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フェティッシュの火曜日
 
料理で悩みは解決できるか
参考文献‥というか当事務所の散乱具合


最近は青年誌のみならずどこの漫画雑誌にも載っている料理マンガ。しかしどこもパターンは定番なもんで「ある料理店で主人公と料理人が談笑→悩みを持った常連客が来店→料理人『なんとかしてあげたいんですけどね‥』→主人公『そんな時にはこの料理だ!』→後日、悩める客が再び来店してその料理を食べる→涙を流して料理を食べ解決」だいたいコレにつきる。ここに親子とか師弟とか東西新聞とか笹寿司の妨害とかエッセンスを振りまけばソレっぽいのが出来上がり。

しかし、実際に料理で悩みを解決出来るものなのか?どーでもいい悩みでも、美味いメシ食わせてれば素直に受け止められるものか?冷蔵庫に天かすとマヨネーズしか入ってないような料理人・大坪が悩みを解決してみます。

大坪ケムタ



解決できる悩みにも限度がある

さて料理を考える前に悩みを探さなければならない。といっても「就職したい」とか「結婚したい」なんて現実的過ぎる悩みだとさすがに料理じゃ解決できない。花言葉みたいに「魚言葉」てのがあって「カンパチ=ハローワークに行け」「アンコウ=結婚相談所に行け」なんてのがあったら別だけど。

ということで、ある程度その辺をくみ取った質問をしてくれそうな、『美味しんぼ』は大体読んでいるという友人・遠藤遊佐さん(テキストサイト『エヴィサン』主宰)に質問をお願いした。35歳実家暮らし・未婚・フリーターと、世間的に悩みに事欠かなさそうな要素十分だし。そう期待してお願いメールを出したその当日、早々に帰ってきたのがこんなお悩み。


「ヤバい状況に危機感が持てない」

わたくし、妙な責任感と極端に失敗を恐れる性格のため、 物事全て、楽なほうへ、低いほうへと流れていってしまう傾向にあります。

恋愛関係におきましても同様で、そのためこの年(35歳)で未婚。むろんステディな彼氏もおりません。客観的に見て非常にヤバい状況だとはわかっているのですが、困ったことにそれに対する現実感(危機感といってもいい)がナイのです。

こんな私は、人生後半戦、どうしていくべきでしょうか。ちなみに職業はフリーターです。(最近ニートからちょっと格上げ)

遠藤遊佐(目線希望)

悩める間も料理マンガを読む相談者・遠藤遊佐さん

‥予想外にヘビーな悩みが帰ってきた。こんな悩みに料理で立ち向かえるのだろうか?とりあえず励ましの意味で鰻でも食わせて帰りに細木数子の本でもあげるか?うーん。

料理で解決!とブチ上げたものの「根本的にロクに料理が出来ない」という決定的な弱点があるワタクシ、アフリカやロシアに「人生後半戦に効く料理」があっても作れそうにない。それに「ウンチクを語って解決」という料理マンガイズムを導入することを考えると、ここは定番として旬の素材を活かしたものがいい。ということで今回は魚で悩みを解決することにした。イメージとしては『江戸前の旬』路線で。

ということで旬の魚2品を使ってシナリオを2本考えてみた。近々さる飲み会で会えることになったので、友人らがいることを考慮した内容だ。

 

今が旬!マークも付いてるし
ついでに買った鰹とチーズのおつまみも美味かったです

第一話・初鰹でお悩み一本釣り編

遠藤「私に食べさせたいものがあるのだとか‥これは鰹?

大坪「『初鰹』『上り鰹』というように、鰹は春の魚のイメージが強いけれど、実際は鰹は秋の魚としての認知度も高いんだ。それに春の鰹は脂肪も少なく淡泊な味で、色と香りを楽しむものといえる」

遠藤「(箸で刺身をつまんで食しながら)あっさりな味とプリっとした歯ごたえが見事ね。でもそれが私の悩みと何の関係があって?

大坪「だが、秋鰹は丸々と太って油ものっている。しかも春の半分くらいで安い。その分我々大衆の口には入りやすいってもんだしな‥遠藤さん、アンタも人生後半戦、値段でいえば秋の鰹のように低いのかもしれない‥」

富井副部長的な人「大坪くん、失礼だぞ!謝罪したまえ!

大坪「いや、言わせてもらおう。アンタはもうその初鰹になるのはムリだ、でもその分経験という油がのっているしこんな大衆の仲間に愛されてるじゃないか!」

遠藤「(ハッと気づき周囲の笑顔を見渡して涙)

大坪「でもそのことにキミは気づいているか?気づいていても、楽な方楽な方に流れてはいないか?そう、海流と回りに流される鰹のように。永遠にそんな受け身な人生では何も変わらない!」

*戻り鰹好きの方、戻り鰹関係者の皆様すいません。


‥根本的に悩みは解決してないような気もするが、マンガならこういう発破をかけると、この後「私は逃げていたんだ!」とか勝手に独白が始まって改心することになっている。だからいいのだ!続いてもう一品。

 

こちらは推奨品マーク
普通の鮭の1.5倍くらいの値段でした

第二話・時鮭で情熱よカムバックサーモン編

遠藤「私に食べさせたいものがあるのだとか‥これは鮭?

大坪「これは時鮭といって、普通、サケは産卵のために母川に帰って来る秋から冬に獲れる魚ですが、回遊中に日本の近くで獲れてしまった若いシロサケなのさ。通称トキシラズともいわれている。この時鮭は卵に栄養がとられていないため、産卵期に漁獲されるアキサケに比べて美味い」

遠藤「(箸でつまんで食しながら)確かに味も濃厚で、お茶漬けなんかにも合いそうね。でも、それが私の悩みと何の関係があって?

大坪「本当の食通はこの春のサケを食べるのだとか‥遠藤さん、もうアンタは秋にさしかかったサケだ。これから先、味は落ちていくしかない」

富井副部長的な人「大坪くん、失礼だぞ!謝罪したまえ!

大坪「しかし、サケは自分の味は落ちても卵を残す。つまりスジコ・イクラもあるんだよ!アンタは卵を残すこともなく、味だけ落ちていっていいのかい?」

遠藤「(クッと唇を噛み、こちらを睨みつける)

大坪「アンタは受精することなく川を上る秋鮭だ! ただ川を遡ってクマに食われるだけ。ヤバイと思うだけのプライドがあるし、現実を考えることから逃げてるだけだ!卵を残せない秋鮭はただの駄魚さ‥自分なりの小さな卵を育てることから始めてみてはどうだい?」

*秋鮭好きの方、秋鮭関係者の皆様すいません。

 

‥こっちは若干ながら解決策を提示してるように見えないこともない。具体的なことは全く言ってないけれど。まぁ、「答えを考えてから魚を探す」というより「旬の魚の習性から解答をむりやり引っ張ってくる」という感じだから仕方ない。というか、答えを2つ持ってく時点で親身になってないなぁ俺、という気もするが。

ともかく、遠藤さんの悩みはこの2品で解決するのか?


 

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