特集 2018年9月21日

横浜ベイブリッジ沖で遺骨を撒く海洋散骨式

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「散骨の際にベイブリッジの真下に遺灰をまいてくれるプランがあります。散骨は外洋や山奥でするものと思っていた。本当にベイブリッジ下での散骨は行われているの?)」という投稿が、はまっこ61号さんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

海洋散骨は港から1.85km以上離れた場所で可能で、「ベイブリッジの下」での散骨はできないが、ベイブリッジを望む場所で多く行われていることがわかった。

はまれぽ.com:大野 ルミコ
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

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突然ですが……みなさん、ご自身の「お墓」は用意していますか? 「先祖代々のお墓がある」という方もいらっしゃるかもしれないが「何も考えてない」「用意していない」という方も多いのではないだろうか。中には「ダンナと一緒のお墓に入るのはイヤ!」なんて……いや、やめておこう。

そんな中、今、新たな葬送スタイルとして人気を集めているのが「海洋散骨」。その名の通り、遺骨を細かくパウダー状にして、海へと還すというスタイル。近年、その利用者は急激に増えているともいわれている。
ベイブリッジを望む横浜での海洋散骨を希望する人は多い
ベイブリッジを望む横浜での海洋散骨を希望する人は多い
横浜といえば……やっぱり「海」。

人生の最後は大好きな横浜の海で眠りたい――と考えている方も少なくないだろう。
そこで、横浜で行われている「海洋散骨」の全容を調査してきた。少しでもみなさんの、ご家族の、将来や「終活」の参考となるようにと祈りながら……。

『海洋散骨』の現場へ

今回、実際に行われる海洋散骨への同乗取材をお受けくださったのは、横浜ベイブリッジ沖や相模湾を中心に、海洋散骨式の施行・運営を手掛ける海洋散骨プロデュース珊瑚礁さん。
出港地でもある「ぷかりさん橋」周辺は風もなく、波も穏やか。絶好の天気に恵まれた。
横浜沖での散骨に向かう船の多くが出港する「ぷかりさん橋」。
横浜沖での散骨に向かう船の多くが出港する「ぷかりさん橋」。
本日のセレモニーは遺族が乗船し、散骨式を行う「チャーター散骨」。故人の家族、3名が乗船してのアットホームな雰囲気の散骨式になるようだ。

海洋散骨にはそれ以外にも、遺骨を預かって遺族の代わりに散骨をする「委託散骨」や
複数の遺族が合同でチャーターした船で散骨式を行う「合同散骨」もあり、故人様の意思や、予算、遺族の事情(高齢で船に乗るのは大変など……)に合わせて選択することができるという。
いよいよセレモニーが行われる船へ
いよいよセレモニーが行われる船へ
参加人数や散骨プランによっても変わるが、基本的に海洋散骨プロデュース珊瑚礁さんがチャーターする船は、ご遺族の方もゆったりくつろげるクルーザータイプ。本日、乗船した船も、デッキも船室も広々ゆったり。

旅客船登録もしているので、一度に30名まで乗船できる大型クルーザーだ。
海洋散骨プロデュース珊瑚礁でチャーターしている船のひとつ
海洋散骨プロデュース珊瑚礁でチャーターしている船のひとつ
船室内にはソファーやテーブルも揃い、ゆっくりくつろぐことができる
船室内にはソファーやテーブルも揃い、ゆっくりくつろぐことができる
ところで、海洋散骨のプロデュースを手掛けることになったきっかけは……? 代表者である今井さんにお話を伺った。
海洋散骨プロデュース珊瑚礁(株式会社シー・ドリーム)の代表、今井健夫さん
海洋散骨プロデュース珊瑚礁(株式会社シー・ドリーム)の代表、今井健夫さん
「実は以前、私はマリーナの支配人をしていたのですが、その時、葬儀社から散骨のために船を出してほしいと依頼されることが多かったんです。でも、陸上の天気と海の天気は全く違いますし、天気が良くても波の荒い時もある。とても船なんて出港できる波の状態じゃないのに、確認もせずに『大丈夫ですよ』と、ご遺族に伝えてしまうような葬儀社も多くて……。海の怖さを知らない者が海洋散骨を手掛けるのは危険だと思うようになったんです」

