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特集


フェティッシュの火曜日
 
駅舎と串カツとひょうたんと〜養老

ひょうたんの聖地で

ひょうたんっていいよね。突然そう言わせてもらおう。あの形。楽しいじゃないか。民話にだってたくさんひょうたんが出てくる。酒を入れたり、妖怪を閉じ込めたり、ことわざにだってなっている。それだけ古くから人々に親しまれてきた、ってことだ。

養老駅のことを知ってからというもの、ひょうたんにも想いを寄せ始めていた。いろいろなひょうたんにお会いしたい。できれば撫でさせていただきたい。そして1個引き取って、大事にしてやるのだ。酒でも入れて歩いてみようか。いや、それはちょっと。でも腰からぶら下げるのはありかもな。


老舗、安田ひょうたん店。このたたずまいにひかれて、こちらにお邪魔することに決定。
お店側面にもゆかいなあいつが。
お邪魔しまーす。うわー!当然だがひょうたんだけでこの写真は成り立っている。

ごめんくださーい、と、出ていらしたのはご主人。さいわい、雨模様の日でお客さんも少なく、長くお話を聞くことができた。

本当にやさしい話しぶりの、笑顔が印象的なご主人。

まずはいろいろなひょうたんを見ていこう。

15,000円します、変わりひょうたん。ひもでしばりながら栽培するとこうなるらしい。
こちらは長いの。5万円、というのもあった。
これもひょうたんだ。めでたいことこの上ない。
これが植物の実ひとつだなんて信じられない。

ひょうたん工芸は、できるだけ熟した実を水につけて、中身を腐らせたあと棒で取り去り、乾燥させてから手を加えるのだ。底辺は広く、各地にひょうたんを「趣味」にする人がいて会を作っていたりする。知らなかった。趣味の世界は奥が深い。

ご趣味は?と聞かれて「ひょうたんが趣味です」。え?と聞き返してしまうかもしれないが許して欲しい。でもたぶんその人はいい人だ。

安田さんも言っていた。「ひょうたんはな、昔から裕福な人たちの趣味だったんです。ほら、ひょうたんの形も、ゆとりある感じやろ。心に余裕が生まれるんですわ」と、面白そうに笑う。

するとちょうどそこへ、お客さんが一人やってきた。中年くらいのおじさん。
お客「あのな、ひょうたんの、まだ青いの扱ってるかな」
主人「うちはな、熟したのを仕入れてるからなー。」
乙幡「あの、ひょうたんがご趣味なんですか?あ、取材で来てるものなんですが」
お客「なんややめてえなー。いや、あの種をかき出すのが面白くてね。でも自分で栽培しようとしてもなかなかうまくいかん」
主人「栽培はなー、まだ青い実の種やとうまくいかなあもんでの。ちょっとまってや、その辺の実にまだ種がはいっとったな・・・」


主人、店の奥から実を持ってきて、中をかき出す。
こんなに種が取れた。

主人「それをそのまま撒けばええよ」
お客「どうもすんませんね」
乙幡「今日はどこから来たんです?」
お客「名古屋からね。この辺はひょうたんのメッカでしょうが、そんでまあ、この辺来ればなんかある思ってね。で車で通りかかったらひょうたんの看板があったからさ。来てよかったわ」

驚いた。本当にひょうたんを趣味にしている人と会えた。しかも何が面白いかって、「種をかき出すのが」ときたもんだ。

「ああ、人の耳かきが楽しいのと同じですかね!」と言ったら、まあまあ同意してもらえた。たぶんそれ私もはまると思う。


座布団まで敷いてもらってなごんでいる。何か話しているようだ。「今日、これからどうする?」
おちょこ付きのものを買う。4千円なり。おまけで小さいひょうたんもいただく。

私が「買う」と言ったら、奥でいろいろいいものを選んでくださった。

「お酒入れたいならもっと中をきれいにせんとな」と奥の作業場へ。

ひょうたんの「ひょう」が「票」に通じる、というので、政治家が高いのを買っていったりするそうで、その政治家はカド番だったにも関わらず当選してしまった。ちゃんとお礼にも訪れたそうだ。

またあるときは、お孫さんのために、いい子が産まれるように買って行った老夫婦がいて、後日そのお孫さんが産まれた子と一緒にお礼に来たそうだ。「びっくりするほどかわいらしい、玉のような赤ちゃん」だったとのこと。

というか、後日わざわざお礼に来る、というところからして、いい心がけの人たちだと思う。「あんたもこれ持って、なでて、がんばってくださいな」とご主人。ありがとうございます。何かしらお礼を言いに来れる様になでてがんばります。


「お酒を入れたい」と言ったら、「もともと自然のもんだから、水を入れると表面に模様ができる」とのことだった(右の写真は、水を入れておいたら黒くスジが浮き出てきたもの)。酒だとちょっと表面がべとつくらしい。

さすが、心に余裕を持つ人だからこその容器だ。その辺は泰然と受け流さねばならないだろう。

安田ひょうたん店
〒503-1253
岐阜県養老郡養老町柏尾723-1(養老公園口)
TEL:0584-32-2310

 

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