商品開発のかたにお話を伺うことに
せっかく本社にお邪魔したのでとれたてキッチンについての制作秘話を伺うことにしました。お相手は商品本部・とれたてキッチンの商品開発を担う桐山さん(以下敬称略)、広報部の粟生さん(以下敬称略)です。
・とれたてキッチンは前途多難の船出だった
梅田 今日はとれたてキッチンについて伺ったんですが、まずは始めた経緯について……
桐山 am/pmは他のコンビニに比べ営業を始めたのが遅かったんです(※1)。先行の他社と差別化することを考えたときに、より安全で安心な食品を販売することにしよう、と思い合成の着色料、保存料、化学調味料を一切排除した“とれたてキッチン”が考案されました
梅田 今でこそ各社とも無添加無着色を訴えておりますが、パイオニアはam/pmだったわけですね。最初のお客さんの反応はどうだったんですか?
桐山 否定的な意見が圧倒的に多かったようです。冷凍食品というと、どうしても加工食品というイメージがありますので。あと、実際に弁当を選ぶときに、写真はあるけど実物がないのもあまりいい反応を受けなかった原因だと思います。一部の人が安全・安心な商品を褒めてくれただけで。
梅田 最初はいい船出ではなかったわけですね。
桐山 広告などでPRして、ようやく認知されてきました。
梅田 当初の人気商品はなんだったんですか?
桐山 当時は幕の内弁当とかでしたね。もちろんパスタやカレーは当時から売れていましたが。現在では幕の内弁当はもう売ってません。
・800種類の商品と数えきれない数の試作品
梅田 商品化したメニューで何種類あるんですか?
桐山 正確には把握してませんが、年間80品目ぐらいの新商品が発売されています。そこから計算すると、800種類ぐらいのメニューがあったんじゃないでしょうか。
梅田 すごい数ですね。
桐山 といっても、通常のお弁当よりペースはゆっくりです。
梅田 数々の商品を開発される中で、お弁当も進化してるんですか?
桐山 もちろん。ドラスティックな変化こそないですが、経験的に進歩はしました。大きく分けて2つありまして、まずは食材加工メーカーの進歩ですね。10年前と現在と比べて、例えば冷凍きのこの味はかなり違います。もう一つが社内のノウハウで、盛りつけを工夫することによって加熱時のダメージを減らすことを学びました。
・レンジはまずご飯を温め、次にルーに集中する。
桐山 カレーライスがあります。冷凍の状態のときは熱がご飯に集まりやすく、ご飯が先に温かくなります。ところがカレーのルーが溶け出してくると、今度はレンジの電磁波がルーに集中するんです。だからはじめの頃はご飯がじゅうぶんに温かくなる前にソースがカピカピになっちゃったりしていました。
梅田 カレーライスって、単純な料理だと思われますが、それでもいろいろ難しいんですね。
桐山 私も商品開発を始める前はレンジの温めかたにばらつきがあるなんて考えたこともなかったですよ(笑)
梅田 ですよね。
桐山 例えば、ルーの先っちょに豚肉がちょっと顔を出しているとしますね。そうするとレンジは寄ってたかって豚肉を焦がしにかかります。するとルーが溶けなくなって、ご飯を温めすぎてしまい、固くなっちゃったりするんです。
梅田 単純に何秒温めれば良い、という足し算の世界ではないわけですね。
桐山 ただ店員さんが温めているわけではなく、ちゃんと加熱調理をおこなっているんです。
・研究会の口癖は「飲食店には負けたくない!」
桐山 食材の開発者や、私たちや、電子レンジの開発者などが集まって定期的に研究会を行うんですが、そのときの合い言葉が「飲食店には負けたくないよね」なんですよ(笑)。飲食店よりもいいものを提供したいです。
梅田 電子レンジの開発者もいらっしゃるんですか?
桐山 商品によって熱の当て方が微妙に違ったりするので、専用のレンジで調理します。だから店頭では冷凍状態の商品を販売できないわけですね。
粟生 ではそろそろフローズン状態のとれたてキッチンを持ってきますね
梅田 いよいよですね。よろしくお願いします!
(※1 am/pm1号店オープンは1989年。セブンイレブンの1号店(1974年)、ローソンの1号店(1975年)など大手のコンビニと比べると遅いスタートであったと言える。) |