特集 2018年10月8日

大真面目にカレーラーメンを考える会

キンマサタカの『飲めるカレーラーメン』

自分の分を出してしまえば、あとはもう食べるだけなので気楽なものである。2番目のエントリーは編集者のキンマサタカさん。

「カレーは飲み物なので、具材を全てミキサーにかけました。意識の低いカレー屋がつくったラーメン。どっちもやりたくて中途半端になってしまったけれど、意外と奇跡的にうまかったっていうね。もう一度言いますが、カレーは飲み物!ラーメンを食べるときに、スープを残す健康意識の高い人に喝!」
ガッツポーズの達人であり(こちら)、以前私と一緒にカレーラーメンを作ってくれたカレーマニアだ。
ガッツポーズの達人であり(こちら)、以前私と一緒にカレーラーメンを作ってくれたカレーマニアだ。
1:玉ねぎ、人参、セロリをみじん切りにして、ミキサーで滑らかにする。

2:油にスパイス類を入れて炒め、1を加えて飴色になるまで3時間じっくり炒める。ちなみにこの日は3時間かかった。

3:合い挽き肉を入れる。もらってきた牛脂を入れるとコクが出る。

4:追加のスパイス、トマトジュースを入れ、塩で味を整える。これでカレーの完成。このままご飯にかけても美味しい。

5:お湯に粉末鶏がらスープを溶かし、4を伸ばす。水溶き片栗粉でとろみをつけたら、茹でた麺に掛ける。

6:仕上げに砕いたピーナッツと、刻んだ青唐辛子をトッピングする。
カレーは飲み物なので、固形の具は存在しない。
カレーは飲み物なので、固形の具は存在しない。
その横では試食担当としてやってきた友人が、釣ってきたイシダイを捌き始めた。
その横では試食担当としてやってきた友人が、釣ってきたイシダイを捌き始めた。
こうしてできあがったカレーラーメンがこちら。スープが濃すぎて麺がまったく見えないが、中太のストレート麺が沈んでいる。

ちなみに麺は事前に料理担当者から好みを聞いておいて、私が用意した自家製麺だ。
カレーにはナッツ類を砕いていれるべきだそうです。
カレーにはナッツ類を砕いていれるべきだそうです。
「これは新型のキーマカレーラーメンだ」「このスープは絶対に残せない」「ちょっとご飯を入れさせて!」と参加者の声。
「これは新型のキーマカレーラーメンだ」「このスープは絶対に残せない」「ちょっとご飯を入れさせて!」と参加者の声。
まさにキンさんのプレゼン通りの力強いカレーラーメンである。

麻婆ライスにも似た食べごたえがあり、カレーラーメンにはこの濃厚な味とボリューム感を求めている人も多いだろう。
「ちょっと辛めで本格的ですが、意識は高くないから手を抜くところは抜く。でも俺は好きだよっていう味」と熱く語るキンさん。この会はプレゼンを楽しむ場でもあるのだ。
「ちょっと辛めで本格的ですが、意識は高くないから手を抜くところは抜く。でも俺は好きだよっていう味」と熱く語るキンさん。この会はプレゼンを楽しむ場でもあるのだ。

