサだろ、落ち着け」
私「やられるよ、武器がないとモンスターにやられるよ」
友人「その肩から提げてる袋には何が入ってるの」
私「マフラーと、ハンカチと、ティッシュと、デジカメのバッテリー」
友人「持ち物貧弱だな、勇者!」
私「アイテム5個くらいしか持てない」
友人「今時、そんなゲームあるかよ!」

わざわざこの扮装を札幌から郵送したのに、同行者には嫌がられた。

 

昼間は普通の林道にも見える。
ただし夜は……確かにこわい。
樹海に入る前に、あたたか〜いポーションを購入する勇者。

■樹海散策と樹海あれこれ

そんなわけで、樹海に向かう勇者一行。
ひとりパーティーだけど。


まずは観光地として有名な富岳風穴へ。

遊歩道を歩いて行くと、お決まりの(?)、自殺防止看板が見える。
ちなみに過去に来た時は、道路や遊歩道にも、花束やお供えが置いてあることがあるが、この日(元旦)は一切見えなかった。
新年を前に、誰かが片付けたのだろうか。


なお、樹海での自殺者数は年々増えているそうだ。
樹海での自殺は70年代から始まったとみられていて、特に10年ほど前、樹海での自殺を助長するような本が発行されてから、自殺者数が倍くらいに増えた記憶がある。

「記憶がある」というのは、当時は年に1回、地元の警察や消防団の皆さんが一斉捜索を行っていたので、ローカルニュースで「今年は○○体見つかりました」とお知らせしていたのを、子供の頃から見ていたから。

ちなみに、現在はこの一斉捜索は行われていない。

看板を見て、ちょっとMPが減ったチキンな勇者。
本来はチラシが入っているらしいが、アメなどが入ってた。チラシが入っているところは見たことがない。

 

木の根が地上に這い、独特の雰囲気に。
根っこに苔がむして、さらにロケーション満点。

■樹海の奥へ(ただし遊歩道内)

風穴のすぐ横にある遊歩道をプラプラと散策。

青木ヶ原樹海は9世紀ごろに噴火した溶岩の上にできあがっているため、木の根が土にもぐれず、溶岩の上に木の根が這っている。
そのため、なんとも言えずおどろおどろしい雰囲気に見えてしまう。

この日は良い天気だったのだが、うっそうとした樹海の中はやや暗い。


また、樹海はやたらと底冷えする。
札幌在住で寒いのには慣れたし、この「勇者コート」はけっこう暖かいから大丈夫だろうとふんでいたら、足元から冷える冷える。
足元が土ではなく岩ばかりだからだろうか、非常に底冷えがする。

冬場、樹海に来ることがある方は、足元の防寒をお忘れなく。

樹海を歩く。期待以上にファンタジック。

樹海の様子を動画でどうぞ(音が出ます)。
「ジャラララ〜ン!」アイテムゲットのジングル(ゼルダ)を口ずさむが、どうやさしく見てもひのきのぼう。

 

樹海でマップを確認する勇者。こっちが北だ!
北の方角を向いてコンパスを使用。

■まずはコンパスを使ってみよう

遊歩道をテクテク歩いて、道路から離れる。
まずコンパスを使ってみることにした。

「樹海では、溶岩に磁力が含まれていて磁石が使えない」
というようなウワサがある。

「だから遭難したら助からない」
というこわい話に繋がってしまう。
かなりもっともらしい。
というか、私もつい最近まで信じていた。
しかし一方で、

「それはデマだ!」
というウワサもあるので、実際に確かめてみることにした。

正しく方角を指しているか確かめるため、コンパスを使う前に方角(北)を確認しておく。

そして、コンパスを取り出す。


さて、樹海でコンパスは使えるか――。


コンパスの動きを動画でどうぞ(音が出ます)。

コンパスは正しく動いた!
北を指した後、ぐるりと回しても、常に北を指し続ける。


「樹海でコンパスは使えない」
は都市伝説!