「それに、私には葬儀業界で働いていた経験もある。その両方の経験を活かして自分で安全・安心な散骨プロデュース会社をつくろう――そう思うようになっていました」
海洋業界と葬儀業界、両方の知識・経験をお持ちの今井さん
海洋業界と葬儀業界、両方の知識・経験をお持ちの今井さん
こうした旅客船業界で学んだ確かな知識と、葬儀業界で培った細かな心遣いが評判を呼び、同社が手掛ける海洋散骨の件数は「右肩上がりの状態」(今井さん)だという。

「故人様が希望したからというケースもありますが、お墓を用意するよりも安価だから、とか、お墓を守る人がいないから、といった理由で海洋散骨を選ばれる方も多いようです。お墓不足や墓守後継者に悩む方はたくさんいらっしゃいますから、今後、さらに海洋散骨を検討される方は増えていくのではないでしょうか」

笑顔で「いってらっしゃい!」

ほどなくして、本日、海洋散骨を施行される遺族の方も合流。いよいよ散骨ポイントへ向け、船は動き出した。
みなとみらいの風景を背に、いざ! 出港!
みなとみらいの風景を背に、いざ! 出港!
本日の散骨ポイントは、ベイブリッジの下を通り、さらに本牧ふ頭を抜けた先。つまり、横浜の湾内を抜けたベイブリッジ沖の東京湾での散骨となる。

――あれ? 「ベイブリッジの下」での散骨ではないの?

実は海洋散骨は常識的な「節度ある方法」で行われる限り、法に触れることないのだとか。
しかし、だからといって、いつでもどこでも自由にできるものでもない。

海洋散骨を行う場合は、漁場、釣り場、船舶の航路を避け、陸地からもある程度(1海里、約1.85㎞以上)離れていることが条件になるとのだという。

こうした条件を合わせると、残念ながら「ベイブリッジの下」での散骨は不可能なのだ……。
もし「できますよ!」と提案してくる施行業者がいたら――思いっきりマナー違反だ。
「ベイブリッジの下」での散骨は、モラル上不可能だという
「ベイブリッジの下」での散骨は、モラル上不可能だという
散骨ポイントまでは、片道20分ほどの船旅。航行中の船内では、今井さんがこれから施行する「散骨式」について話してくれる。

「海には科学で解明できない不思議な力があります」と語る今井さん。そんな海へ遺骨を撒くのは、永遠の別れではなく、一人ひとりの心でいつでも故人と会えるのだと語る
だから遺骨を海に送る時は、“いってらっしゃい”と笑顔で気持ちよく送り出してください――という今井さんの言葉に、深くうなずく遺族の姿があった。
簡単な祭壇を設けてセレモニーの準備を整える
簡単な祭壇を設けてセレモニーの準備を整える
「笑顔でいってらっしゃい」と送ってほしいと語る
「笑顔でいってらっしゃい」と送ってほしいと語る
移動中、今井さんはできる限り遺族に声をかけ、会話をするように心がけているという。それは、会話を楽しむことによって「船酔いを防止する効果もあるから」なのだとか。

「船酔いになってしまうと、せっかくのセレモニーも『船酔いが辛かった』という思い出だけで終わってしまいます。それは避けたい。参加された方、皆さんの心に残るセレモニーにするためにも、船酔いにならないようにこまめにお声をかけているんですよ」
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それぞれの想いをのせて――散骨式

遺族との会話も進む中、船は散骨ポイントに到着。遺骨を海に還す時がやってきた。
遺骨と一緒に海へと捧げる、花やワインなどの準備も万端
遺骨と一緒に海へと捧げる、花やワインなどの準備も万端
遺骨はパウダー状に加工されているため、そのままの状態で散骨しようとすると風に吹かれて予期せぬ方向へ飛ばされてしまう可能性も……。

そのため、遺骨は遺族からの最後のメッセージがしたためられた水溶性の袋に小分けされ、そのまま海へと放たれる。
遺骨の入った袋を海へと放つ
遺骨の入った袋を海へと放つ
抱きかかえるように海へと送り出す遺族の姿に心を打たれる
抱きかかえるように海へと送り出す遺族の姿に心を打たれる
故人がお好きだったのだろうか。遺骨と共にワインも捧げられた
故人がお好きだったのだろうか。遺骨と共にワインも捧げられた
遺族全員で遺骨を放ったポイントに向け献花
遺族全員で遺骨を放ったポイントに向け献花
遺骨や花を海に放った後、船は散骨ポイントをぐるっと旋回し、故人との別れを告げる汽笛を鳴らす。

