東京都葛飾区にあるお寺、南蔵院。約六百年という歴史がある古刹だが、地元では寺の名前そのものよりも、どちらかというと「しばられ地蔵」として親しまれているようだ。
しばられ地蔵。古い謂れだけでそう呼ばれているのではなく、実際に縛られているお地蔵様であるらしい。
縄で縛ると願いを聞いて下さるというしばられ地蔵。そんなお地蔵様なのだが、年末の法要ではその縄を解く供養が行われるとのこと。それは見てみたい。
そういうわけで、年末から年始にかけてのしばられ具合をウォッチしてみました。
(小野法師丸)
まず、「しばられ地蔵」という言葉の響きにぐっと来る。みんなに親しまれているはずのお地蔵さまなのに、しばられちゃうなんて…。地蔵と緊縛のミスマッチの妙だ。
大晦日の法要では縄が解かれるという。ならばまずしばられた状態を見ておきたいではないか。
2006年12月30日、そういうわけでしばられ地蔵にやってきた。立派な門の脇に立てられた碑には「縛られ地蔵尊」の文字が。「縛られ」という漢字表記もまたいい。
奥に進むとお地蔵さまがいるようなのだが、まず目についたのは門をくぐったところにあった販売所だ。
絵馬が売られていたのだが、そこにも大々的にしばられ地蔵さまが描かれている。おお、その名に違わぬしばられっぷり。なかなかハードではないか。
おだやかな表情とのコントラストも味わい深い。さらには別の地蔵グッズもあった。
地蔵をフィーチャーした金太郎飴も売られていた。切っても切っても地蔵。
パッケージの絵ではそれほどたくさん縛られていないお地蔵さまなのだが、実物の金太郎飴を見てみると、絵馬よりもさらに縛られている。ボディを覆い尽くす縄。実物はどうなのだろうか、本堂の方に進んでみる。
本堂の脇に建てられた小さなお堂。他にそれらしきものはないのだが、どうも地蔵の姿が見えない。
おかしいなと思いつつ、さらに近づいてみる。
…やっぱりこれがお地蔵様らしい。思っていたより大変なことになっている。さっき見た金太郎飴のお地蔵さまはまだ顔が見えていたが、これは何も見えない。
江戸時代、かの大岡越前守が盗賊を捕らえるため、機転を利かせて身代わりにして縛ったというこのお地蔵さま。結果、盗賊を見事につかまえたという話が由来であるらしい。
ありがたさはわかる。ありがた過ぎて、すごいことになってしまっている。
地蔵本体が見えないのだが、上にある表示でそれが地蔵であることを確かめる。
一本百円で縛ることのできる縄を巻いてきたのだが、その迫力に圧倒されて、何も願をかけることなくなんとなく巻いてしまった。なんか願えよ、自分。
そんなしばられ地蔵、この日の翌日である大晦日には縄が解かれる。中にちゃんとお地蔵さまが詰まっているのかどうか、自分の目で確かめたい。