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ひらめきの月曜日
 
日常生活を法廷風スケッチで
十数年間、しまいこんだままの画材たち。
これ、今でも使えるのか?


よくニュースで、法廷内の様子を描いた絵が出ることがあります。
法廷内では写真撮影が禁止されているので、裁判中の様子を伝えるために絵で表現しているわけですが、あの絵を見ているとどうにも不安になります。

絵の対象が「被告人」である以上、なんとなくイヤな気持ちになってしまうのでしょう。
しかし、冷静に見ると、単なるシンプルな人物画のはず。

自分でも描けないだろうか。
しかも何気ない日常の一コマを、法廷風にできないだろうか。

……チャレンジしてみました。

(text by 加藤 和美




パソコンを見ながら描きます。

■まず準備

学生時代、デザインを専攻していた時に使っていた画材をあさり、使えそうなものを探し出した。

画材はいろいろそろっていたが、なにせ十数年前のものだ。
まだ使えるのか心配だ。

そして一番心配なのは「自分の腕」。
ここ数年、まともに絵を描いていないが大丈夫だろうか。

今回はいわば人物画だが、モデルになってくれる人にずっとポーズをとってもらうのも難しいので、デジカメで撮影して、それを見ながら絵を描くことにした。

 

■練習スタート

どんな風に描けばよいかわからないので、とりあえず自分の日常生活の写真をセレクトしてみた。


油断してます。

最初のお題は
「番組表を片手に、テレビを見ている人」
です。

さて、これが法廷画になるのか?

 

ここだけ見ると、ただたんに自画像を描いている人だ。
これくらい、エンピツの先が丸いといい。
当時愛用していたのはB4のエンピツ。

■絵を描いていく

パソコンに表示されている画像を見ながら、スケッチブックに絵を描いていく。

雰囲気が出るように、紙はややボコボコしているタイプで、エンピツはB4と柔らかめのものを使う。
この画材の選択が良かったらしく、ただササッと線を描いているだけでもそれっぽく見えてきた。


ざっくり描いたところで、そろそろ「法廷風」にするために細工をしていく。

まず、実際の写真では手に雑誌を持っているので、それを消して、手を前で組んでいるように描き変える。
次に、裁判中に裸足では困るので、クツを描き足す。
また裁判中にソファに座っているわけはないので、法廷にありそうなイスに描き変える。

最後に、顔がどうしても普通だ。まぬけ顔だ。
これではただの自画像だ。
しかも似ていない。

今まで見た法廷画のイメージを思い出すと、だいたい被告人の絵は「悪そう」あるいは「幸薄そう」だ。
顔も修正してみよう。

眉毛を消して、薄くて下がり気味の眉毛に。
口を消して、ちょっと開き気味の口に。
オマケとして、髪の毛を実際よりボサボサにしてみた。


これでどうだろうか。

クツは一応見ながら描いたが、どうにも適当。
なんかおかしいな。
眉毛を消すだけでかなり幸が薄そうになる。
とりあえず線画を描いた。
下半身、失敗したー。

 

■何を使おうか…

さてここから色を塗るか…というところで思い出してみると、法廷画は水彩が多かったように記憶している。
ところが、私の画材には水彩絵の具がなかった。
仕方がないので、アクリル絵の具を使うことにする。


塗り始めてから気づいたのだが、アクリル絵の具の中に黒がない!
黒がないと不便なのだが、なんとかごまかせないものだろうか…。

さて肝心の色塗りだが、私は黄と朱と白を混ぜて作ることが多かった。
しかし今回は黄に茶色を混ぜて、いかにも「顔色悪いです」といった色を作っていく。

アクリル絵の具と、使い込まれた道具たち。
ぞうきんは最初、腐ってるかと思った。
アクリル絵の具の、妙な粘り具合が気になる。
色を混ぜてなるべくキレイじゃない色を作る。
「水彩っぽくなれー!」と念じながら塗る。コピーしたものに塗っているので、水でシワになってきた…。

う、うーん…。

一応塗り終えたが、私が描きたかったものとは違う!
黒の絵の具がなかったのは、複数の色を混ぜることでカバーしたが、それでも何だか変だ。

おまけに途中で茶色の絵の具を落としたので一部汚染されているし…。


他の画材でも試してみることにした。

 

■色鉛筆ではどうだろう

最近ニュースで見た法廷画の中に、色鉛筆で塗っているものもあった。
色鉛筆なら、絵の具より簡単な気がする。

こちらもコピーしたものに色を塗るのだが、そのままでは質感が出ない。
下にボコボコした厚紙を敷いて、色鉛筆で塗った時に荒い感じが出るようにする。


さきほどのアクリル絵の具の時は、黒がなかったこともあって、いろいろな色を使ってしまったが、今回は黒をメインにして塗ってみることにした。

色鉛筆をナナメの方向に、シャッシャッと線を引くように、色を塗っていく。
テレビで見た色鉛筆の法廷画も、この塗り方でやっていたハズなのだが、素人の悲しさというか、どうにもザツだ。


ちょっと不安になりながらも、影をしつこく塗ったりして、暗さを強調する。
特に顔は、目のくぼみ、ほお骨の下あたりに影をグリグリと塗って、人相が悪くなるようにしてみる。
またほお骨はあまり色を塗らずにしておくと、ほおがこけているように見えて、より不健康そうな気がする。


おお、自分の顔がどんどん不幸な感じになっていくぞ。
不幸なのにうれしい。

色エンピツ50色くらい。
やはり十数年ぶりなので最初は硬かった。
コピー用紙の下に、ボコボコした紙を敷いて、塗った時の質感を出す。
人相は悪くなったけど、いまいち!
下半身を描く時、手を抜いたことに後悔…。

上半身だけ見ると、けっこうイケてるかも(法廷画として)
ちょっとだけ自信がでてきた。
さっきから怖い顔ばかりですみません。

 

■水彩絵の具発見!

画材をしまいこんでいた箱の奥から、水彩絵の具を発見!
先の2回のチャレンジでなんとなくコツはつかんだので、今度こそと気合いを入れて、色塗り開始!

おそらくポイントは

  • とにかくぼかす。
  • 服にキレイな色を使わない。
  • 顔の陰影はハッキリと。
こんなところじゃないだろうか。
一切自分の記憶にない水彩絵の具を発見。
実は、あまり水彩絵の具を使ったことがない。
やっぱり水彩絵の具はにじみ方がいいな。それからコピー用紙ではなく、スケッチブックに直接塗ることにした。 顔の陰影をこれでもかと強調する。
色の雰囲気は良いと思うのだが、やはり下半身の失敗が気になる…。

 

証言する証人を、うつろな目で見上げる被告人。

…なーんて、どうでしょう。
上半身で切ったら、かなり「法廷画」っぽくなったと思うのだが。

これで手ごたえをつかんだので、いよいよ他のモデルで法廷画にチャレンジ!


 

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