辻村哲也の『見た目はラーメン、食べたらカレー』

続いてはプロダクトデザイナーの辻村哲也さん。居酒屋やバーで一日店長イベントをやったりもする料理好きであり、エスニック料理やスパイスに関する造詣も深い。

「コンセプトは『カレーを構成する要素を分解してラーメンのパーツとして再構築する』、つまり『見た目はラーメン、食べたらカレー』です。カレーらしさを構成する要素を、ラーメンのパーツに配置しました。アプローチはまったく違うけれど、結果として玉置さんのラーメンと被ったので発表のタイミングを遅らせました」
『見た目はラーメン、食べたらカレー』の意味は、食べることで理解できるのだろうか。
『見た目はラーメン、食べたらカレー』の意味は、食べることで理解できるのだろうか。
みんな人の作るカレーラーメンが気になるため、厨房の人口密度が高い。
みんな人の作るカレーラーメンが気になるため、厨房の人口密度が高い。
1:まずスープ。鍋に下処理をした鶏ガラ、ドライトマト、玉ねぎのざく切り、ニンニク、赤唐辛子、ひたひたの水を入れて、沸いたらアクを取り、沸騰直前の温度(95度)で蓋をせず2時間加熱。フライパンに油、玉ねぎのみじん切りを入れて焼き付けるように炒め、ニンニク、生姜のみじん切りを加えて炒め、コリアンダーパウダーを入れて一混ぜし鍋に加える。ベイリーフ、生トマトのざく切りも加え、沸騰したらアクを取り、蓋をして香りを閉じ込め、さらに1時間ほど95度で加熱し、そっとザル漉しし、塩で調整したらスープの完成。

2:焼豚は、豚肩ロース塊に重量の1%の塩、スパイス類(クローブ、シナモン、カルダモン、黒胡椒、ベイリーフ)を空煎りして粉砕したもの、おろしニンニク、生姜をまぶしてラップし1日冷蔵。120度のオーブンで2時間(焦げそうなら上下を返す)、100度に下げさらに2時間加熱。
チャーシューの焼き方が私と似てるのは、私が辻村さんから教わったから。
チャーシューの焼き方が私と似てるのは、私が辻村さんから教わったから。
3:メンマはアチャール(インドの漬け物)に。塩蔵メンマは水を替えながら洗い、水から30分ほど柔らかく茹でる。フライパンに油、フェヌグリーク、マスタードシードを入れて中火にかけ、フェヌグリークが色づきマスタードシードが弾けるまで混ぜながら加熱する。水を切ったメンマ、おろしニンニクを入れて炒め合わせ、カイエンペッパー、ターメリック、コリアンダーパウダー、塩を加える。ラーメンなのでレモン汁ではなく黒酢を加え、ひと混ぜして火を止める。

4:スパイス煮玉子は、水にシナモン、八角、砂糖、塩、ティムール(ネパール山椒で花椒でも可)、ターメリック、コリアンダーパウダー、赤唐辛子を入れて煮立て、柔らかめに茹でた玉子を入れて、2日間冷蔵保存する。

5:香味油は、多めの油にみじん切りのタマネギを入れて中火で香ばしく焼き付け、ニンニク、生姜、青唐辛子のみじん切り、クミンシードを入れて香りを出す。のはずが、本番では焦がしてしまい、時間も(すでに麺は茹で上がっていた)控えの材料もなかったため、クミンと油だけの香味油となった。
慣れないキッチンで香味油を焦がしてしまったが、そこからのリカバリーが早かった。
慣れないキッチンで香味油を焦がしてしまったが、そこからのリカバリーが早かった。
6:手鍋で温めて塩で味を調整したスープをどんぶりに張る。茹でた麺(細めの低加水ストレート)を入れてほぐし、焼き豚、煮玉子、メンマ、薬味を乗せ、香味油を多めにかける。
麺茹では後半に登場するマダラさんが担当した。盛り方がプロっぽいぜ。
麺茹では後半に登場するマダラさんが担当した。盛り方がプロっぽいぜ。
こうして具の一つ一つにまでこだわり抜いた一杯が完成した。

本人のプレゼンにあったように、カレーの要素がさりげなくラーメンの中に配置されているため、食べ始めは確かにラーメンなのだが、食べ進めるとカレーを食べているような気になるというアハ体験が味わえる。

できれば試食ではなく一杯まるごと食べて、ラーメンの印象からカレーの現実に切り替わる不思議なストーリーをじっくりと味わいたかった。
「後味が完全にカレー!」「具もスープも完璧で隙のない一杯」「肉が余っていたらつまみに出してもらっていいですか」と参加者の声。
「後味が完全にカレー!」「具もスープも完璧で隙のない一杯」「肉が余っていたらつまみに出してもらっていいですか」と参加者の声。
「テンパリングでテンパって焦がしました!」と辻村さん。レシピを攻め過ぎてちょっと意味がわからなくなって、今朝までどうしようかなと迷い直していたそうだ。
「テンパリングでテンパって焦がしました!」と辻村さん。レシピを攻め過ぎてちょっと意味がわからなくなって、今朝までどうしようかなと迷い直していたそうだ。

