いよいよ見に行こう
星座盤によるとこの日、南十字が南中するのは夜中の2時。その時間に南の水平線が見える場所から観測しなくてはならないわけだ。その時間にその場所が果たして晴れていて、水平線に浮かぶ南十字が見えるのだろうか。まったく確証のないまま夜の12時過ぎに集合した。
これから宮本さんの車で南へ向けてひた走るのだ。せっかくなので車内で天体写真に関するマニアックな話を取材しようと思っていたのだけど、真っ暗でメモすら取れなかった。覚えている範囲内で。
そうこうしている間に現場に到着したようだ。したようだ、なんてあいまいな表現なのはここがどこだかわからないから。とにかく真っ暗だ。そしてひどく寒い。
「ここからちょっと海に向かって歩きますよ。」
すたすた歩く宮本さんからはぐれないように必死で付いていく。ここではぐれたらたぶん生きては帰れないだろう。たまにカメラのフラッシュを光らせながら宮本さんの居場所を確認する。
ここはどこだ
すごい強い風が海のにおいを連れて吹き付けているのを感じた。海の近くの公園かどこかなのだろう。
「この辺でどうでしょう。」
どうもこうも僕にはさっぱりわからないです。暗闇の中立ち尽くす僕を尻目にさくさくと観測の準備が整っていく。