■夜になった
今回、この「寸止め百物語」に参加してくれたのは友人6人。
全員自分で霊感がないと言っている人ばかりだ。
霊感があるという友人もいるが、呼ばなかった。
シャレにならないじゃないか。
私はその程度の怪談好きだ。
さて友人たちを誘うにあたり、ちょっと迷った。
寸止めとはいえ、百物語なんて、誘ったら嫌がる人もいるだろう。
参加者は良くて2〜3人だろう。
……などと思っていたのだが、声をかけた全員が「行く行く」と軽く返事。
人のことは言えないが、君ら物好きだな。
そんなわけで夜になって、参加者が続々来訪。
酒を飲み始め、談笑する参加者たち。
私が作った99本ロウソクは隅に追いやられている。
今夜の主旨をわかっているのか不安になってきた。
ただの家飲み会だと勘違いしてやって来たのではないかと。
いい感じでお酒が入ったあたりで「寸止め百物語」開始を宣言!
部屋の電気を消して、99本のロウソクに火をつけていく。
1本1本は小さなロウソクだが、99本も火が灯るとかなり明るい。全てのロウソクに火を点け終わると、
「なんか芸能人とかがテレビの前で吹き消してるバースデーケーキみたいじゃない?」
「99歳の芸能人か」
「芸歴長いな」
「大御所だな」
という話になり、ハッピーバースデーの歌をうたい始める。手拍子を取りながら。
なんだろうこの、普段よりなごやかな雰囲気。
私は納涼・怪談話がしたいのに。
ますます不安になる。
しばらくみんなで99本のロウソクを囲んでながめていたが、ふと1人があることに気がついた。
「このロウソクの上……熱くない?」
「ホントだ、すげー熱い!」
「熱気がどんどん上に昇ってるよ!」
「これは火災報知機に反応しちゃうんじゃない!?」
「スプリンクラー発動したらどうする!?」
「わーーー、とりあえず消して消して!!」
なぜかいっせいに息で吹き消す。
だからバースデーケーキじゃないって。
無理だ。99本は無理だ。
そもそもこんな小さなロウソクでは、30分くらいしかもたないのだ。
99話を話すには、何時間もかかるだろう。
昔の人は、何時間ももつような、巨大なロウソクを使ったのだろうか?
そんな疑問を抱きつつ、とりあえず代案を考えた。 |