沼尻匡彦さんの『ホワイトチキンカレー』

ケララの風IIの店主である沼尻さんの一品目は、意外な見た目のカレーラーメンだった。沼尻さんは今回便宜上カレーという言葉を使っているが、本来はカレーという料理はインドに存在しないというスタンスの方である。

「いわゆるカレーというよりは、南インドで食べられているミールス(野菜たっぷりの庶民的な定食)の変化球。 皆さんみたいなカレー味とは一番遠いかもしれない。南インドのケララ州を代表する料理、ケララシチューに麺を入れました。他の州の人に説明するときは白いチキンカレーって呼んでいます。唐辛子も胡椒も、クミンもコリアンダーも入っていない、スパイスゼロのカレー」
「ミールスを麺料理にしたらどうなるんだろうという実験。カレーというかミールスラーメンだね」と沼尻さん。
「ミールスを麺料理にしたらどうなるんだろうという実験。カレーというかミールスラーメンだね」と沼尻さん。
1:ココナッツミルク(缶)、カットした鶏肉、じゃがいも、ニンジン、インゲンをお好みの塩加減で水と煮る。

2:茹でた麺(柔かめの細麺)をスープに入れ、フライドガーリックスライス、フライドショウガ、味付け鶏肉ハム、エシャロットをトッピングして、無理矢理ラーメンにする。

3:サラダオイルで、マスタードシード、赤唐辛子、生のカレーリーフをテンパリングして、2に掛ける。
※テンパリングとは熱した油を介在してスパイスやハーブの香りを料理に移す調理技法。
提供の直前にテンパリングして油に刺激的な香りを移す。カレーリーフは火を止めてから加えるのがコツ。
提供の直前にテンパリングして油に刺激的な香りを移す。カレーリーフは火を止めてから加えるのがコツ。
こうしてできあがったカレーラーメンは、私が仮に100種類考えても出てこないタイプの一杯だった。

調味料は塩だけ。カレーの必須要素であるクミンもターメリックも入っていないのに、はっきりカレーと認識できる香り高い仕上がりだ。
見た目はホワイトシチューなのだが、テンパリングしたマスタードシードとカレーリーフがカレーの方向にグッとひっぱてくれている。
見た目はホワイトシチューなのだが、テンパリングしたマスタードシードとカレーリーフがカレーの方向にグッとひっぱてくれている。
「フレッシュなカレーリーフの香りがすごい」「普通のカレーとは全く違うけれど、確かにこれもカレーだ」「なんか、かっこいいっす!」と参加者の声。
「フレッシュなカレーリーフの香りがすごい」「普通のカレーとは全く違うけれど、確かにこれもカレーだ」「なんか、かっこいいっす!」と参加者の声。
プロによる見事な仕事に、今までとは違う緊張感が走った。沼尻さんの存在がこの会のスパイスとなっている。
プロによる見事な仕事に、今までとは違う緊張感が走った。沼尻さんの存在がこの会のスパイスとなっている。

小松ヌンチャクの『ベンガル風油そば』

沼尻さんのあとでやりにくそうに登場したのは、小松ヌンチャクさんである。しりあがり寿さんが主催するさるハゲロックフェスフェスティバルでフードコーナーを取り仕切るカレー好きだ。

「沼尻さんが南インドだから、かぶらないようにベンガル地方(インド北東部およびバングラディシュ)をセレクト。向こうのスパイスミックス『パンチフォロン』とマスタードオイルの組み合わせが好きで、油そばにして食べたらおいしいんじゃないかという発想で作りました」
この会の後、小松さんは中東方面へカレー研究のために旅立った。
この会の後、小松さんは中東方面へカレー研究のために旅立った。
1:サケ(可能ならナマズなどの淡水魚)の切り身を水で洗って大きめのサイコロ状に切り、生姜、ニンニク、スパイス(コリアンダー、クミン、ターメリック、チリパウダー)、マスタードオイル、塩を入れて混ぜ、冷蔵庫で1時間ほど置く。

