特集 2018年10月8日

大真面目にカレーラーメンを考える会

鬼頭哲の『二郎インスパイヤ系カレー風味牛骨ラーメン』

ミュージシャンでバリトンサックスを奏でる鬼頭哲さんは、ほぼ毎日自分で麺から作ったラーメンを食べている筋金入りだ。

「いわゆる二郎インスパイヤ系のカレーラーメン。ただし牛骨。おそらくみなさん本格的にスパイスを使って『インド料理の調理法』で来るんじゃないかなーと思ったので、『ラーメン屋の調理法』です。味噌ラーメンのタレって驚くほどカレーのルーの作り方と似てるんですよ。カレー風味のラーメンという事で唐辛子系不使用にしました。大の辛党なんですけどね」
味噌ラーメンの作り方をベースにしたという鬼頭さん。
味噌ラーメンの作り方をベースにしたという鬼頭さん。
1:牛骨と牛スジは一晩水に浸け血抜きをした後、下茹でして流水で綺麗に洗う。寸胴にひたひたになる量の水を入れ、にんにく1個、しょうが半分と、アクをとりながら6~8時間炊き、いったん火を止めて大量に浮いた牛脂とスジ片をすくい取る(後ほど使用)。

2: 熱湯でサッと洗った鶏モミジを加え、さらに炊く。 水位が下がっていたら都度水を足し、2時間ほど炊いたら、ネギの青い部分、大根、にんじん、じゃがいも等適当に加えて、煮詰めてスープは完成。
できるだけインド料理から離れようと、あえての牛骨スープで勝負。
できるだけインド料理から離れようと、あえての牛骨スープで勝負。
3:タレはフライパンに少量の油をひき、みじん切りにしたタマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニク、すりおろしたショウガを炒める。しんなりしたらミキサーにかけペースト状にして再びフライパンでスパイス(ターメリック、コリアンダー、クミン、クローブ、ナツメグ、シナモン、カルダモン)と調味料(味噌、甜麺醤、醤油、オイスターソース、塩)を加えて炒める。水気が足りない場合はスープを少量加える。タッパーに移して粗熱が取れたら、冷蔵庫で一晩以上寝かす。
一見すると味噌ラーメンのタレだが、様々なスパイスによってカレー風味になっている。
一見すると味噌ラーメンのタレだが、様々なスパイスによってカレー風味になっている。
4:丼にタレ、牛脂、刻みニンニクを入れてスープを注ぎ、茹でた麺を入れる。サッと茹でたもやし・キャベツと刻みにんにくをトッピングして、頂上にスジ片をかけて完成。
麺は低加水で極太のそれっぽいやつをたっぷりと。
麺は低加水で極太のそれっぽいやつをたっぷりと。
仕上げに客席でスープからとっておいたスジ片をマシマシするエンタテイナーらしいプレイ。
仕上げに客席でスープからとっておいたスジ片をマシマシするエンタテイナーらしいプレイ。
こうして大迫力のカレーラーメンが、また新たに誕生した。

見た目は二郎っぽいのにスープは牛骨。そして味付けはカレー風味で無化調という、脳が混乱する一杯だ。
「インド料理から離れたいという思いで、牛骨をベースにというところからレシピを考えたのですが、不慣れな食材ゆえこれが後々苦労のタネに。美味しいんだけどなんだかな~っていう試食を繰り返しました。カレーラーメンは手ごわいですね」と鬼頭さん。
「インド料理から離れたいという思いで、牛骨をベースにというところからレシピを考えたのですが、不慣れな食材ゆえこれが後々苦労のタネに。美味しいんだけどなんだかな~っていう試食を繰り返しました。カレーラーメンは手ごわいですね」と鬼頭さん。
「見た目はコッテリだけど、食べるとアッサリしている」「スープまで飲み干したい」「早くラーメン屋になればいいのに」と参加者の声。
「見た目はコッテリだけど、食べるとアッサリしている」「スープまで飲み干したい」「早くラーメン屋になればいいのに」と参加者の声。

