近所の駄菓子屋にローセキが売っていたので思わず購入した。
これで思いっきり道路や塀にラクガキしてやろう! …と思ったのだが。
(斎藤 充博)
ローセキとはなにか
ローセキとは、鉱物でできた筆記具のことだ。
コンクリートやアスファルトなどに白い文字を書くことができる。書いた文字は、手でこすったり、水を流せば簡単に消えてしまう。この特性から、一昔前の小学生たちは、ローセキで地面に落書きをして遊んでいたらしい。「らしい」というのは、僕も、今まで昭和初期を舞台にしたフィクション(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の少年時代回想シーンなど)でしか、ローセキを見たことがなかったからだ。
そんなローセキが、ウチの近所の駄菓子屋で売っていたので思わず買ってしまった。 よし、今回は、昔なつかしのローセキでその辺中に落書きしまくる記事にしよう!…と思ったのだが。
そう、子どもがアスファルトにラクガキしているのならまだかわいげがあるものの、大人がローセキを使用して公共物にラクガキするさまを記事として公開する、というのはちょっと良くない気がする(たとえ、簡単に消えると言っても)。
でも、せっかく買ってきたローセキは使ってみたい。どうしよう。
どうしたもんんか3ヶ月くらい悩んだ
大人としてのスジ
公共物である「道路」にラクガキするのは大人として良くないことだ。それならば、「道路にラクガキしている気分」だけ味わって、実際には「道路にラクガキしていない」という状況を作り出せば良い。
いちいちローセキでラクガキするのにも、大人はスジを通した上で行わなくてはいけない。それが大人というものだ(でも大人はふつうローセキでラクガキしないわけで、なんだかこんがらがってきました)。
ホームセンターでセメントが4キロ800円くらいで売っていた。これを枠に流し込んで固めたら、道路に見立てられるんじゃないのだろうか。そしたらそこはラクガキし放題だ。
あ、あとどうでもいいんですが、このセメントのパッケージイラストがなんか面白かったのでアップにしておきます。
縁側の素晴らしさよ
ということでさっそく作業に入ろうと思う。僕のうちは独り暮らし用のぼろアパートだけれども縁側が付いているのが自慢だ。
小春日和の昼下がりに縁側でDIY。これは僕が考える「優雅」のイメージにかなり近い。しかし現実の僕はバイト暮らしの学生なわけで、貧乏と優雅はかなり近いところに存在することがわかる。
この左官屋みたいな作業がまたなんとも楽しい。 最終目的はラクガキすることなんだが、もう「あったかい日にセメントこねるといい気分になる」って主題でもこの際良いや、という気がする。そういえば、旅行なんか行くときも、高速道路のサービスエリアの休憩が大好きだ。ああ、海老名SAで食べる串焼きのうまいことといったら…。楽しいときに楽しいことを思い出して、まったくもって一石二鳥というほかない。天井知らずにいい気分になってゆく。
さて、このセメント「速乾性」「30分で固まる」とのなのだが、警戒しなくてはいけないことがある。こんな天気のいい日になるとやってくる、あいつだ。
猫にも注意する
セメントの養生の際に注意しなくてはいけないことは何か。温度?水分?
いいや、猫だ。この辺にはノラ猫が多く、僕が縁側で作業していると必ずといっていいほど猫がやってくる。猫に足跡を付けられないように用心しなければならない。
写真から攻防が伝わるだろうか
案の定、猫がでてきた。今後の関係を考えると、無下にも追い払えないが、隙を見せるわけにもいかない。冷戦時代のアメリカとロシアみたいだ。
そんなことを言いつつも、現実はお互いひなたぼっこである。ところで、縁側の下りあたりから、のどか過ぎて自分が何をやっているのだかだんだんわからなくなってきた。確認しておくと、今やっていることは全部ローセキでの落書きのためだ。
さて、次のページではコンクリがもう乾いていますよ。