いつも食べている鳥から揚げの微妙な違いに、みんな気付いているだろうか。
常々気になっていたので、ネットレシピ約200件を分析して、竜田揚げからフライドチキンまで、全ての流派に挑戦してきた。 いま僕は、地上で最もから揚げのレシピに詳しい男だ。
(加藤まさゆき)
衣の種類も色々ある
例えばこれ。 この二つのから揚げの違いがわかるだろうか?
同じから揚げでも衣の質感がかなり違う。 左は食べるとふわっとするタイプのから揚げ、右はカリッとするタイプのから揚げだ 材料は、左は片栗粉+小麦粉+卵。右は片栗粉のみ。どっちもネットレシピに「から揚げ」として載っている。
僕はつねづね、このから揚げのタイプの違いが気になっていたのだが、深くは追わずにスルーしてきた。しかし先日、適当に揚げた唐揚げで大失敗した僕はとうとう奮い立ったのだ。 男に生まれたからには、全ての流派のから揚げを制覇してやろう、と。 野望達成の手始めに、僕は揚げ鍋とてんぷら温度計を購入した。
戦いを制するためには、敵の情報収集が重要だという。 まずはレシピの勢力分析から手をつけてみた。
クックパッド192品を調査
巨大レシピサイト「クックパッド」に登録されていた「鳥のから揚げ」の、おすすめレシピ全192品をデータベースにして分析した。
そしたら、その結果が想定外にバラバラだった。 片栗粉だけのもの、小麦粉を使うもの、卵と混ぜるもの……。とにかくレシピの多様性がありすぎる。 僕の中で揺れる、から揚げのアイデンティティー。 「いったい、から揚げって何なの?」という、思春期の自問のような感情が渦を巻く。
そこで衣の材料として使う小麦粉・卵・片栗粉の分布を、わかりやすく勢力図表してみた。 これを少しずつ制覇していこう。
1・最大勢力「竜田流」
まずはこの最大勢力。 普通のから揚げ104品のうち、48品は片栗粉だけを使った衣だった。左の赤で塗った部分だ。 そして世間ではこれを「竜田揚げ」と言うらしい。 長年ぼんやりと竜田揚げの定義って何だろうなーと、思ってきたが、その疑問が氷解した。 「竜田揚げ」=「衣が片栗粉のから揚げ」だ。
まずはこれが基本、と気を引き締めて、竜田流から揚げ作成に挑戦した。
あ!これは、見たことのあるから揚げだ。 衣にうっすらと白く残るあと、荒々しく逆立った表面。給食で食べた「くじらの竜田揚げ」で見た覚えがある。 (ぎりぎりで給食くじら世代です)
食感は「カリカリッ」としていて、あせって食べると口の中が傷付きそうになる、あの感じ。 居酒屋などで出てくるから揚げでもよく出てくるタイプだ。 オッケー、竜田流は制覇した。以下に特徴をまとめよう。
1.竜田流 評価★★★ ・表面がばりばりで、うっすら白いときもある。 ・食感はカリカリ。急いで食べると口内を傷付ける。
2・第二勢力「弁当流」
次に勢力が大きかったのは、小麦粉と片栗粉を半々に使ったから揚げだ。 なぜか「お弁当におすすめ」のレシピには、この衣が多かったので、弁当流と呼ぶことにした。 弁当向けに、下味もにんにくの使用を控え、しょうがのみ。
さあ、どんなから揚げになるだろう。
これも見たことがある! 近所のスーパーのお総菜コーナーで売っているのにそっくりだ。 食べると衣の食感は「さくっ」。竜田流より軽い感じ。 さく、さくさく、と食感が嬉しくて、ついつい食べ進んでしまう感じだ。これはご飯に合う。
翌日、さっそくお弁当に竜田流と両方入れてみたが、弁当流の方が衣の質感をよく保っており、たしかにおいしかった。 これはこれで竜田揚げとは違う、一つの大切な存在だ。
2.弁当流 評価★★★★ ・衣の質感に荒々しさがない。もこもこ。 ・それでいて食感はさくさく。スナックっぽい。 ・下味はしょうがだけでも充分。