山田英雄の『こくカレーまぜそば』

IT系企業にお勤めの山田英雄さんは、古い鋳物製家庭用麺機のメンテナンスを得意としており、『鋳物テクノロジー(IT)の山田技研』と呼ばれている存在だ。

「コンセプトは自分が家で食べたいカレーラーメン。家庭の味です。昨日のカレーの残りでラーメンを食べてみたいという願望を具現化すべく、行きついた答えはスープ無しのまぜそばでした。カレールーのコクと麺そのもの淡泊の味とのコントラストを目指します!」
お店の味ではなく、家庭の味でエントリーした山田さん。
お店の味ではなく、家庭の味でエントリーした山田さん。
市販のルーを使った誰よりもシンプルなレシピ。事前の仕込み無しは彼だけである。
市販のルーを使った誰よりもシンプルなレシピ。事前の仕込み無しは彼だけである。
1:フライパンにサラダ油を入れ、乾燥ニンニク、たっぷりの豚バラ肉を炒める。
「カレーの美味しさは豚バラの脂ですよ。肉がいっぱい入っていたら嬉しいじゃないですか。僕の育った家庭は8人兄弟で食の競争が激しかったんです」と、持ってきた肉を全部入れた。
「カレーの美味しさは豚バラの脂ですよ。肉がいっぱい入っていたら嬉しいじゃないですか。僕の育った家庭は8人兄弟で食の競争が激しかったんです」と、持ってきた肉を全部入れた。
2:みじん切りのピーマンとタマネギを加える。

3:鶏ガラスープの素と刻んだカレールーを入れて混ぜ溶かし、火を止める。
「高級食材を入れましょう!」と、ドサドサッと鶏がらスープの素を投入。
「高級食材を入れましょう!」と、ドサドサッと鶏がらスープの素を投入。
4:茹でた麺(中太ストレート)を入れ、ざっと混ぜる。あえてダマを残すのがポイント。

5:器に盛り、カイワレを乗せる。
「うちの母親は、よく余ったカレールーでチャーハンとか作ってくれたんですね。おいしさのこだわりはダマ。ダマがないと満足できないんですよ」と、昔を懐かしみながら麺とルーをざっくり和える。
「うちの母親は、よく余ったカレールーでチャーハンとか作ってくれたんですね。おいしさのこだわりはダマ。ダマがないと満足できないんですよ」と、昔を懐かしみながら麺とルーをざっくり和える。
粘度の高いルーでくっつきまくった麺をみて、「カレーラーメンの東京タワーや!」と心の中の彦摩呂が叫んだ。
粘度の高いルーでくっつきまくった麺をみて、「カレーラーメンの東京タワーや!」と心の中の彦摩呂が叫んだ。
昭和の時代にお父さんが張り切って作ったみたいなカレーラーメンこそ、我々が山田さんに期待した一皿だ。オカズになるラーメン、これでこそ山田さん。

市販カレールーの美味しさと豚の脂に頼りきりだが、これが腹が立つほどにうまい。山田さん的にはまぜそばだが、これはドライカレーラーメンと言えるかもしれない。
「カレーのルーって偉大!」「白いご飯を大盛りでください」「加齢臭じゃなくてカレー臭がすごい」「もうこれが優勝でいいよ」と参加者の声。これがでてきた瞬間、なぜか会場が運動部の合宿所みたいな雰囲気になった。
「カレーのルーって偉大!」「白いご飯を大盛りでください」「加齢臭じゃなくてカレー臭がすごい」「もうこれが優勝でいいよ」と参加者の声。これがでてきた瞬間、なぜか会場が運動部の合宿所みたいな雰囲気になった。
「味が濃すぎるところはカイワレと食べて。ダマがあるところは当たりですから。味のムラがいいんです!」と、どこまでもダマにこだわった山田さんでした。
「味が濃すぎるところはカイワレと食べて。ダマがあるところは当たりですから。味のムラがいいんです!」と、どこまでもダマにこだわった山田さんでした。