これで、樹海で遭難しても、コンパスがあれば一応樹海の外には出られる、ということがわかった。

 

3キャリアをそろえた。左から、DoCoMo、au、ソフトバンク。

■携帯だって繋がる…はず

実は青木ヶ原樹海の中でも、普通に携帯が使えるらしい。

弟の話によると、実家の居間よりアンテナが立つとか。
我が家が樹海に負けている!?
そんな…!

ちょっとショックだったので、DoCoMo、au、ソフトバンクの3種類の携帯電話を持参して、樹海の2ヶ所で電波状況を確かめてみることにした。


富岳風穴近くの遊歩道 竜宮洞穴近くの遊歩道

auはアンテナ3本。樹海でもバリ3で!

場所によって電波が弱い?アンテナ1本。

DoCoMoも3本立った!

やはり風穴より弱い2本。

ソフトバンクは残念、圏外。

こっちではアンテナ0本。ちゃんと通信できた。

このように、一部を除いて、携帯電話は十分使える電波状態だった。
弟の言うように、やけに電波状態が悪く、アンテナが1〜2本しか立たないことがある我が家と樹海ではいい勝負かもしれない。


(注意!上記で使った携帯端末が、auは3G、DoCoMoとソフトバンクは2.5Gだったので、キャリアではなく端末による性能の差かもしれません)


アイテム「コンパス」と「GPS」を駆使する勇者。

携帯電話を取り出したついでに、GPS機能も使ってみた。

もちろんばっちり使用可能。
さすがに周囲に主要な建物がないので地図はシンプルだが、現在地と道路は表示されるので、これがあれば迷ってもちゃんと出ることができそうだ。


GPSのナビ機能を使ってみた。
現在位置と、道路や建物までの距離が一目瞭然。

今回の実験で、携帯電話さえあれば意外と遭難しようがないということがわかった。

しかし端末や場所によっては圏外になるのと、電池が切れればそれまでなので、
「携帯電話を持っていれば大丈夫」
と言い切れるわけではないようだ。

しかも、遊歩道は道ができているが、一歩外れると原生に近い森林。
溶岩や木の根が這い回っているので、歩きにくいことこのうえない。
さらに地面が土ではなくボコボコと複雑な形をした溶岩なので、底の薄い靴だと、足の裏が痛くなる。

そんなわけで、遊歩道以外を歩くのはかなり厳しい。


やはり青木ヶ原樹海近辺を散策する際には、決められた場所(遊歩道)を歩いて、うっかり道から外れないように注意していただきたい。


遊歩道以外の場所は、かな〜り歩きにくい。
くれぐれも遊歩道から離れないように。

 

こちらが竜宮洞穴の案内。

■最後にダンジョンへ

さて樹海で実験も済んだことだし、最後に勇者らしくダンジョンに挑むことにした。


前回は塔だったが、今回は洞窟に向かう勇者。
洞窟の名前は「竜宮洞穴」。
いかにもボス、しかもドラゴンあたりが棲んでいそうなダンジョン名だ。

フィールド曲を口ずさみながら、樹海の中(遊歩道)を進む。

え、何この看板。危険なトラップかボスがいるってこと?
私のレベルではまだ入るなってこと?
ヨタヨタと、穴の入口まで下りていく勇者。
落石がひどくて入口がよくわからない。

しかも洞穴付近は異様に寒い!
大きなツララがあちこちに。落石も危ないが、ツララもこわい。

激しい落石のため、ダンジョンに入るのはやめて帰りました。
みんなも危ない場所には入らないようにね。

■大自然に囲まれたいあなたに!

そんなわけで無事、以下のことを確認してきました。

  • 樹海でもコンパスが使える。
  • 携帯電話も使える。GPS機能があれば位置情報も問題なし。しかし場所によって一部使えない端末もアリ。

皆さんも「樹海=なんかこわい」という認識をちょっと緩めて、機会があれば遊びに出かけてみてはどうでしょう。
富士山もきれいですよ!

河口湖畔から富士山を望む。雲がカツラみたい。

勇者気分のつもりが、心霊写真みたいになった勇者。

 

 
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