一度やってみたい。
例えば事務所に肖像画の監視穴を作ったらどうだろう? 出かけたように見せかけて、監視穴越しにスタッフの様子を観察するのだ。
考えただけで、相当感じが悪い。そんな会社は嫌だ。それに、僕がいなくなった途端、みんなが悪口を言い出したら大変である。出るに出られず、みんなが帰るまで監視穴の裏でじっと息を潜めるしかない。みんなが帰った後、一人淋しく涙を流すことになるだろう。そんなの嫌だ。やっぱり監視穴なんてなくていいのだ。
やめるか?
でも、「怖いもの見たさ」という言葉もある。
怖いけど見てみたい。人の心はややこしいのだ。
それに、悪口を言われると決まった訳でもない。逆に絶賛されてるって事も考えられる。
やるか?
いや、絶賛はあり得ない。
やめるか?
やるか?
と、悩んでいるうちにあっという間に原稿の締め切りが迫ってしまった。
他にネタは浮かばない。
やるしかないようだ。
(text by 住 正徳) |