「かれーの店うどん」。かつて、これほどまでにアナーキーな店名があっただろうか。「カレーうどんの店うどん」。これならちょっとは許そうという気になる。「カレーうどんの店カレー」。ギリギリだ。これだってギリギリなのに、「カレーの店うどん」はないだろう。これが許されるならば、もう世の中なんだってありだ。「居酒屋コーヒー」。「リサイクルショップ新品」。「ゴルフショップテニス」。「犬にゃー」。もう何がなんだかわからない。カレー屋か。うどん屋か。それともカレーうどん専門店か。腕いっぱいにクエスチョンマークを抱え、僕はうどんへカレーを食べに行くことにした。
(松井 謙介)
と、その前に予習だ。実はこのお店、ホームページがある。まず導入の文章を紹介しよう。「うどんでは、誰でも食べ易いとろっとタイプのカレーと、辛口ですが、さっぱりすーぷタイプの2種類がありす」。こうくるのだ。読めば読むほどわからない。しかも語尾が完全に不思議の国だ。やはり行ってみなくては始まらない。
山手通りのわき道に、うどんはあった。看板にはでかい文字で「かれーの店うどん」。入ってみると、13人座ればいっぱいになるカウンターのみのお店。刺激的なスパイスのにおいが鼻をなでる。いまのところ、うどん粉や麺棒はみあたらない。おそらくここは、カレーの店だ(←最初からそう言ってる)。
メニューを見ると、ポーク、ビーフ、チキンなど、カレー道をまっすぐに行くカレーが並ぶ。きつねもてんぷらもない。さらに言えば、淡い期待を抱いていた「カレーうどん」も、ない。注文したのは、かなり辛いが、するっと食べられるスープカレー(にんにくぽーく)。これが実に旨い。カレーにとろとろの半熟たまごが入っており、これが辛さを和らげてくれる。とことん本格的である。食後に何万回と聴かれたであろう質問をマスターにぶつけてみた。「うどん屋と間違える客……いましたか?」「ええ何度も。驚いて帰る人もいれば、諦めてカレーを食べるお客様もいました」。
ここは、カレーの店だ。うどんの店ではない。味の良さはもちろん、メニューもかなり豊富で、ずっと通いたくなるお店だ。名前以外、相当の本格派。是非みなさんも近くにお立ち寄りの際は、足を運んでみて欲しい。では本稿のシメに、またHPからマスターの言葉を引用させていただこう。「季節の夜のカレー」の解説の1文だ。「これにハマればもう、うどん通!!」。
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