2:魚のアラで出汁を取る。

3:マスタードシードを少量の水と一緒にミキサーにかけ、ペーストにする。

4:マスタードオイルを熱し、1のサケを揚げ焼きにする。特に皮はカリカリにすること。

5:マスタードオイルにパンチフォロン(クミン、フェネグリーク、マスタードシード、フェンネル、カロンジを同量ずつ混ぜたもの)を入れて熱する。マスタードシードが弾けてきたら、タマネギを入れて茶色になるまで炒める。
味の決め手となるマスタードオイル。菜種油ならぬカラシナの種の油だ。
味の決め手となるマスタードオイル。菜種油ならぬカラシナの種の油だ。
これがパンチフォロン。「ちなみに今回使っているスパイスのうち、マスタードシードは春先に多摩川で採集した野生のもの。これでもかというほどマスタード推しなメニューです」とのこと。
これがパンチフォロン。「ちなみに今回使っているスパイスのうち、マスタードシードは春先に多摩川で採集した野生のもの。これでもかというほどマスタード推しなメニューです」とのこと。
6:5のマスタードペーストとカットトマトとスパイス(マスタードシード、コリアンダー、クミン、ターメリック、チリパウダー)、生姜、ニンニク、塩を入れて混ぜ合わせ、表面に油が浮いてくるまで炒める。

7:6に2の出汁をを入れ、沸騰するまで煮る。4のサケをオイルごと入れ、10分ほど煮込む。味見をしながらレモン汁と塩、チリパウダーで味を整える。

8:麺(全粒粉入りの中太麺)を茹でる。並行してフライパンにマスタードオイルとパンチフォロンを入れ、マスタードシードが弾けるまで熱する。

9:麺が茹で上がったら水気を切り、塩と8のオイルを麺にかけて混ぜ合わせる。7のカレーソースと薬味をそれぞれの器に盛って完成。
今回はサケだが、本来はナマズを使うらしい。事前に言ってくれればナマズを捕まえて来たのに。
今回はサケだが、本来はナマズを使うらしい。事前に言ってくれればナマズを捕まえて来たのに。
マスタードオイルでパンチフォロンをテンパリングした油で麺を和える。
マスタードオイルでパンチフォロンをテンパリングした油で麺を和える。
「ごめん、薬味を切ってもらっていい?」「え、今から!」
「ごめん、薬味を切ってもらっていい?」「え、今から!」
麺とカレーを別皿で盛ることで、より南アジアのカレーに寄ったカレーラーメンとなった。オリジナルというよりは、現地で本当に食べていそうな料理である。

こちらで用意したざらつきのある全粒粉入りの麺がマスタードの香りと見事にマッチ。なんなら私のラーメンよりも。好みの薬味を混ぜ合わせながら食べすすめるのが楽しい一皿だ。
薬味はトマト、青唐辛子、パクチー(ダメな人用には紫蘇)、レモンを用意。
薬味はトマト、青唐辛子、パクチー(ダメな人用には紫蘇)、レモンを用意。
「レモンを絞ると味が一気に変わるね」「これ麺だけでもうまい」「パクチーが苦手な俺だけど別添えなので助かるよ」と参加者の声。
「レモンを絞ると味が一気に変わるね」「これ麺だけでもうまい」「パクチーが苦手な俺だけど別添えなので助かるよ」と参加者の声。
「提供直前になって青唐辛子を切り忘れたり、麺の仕上げに手が回らなかったりしたんですが、周りにいた皆さんに手伝ってもらって、チームワークで乗り切りました!」と小松さん。
「提供直前になって青唐辛子を切り忘れたり、麺の仕上げに手が回らなかったりしたんですが、周りにいた皆さんに手伝ってもらって、チームワークで乗り切りました!」と小松さん。
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