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特集 12月のテーマ:夜

12月のテーマ:夜
甘酒ショック療法



15:00 浅草

頭が痛い。胃が痛い。胸がいっぱい。涙目。
そんな状態で、はしゃぐ外人観光客を横目に、浅草で降りた。
目的地は「初音茶屋」。ひさご通りにある、有名な甘味店だ。

中に入ると、私の他にはお客さんが1人しかいなかった。
やはり水ではなくお茶が出た。粉茶に近い、濃い味のお茶だった。甘味に合わせているんだろうか。

甘酒350円を頼んでボーッと待っていると、もう一人のお客さんが、女性店員に話しかけているのが聞こえてきた。

「もうねえ、ダンナに『おまえ、どこ行くんだ? また甘いものか?』 って言われちゃったわあ。でもほっておいて、お店まかせて出てきちゃった」

どうやら近所の商店の奥様らしい。

「ほんっと、この店は全部のメニュー、美味しいわあ。他にこんな店、ないもの。
こないだねえ、甘味が好きな人と話してたんだけど、京都の甘味屋さんまわって、がっかりしたんですって。
どこも焼いたモチを使ってないんだそうよ。代わりに白玉とか入ってるのよ。手間から考えたら、白玉のほうがラクですものね。
私がこないだ銀座の甘味屋に行ったときも、そこも白玉だったわあ。ほんと、この店を見習って欲しいわあ」

褒めちぎっている。
私も好きなメニューを頼みたかった。あんみつとかぜんざいとか食べたら、さぞや美味しい店なんだろう。ああ………。

ほどなく甘酒が運ばれてきた。

………うわあ。
もう匂いをかいだだけでクラっとした。

思いきって口に含む。

ごく。

………しょっぱい。最初はそう思った。塩味がすこし効いている。
この店で作っているのかは分からないが、酒粕ではなく、米から作った味がした。でも米粒の口の中でのツブツブ感は少ない。
甘く、しょっぱく、複雑な味。これは好きな人が飲めば美味しい甘酒なんだろうな、と思った。

しかし、臨界点を突破している私には、もう美味しくてもマズくても同じだった。
頭では「美味しいんだろうな」と理解しても、身体が受け付けない。
なにしろ、普段は年にコップ3分の1しか飲まない人間が、1日にコップ3杯飲もうというのだ。今日だけで9年分の甘酒だ。

こんな飲み方はきっと「真面目な甘味屋さんの美味しい甘酒」に対して失礼極まりないんだろうな、と反省しながら、お茶をチェイサーに、少しずつ飲み込んだ。
せめて残すのはやめよう、と思った。

ぐぐぐぐぐ。
途中で汗がふき出し、指先が震えてきた。

それでも、なんとか完食。
逃げるようにお金を払って店を出た。

そのあと、浅草寺でおみくじをひいたら大吉が出た。神様は私を見てるに違いない。



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