沼尻匡彦さんの『スパイシーレッドカレーまぜ麺』

山田さんの家庭的なカレーラーメンで雰囲気が緩みきったところで、店主の沼尻さんが再登板。先程とはまた違った味で我々を楽しませてくれるようだ。

「カーラムっていうミールスの一品を麺にアレンジしてみようか。うちではこれが一番辛いメニュー!」
「空前絶後の第一回カレーラーメンの集いを開催できたことを会場店主として誇りに思います。何十年か後に、あれが日本カレーラーメン界のターニングポイントとなったと言われることでしょう」と沼尻さん。そんなバナナ。
「空前絶後の第一回カレーラーメンの集いを開催できたことを会場店主として誇りに思います。何十年か後に、あれが日本カレーラーメン界のターニングポイントとなったと言われることでしょう」と沼尻さん。そんなバナナ。

1:フライパンに油を引き、マスタードシード、ホール赤唐辛子、粒胡椒、青唐辛子、クミンシード、エシャロット、乾燥ココナッツ、ココナッツミルク(缶)、ビーツの順に炒める。

2: ヨーグルト、塩を加えて火を通し、ミキサーに掛けたら、スパイシーグレイビーの完成。

3:スパイシーグレイビーを鍋に入れて火にかけ、沸騰したら角切りのトマトを加えて、沸騰直前に火を止める。
ビーツとトマトによって赤いスープ。味がまったく想像できない。
ビーツとトマトによって赤いスープ。味がまったく想像できない。
4:サラダ油で、粒マスタード、ホール唐辛子、フェヌグリークシード、カレーリーフをテンパリングする。

5:茹でた麺(柔かめの細麺)を3と絡めて、ギーで炒めたカシューナッツ、細切りのシシトウをトッピングして、4を掛ける。
客席で油をかけて仕上げるエンタテインメントがこの日は流行った。
客席で油をかけて仕上げるエンタテインメントがこの日は流行った。
できあがった料理を見ても、作り方の手順を教えてもらっても、味が全く想像できない真っ赤な一杯に会場がどよめく。

「見ての通り、逃げ場のない辛さだぞ。うそうそ、そんなに辛くない」とのこと。どっち?
混ぜるとナポリタンのようになる真っ赤なラーメン。これも確かにカレーラーメンの範疇なんですよ。
混ぜるとナポリタンのようになる真っ赤なラーメン。これも確かにカレーラーメンの範疇なんですよ。
「この香りがもうご馳走」「やばい、お店で出してほしい」「お腹にズンとくる辛さ。でもそれがいい」と参加者の声。
「この香りがもうご馳走」「やばい、お店で出してほしい」「お腹にズンとくる辛さ。でもそれがいい」と参加者の声。
おそらく二度と食べられない味なので、食べる側も真剣だ。
おそらく二度と食べられない味なので、食べる側も真剣だ。

マダラさんの『濃厚潮汁のカレーラーメン』

最後に登場するのは、みんな大好きマダラさん。これまでに二郎や家系、天下一品などの家庭料理版を教えてくれた自作ラーメンマニアであり、某カレー大会でさらっと優勝をかっさらった男でもある。

「釣り好きで魚料理が自慢の居酒屋で出す隠れメニューです。ラーメンと他の汁麺との差は何か? それは油を浮かべるかどうかの違いでないかと考えました。ベースのスープは極力シンプルにし、まずは濃厚な潮汁の汁そばとして食べて、途中からカレーオイルによるラーメンへの変化を味わってください」
もうカレーラーメンのバリエーションが出尽くしたのではというタイミングで登場。
もうカレーラーメンのバリエーションが出尽くしたのではというタイミングで登場。
1:軽く水洗いした新鮮な魚のアラを、水からグラグラ煮立たせ、白濁するまで煮詰める。今日はカツオをベースにイシダイを追加。吸い物より濃いめに塩で味付けをして、数滴だけ醤油を垂らして風味付けしてをしたらスープは完成。
スープのベースは釣ってきた新鮮なカツオのアラ。鰹節の原料になるくらいなので、ものすごく良い出汁が出る。
スープのベースは釣ってきた新鮮なカツオのアラ。鰹節の原料になるくらいなので、ものすごく良い出汁が出る。
カツオの出汁に参加者が持ち込んだイシダイのアラが加わって、より濃厚な味にレベルアップ。
カツオの出汁に参加者が持ち込んだイシダイのアラが加わって、より濃厚な味にレベルアップ。
2:ラードを入れた鍋を中火に掛け、みじん切りのタマネギを茶色くなるまで炒めるように揚げる。

