まずは目印となる星を探します
暗闇の中、空を見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。多少雲はあるものの風も強いので動きが速い。これなら南十字だって見えるんじゃないか。気体が膨らむ。
南十字を探す目印はその上に位置するカラス座という星座らしい。さっそく宮本さんがカラス座を発見した。
「南十字の上の星だけかすかに見えますね。」
暗闇から宮本さんの声がする。僕にもなんとかカラス座は確認することができた。だけどその下へ視線を移してみても南十字らしき星は見当たらない。なんとなく水平線あたりに雲がかかっているようにも見える。宮本さんには見えているのか。とりあえず写真を撮ってみよう。
いよいよ撮影にはいります
宮本さんの指差す方向へカメラを固定する。僕にはどこに水平線があるのかすら見つけられなかった。なによりとにかく寒いんだ。
周りがまったく見えないので水平を出すためにデジカメに水準器を付ける。絞りは開放、ピントは無限、シャッターはとりあえず30秒。このあたりのデータは宮本さんの経験にまかせた。三脚に据え付けていてもシャッターを押すショックでぶれるのでセルフタイマーでシャッターを切るとよいらしい。
条件を変えて何枚か撮影し、その中で一番写りの良かった写真がこれ。デジカメのモニタでは写っているのかどうかすらよくわからなかったのだけど、パソコンで見ると南十字の上の3つはちゃんと写っていた。カメラって肉眼で見えないものでも写るのだ。すごく基本的なところで感動した。
あとで調べてみると、沖縄でも南十字が見られるのはかなり条件が整ったときだけらしい。この日はそんな貴重なチャンスのうちの一日だったわけだ。
天体撮影、はまります
「あそこに見えるのがおおいぬ座、あっちがさそり座です。あ、りゅうこつ座だ。」
宮本さんには満天の星がすべて絵に見えるのかもしれない。そういうのってちょっとうらやましい。せっかくなので別の星も写してみた。
セルフタイマーをセットしシャッターが閉じるのをじっと待つ。地味だけどどきどきする30秒だ。
北斗七星は僕にも見つけられた。それにしても面白いぞ、天体撮影。今度は寒くない時期に再挑戦したいです。
「でも夏だと変態と間違えられますよ。」
ああ確かに。夜中に三脚とカメラ担いで歩き回るんだもんな。宮本さんも以前警備員さんに止められたこととかあるらしい。気をつけよう。
見えました
本当に沖縄では南十字星が見えた。肉眼では見えたのか見えていないのかわからないくらいにほのかな光だったけど、カメラにはちゃんと写っていた。沖縄で南十字が見られるということは、すでに知られている事実なのかもしれないけれど、実際に体験してみるとかなり感動するものだ。冬の沖縄は海にも入れないし行きたくねえや、なんて言わずにここでしかみられない星を見上げてみてはいかがでしょう。