●もうなんだかわからない最終ラウンド
最後の店に行くに当たって、私が選んだテーマは「家着」だ。反則気味と言われるかもしれないが、このラウンドは落とせない。
ビジュアルショック
チョイスしたのはあたたかい綿入れのベスト。それはいいのだが、背中の柄の味わいが抜き差しならない感じなのだ。
ぱっと目に飛び込んでくるアップリケはラガーマンのサイだろうか。胸に「31」と書いてあるのが「サイ」とかけてあるのだろうと気づいて、なんだかがっくり来る。
さらには上の方に「I LIKE SPORTS」と刺繍されてあるのも見逃せない。見逃したいけど見逃せない。
楽しいことは楽しいんだけど、やっぱりそれだけではない。写真に撮られてるという意識がないときにたまたま撮られた写真には、どうしても陰が垣間見える。
奇をてらった感もある私に対して、斎藤さんはあくまで王道で対応。
再びお父様のダンス服をチョイスした斎藤さん。目が慣れてきたという言い方がふさわしいかどうかわからないが、もうこれは普通にかっこいいんじゃないかと思う。
シャツの白い部分に描かれた柄がなんともかわいい。そう見せかけておいて、タイの金具ではすっかりうなだれた人が。
こうしたディティールの部分で変化をつけてくる斎藤さん。強いとか弱いとかいう尺度が適切がどうかはもうわからないが、やはりかなりの強者だ。
「ようこそ貴族の森へ」と書かれているのが確認できるだろうか。別にそういう森に来たわけでなく、パフェの取材に来た店がそういう名前なのだ。
写真で見てもやっぱり私たちは貴族ではないと思うが、そういう店なのだから仕方がない。何かをあきらめて中に入る。
ここでのパフェはわたあめにくるまれたかなりの変化球。食べ始めた斎藤さんだが、明らかにペースが落ちている。
もちろん私もあんみつ注文して、のそのそと食べる。ゴールはすぐそこだ。もうどっちの方が変な服かなんて、そんな勝負はどうでもいい。
言葉少なにじんわりと食べ進み、なんとかお互いに完食。
戦いは終わり、店内に張られている気の利いた言葉たちを前に記念撮影。僕らは父親の服を着て一日過ごして、一体何を見出したと言うのだろうか。
答えは未だ見えないが、もしかするとここにある言葉たちがそのひとつの解なのかもしれない。
●父のことはほとんど忘れて
店でパフェを食べながら談笑。さまざまに話に花が咲いた楽しいひとときだった。
そしてふと、店を出ようと席を立つ。今まで座っていて忘れていた、自分のいでたちに気がつく。なんだこの服は?そうだ、今日は父の服を着ていたんだ。
店の窓に薄く映る、斎藤さんと私。
取材に同行してくれた斎藤さんの奥様も私の妻も、私たち二人の全身像を改めて見て笑顔。笑うことはお肌にもいいと聞いたことがあるので、それでいいと思います。