3:ヨーグルト、すりおろしトマト、チリペッパーを入れたら、5分ほどかき混ぜながら、弱火で水分を飛ばすようにする。

4:最後にカレー粉を入れて一混ぜしたら、カレーオイルの完成。

5:麺を少し硬めに茹でたら、スープの入った丼に泳がせる。トッピングはカイワレ。別皿にカレーオイルを添える。
「日本人にとって標準的な味であるS&Bのカレー粉で作ったカレーオイルを掛けることで、これはカレーでありラーメンだと認識させます」とマダラさん。
「日本人にとって標準的な味であるS&Bのカレー粉で作ったカレーオイルを掛けることで、これはカレーでありラーメンだと認識させます」とマダラさん。
「まずはそのまま、新鮮な魚のアラでとった濃厚な潮汁を麺と食べていただき、途中でカレーオイルをかけることで、カレーラーメンに味を変えていただきます」とマダラさん。

こういう裏メニューを出してくれる大将がいる居酒屋に通いたい。近くにないかな。
素材本来の味わいから、カレーラーメンとしての美味しさへの華麗なる変化する一杯。
素材本来の味わいから、カレーラーメンとしての美味しさへの華麗なる変化する一杯。
「魚の臭みが無くて、潮汁の時点でもう十分うまい」「カレーオイルを一垂らしするだけでラーメンになる」「これはシーフードカレーラーメンだ!」と参加者の声。
「魚の臭みが無くて、潮汁の時点でもう十分うまい」「カレーオイルを一垂らしするだけでラーメンになる」「これはシーフードカレーラーメンだ!」と参加者の声。
本日9種類目となるカレーラーメンも一瞬で完売した。
本日9種類目となるカレーラーメンも一瞬で完売した。
このように想像以上の盛り上がりをみせて、カレーラーメンを考える会は幕を閉じたのだった。これぞカレーラーメンのフルコース。カレー、そしてラーメンの奥深さを知る会でもあった。

これが正しいカレーラーメンだ!という一杯なんて存在する必要はないんだと強く理解できたのが最大の収穫だ。どれも違って美味しかった。自由って素晴らしい。

今回は味の審査をしなかったことが平和的で良かったなと思いつつ、味勝負好きの参加者が実は多いので、次は優勝者を決めたいような気もする。またやろう。

自分が納得するカレーラーメンを作ってみたい、そしてみんなの作るカレーラーメンが食べてみたい。軽い気持ちで始めた企画だったが、参加者の熱量によってやたらと長い記事となってしまった。

カレー味のラーメン、あるいは麺で食べるカレーという制約があるからこそ、カレーラーメンのレシピ作りは楽しく、そして個性的になったのだと思う。
考える会で学んだことを生かそうと、まだカレーラーメンを作り続けていたりするんだな。
考える会で学んだことを生かそうと、まだカレーラーメンを作り続けていたりするんだな。
すみません、ちょっと告知させてください。今回の調理メンバー達と一緒に『作ろう!10分ラーメン』という同人誌を作りました。伝説の10分ラーメン選手権(この記事)から追加されたレシピや豪華執筆陣による麺漫画など、もりだくさんの内容なのでぜひどうぞ。
何卒よろしくお願いいたします。
何卒よろしくお願いいたします。
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