地面を見ながら歩く
まずは、先日見かけた辺りを重点的に探すことにした。詳しい場所を覚えていないのは、えーと、酔っ払っていたせいです。
誰かに「何してるんですか?」と聞かれたら「ちょっと落とし物を…」と答えよう。あ、でも「じゃあ一緒に探しますよ」なんてことになったら大変だ。正直に「ホウキ草を探してます」と答えるべきか。
…なんて、あれこれ考えながらブラブラ歩き始めて約10分。ついにそれらしい物を見つけた。
ネットで、ホウキ草(植物名:コキア)について調べた後なので、形状は把握済み。…うん。これだこれだ! これに間違いない !
「あった!」と言って喜びを分かち合える相手もいないので、ひとり心の中でとガッツポーズを取りながら、持参した紙袋に折った枝をバサバサと入れていく。
だが、とんぶりを作れるほど実が残ってくれるか心配になるほど、枝を折るたびにバラバラ、紙袋に入れる時にもバラバラと、乾燥しきった実が落ちてしまう。
なるべく枝に震動を与えないように、そっと扱うのだが、それでも実が落ちまくる。うーん。これはたくさん見つけて数を稼ぐしかないな、と、さらに土手を探索し続けた。
途中、土手に腰掛けて持参したビールを飲みながら少年野球を見たり、夕暮れに染まっていく水面をボーッと見たり。休憩挟みつつ、地味にホウキ草を探す。
ホウキ草は、群生して一カ所に生えているわけではなかった。なぜか一株ずつ、離れた場所にポツンと生えている。しかも成長具合はマチマチで、やたら枯れたのもあれば、若いのもあった。
ところで、商品化されている「とんぶり」って、どうやって栽培しているんだろう。勝手に実が落ちても構わないように、下にシートでも敷いているのだろうか。
「そういや秋田に住んでたけど、とんぶり畑なんて見たことないな。どこにあったんだろ」と考えながら、ホウキ草を見つけては採取、を数回繰り返す。
さあ、集められるだけのホウキ草は集めた。「これがとんぶりに…、あのプチプチに…」と思うだけで、自然に顔がニヤけてくる。ここに「これが畑のキャビアに…」というフレーズを加えると、ニヤけ具合も最高潮だ。なんだかんだ言って、このキャッチコピーを考えた人は天才かもしれない。
さっそく帰って、実の選別をしてから、茹での作業に取りかかろう。