世田谷線に乗って訪ねる
「世田谷宝石研究所」という名前に惹かれてアポイントをとった。鑑定士・藤岡さんは事前にデイリーポータルを熟読してくださり、どういう写真が望ましいかを考え、「最適な写真を、撮っておきました。」というではないか。なんと協力的な方だろうか。
世田谷線に乗り継ぎ行ってみると、閑静な住宅街の一角に研究所はあった。普通のお宅の2階の1室を仕事場にしている。ところ狭しと、専門書や工具が並んでいる。
「宝石の写真はですね、こうやって撮るといいんです」おもむろに専用顕微鏡のライトをつけ、「油ねんど」のパックをまわりに置いて、額縁から取ってきたという無反射ガラスを上に載せ、白黒のグラデーションをプリントした紙を下に敷き・・・「?」
「こうやると、宝石がきれいに写るんです」
なるほど、宝石の土台に透明感が生まれ、石が映える。しかしこのお方、そうとう凝り性とお見受けした。
「私はずっと、骨董をあつかってたんですよ、20数年も。で、55歳のとき、もともと興味のあった宝石にも手を広げようと奮起して、GIAのGG(米国宝石学会の鑑別・鑑定士)の資格をとりました」
いろいろそれまでに講習を受けたということもあるが、普通2年かかるところ7ヶ月で終了したそうだ。やる気があれば年齢は関係ない、というお手本の人が今、私の目の前にいるのだ。
ちなみに、「鑑定」は宝石のグレードを決めること、「鑑別」は本物・ニセモノを見分けることである。
「では、さっそく鑑定・鑑別の仕方、見せてください。」私はもうわくわくで、鼻の穴広がりっぱなしだ。
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