汽笛とともに祈りをささげる遺族の姿、散骨ポイントを知らせるように漂う花びら――遺族の哀しみ、寂しさが伝わってくるようで、心が締め付けられる。
最後の別れを惜しむように散骨ポイントの周りを旋回  
最後の別れを惜しむように散骨ポイントの周りを旋回  
花びらが散骨ポイントを包み込むように広がっていく
花びらが散骨ポイントを包み込むように広がっていく
天気にも恵まれ、波も比較的穏やかだったこともあり、捧げた花びらがいつまでも散骨ポイントを囲むように漂い、まるで遺族にその場所を教えてくれているよう。海の神秘と故人、遺族それぞれの想いが交錯する不思議な光景に、胸を締め付けられる。

海洋散骨ってすごく感動的――。筆者の胸にそんな気持ちが浮かんだ瞬間だ。

供養は一人ひとりの心の中で

散骨式を終えた船は、出港地でもある「ぷかりさん橋」への帰路を急ぐ。
速度を上げ、みなとみらいを目指す
速度を上げ、みなとみらいを目指す
帰りの船内では、今井さんは遺族との献杯を交えながら、今後の「ご供養」について語る。海洋散骨には「お墓」のように「ここに行けば(故人に)会える」という場所がないため、今後、どのように故人を弔ったらよいのかと悩む遺族もいらっしゃるのだという。
今後、故人に会いたくなった時はどうすればいいのだろう……
今後、故人に会いたくなった時はどうすればいいのだろう……
今井さんは「祈りの対象は海でもお墓でもありません」と話す。

「お墓や遺骨が目の前になくても、皆さんが日々、心の中で故人のことを思い出してあげることが本当の供養ではないでしょうか」
筆者も亡き家族や友人を思い出して、ちょっぴりセンチメンタルに
筆者も亡き家族や友人を思い出して、ちょっぴりセンチメンタルに
遺族の哀しみや笑顔を織り交ぜながら、船は無事に「ぷかりさん橋」に到着。

目の前に迫るインターコンチネンタルホテルを見ながら、今井さんは「あのホテルの上部には女神像があり、みなさんが今日、散骨をしていた場所を見守ってくださっています。それを信じてください」と、ご遺族に最後のメッセージを送っていた。

その言葉に、きっと遺族の方も「横浜を散骨の場所に選んでよかった」と思ったのではないだろうか。
上部の女神像が散骨ポイントをいつまでも見守っている
上部の女神像が散骨ポイントをいつまでも見守っている
出港から約1時間。とても心に残る、濃密な時間だったように感じられた。

珊瑚礁で海洋散骨をお願いする場合、今回のように遺族が同乗し、ベイブリッジ沖で自らの手で散骨を行う「チャーター散骨」で18万円(乗船10名まで)。そのほか、遺骨を預けて遺族の代わりに散骨する「委託散骨」の場合は5万円、複数の遺族が合同でチャーターした船で散骨を行う「合同散骨」が9万8千円と、プランも金額もさまざま(金額はすべて税抜き)。

委託散骨の場合も、どの地点に遺骨を撒いたか、その場所を記した証明書を必ず作成し、きちんと額に入れて後日遺族にお届けするという。――遺族の方からの感謝のお手紙が絶えないというのも納得の心遣いだ。
散骨後、ご遺族の姿が見えなくなるまで手を振り続ける今井さんの姿に感動
散骨後、ご遺族の姿が見えなくなるまで手を振り続ける今井さんの姿に感動
最後に、今井さんに(失礼とは思いつつ……)「失敗しない散骨委託会社の選び方」についてお話を伺った。

「まずは、問い合わせの際に、気になること、不安なことはどんな細かいことでも質問をぶつけてみること。その際に言いよどんだり、すぐに答えられず『確認します』などというような業者はちょっと……と思ったほうがいい。あとは、日本海洋散骨協会のホームページを利用したり、葬儀会社の方に紹介をしてもらったりするのも一つの方法かもしれません」
どんな質問にもイヤな顔一つせずお答えいただいた
どんな質問にもイヤな顔一つせずお答えいただいた
今井さん、本当にありがとうございました。

今、利用者の増加に伴って、散骨を請け負う会社は急激に増えている。

しかし、残念ながら、中にはちょっと危険な施行を行う業者があるとも言われている。「価格を抑えたい」「大勢で楽しく見送りたい」――遺族の想いはざまざまだと思うが、やはり、大切な人を送る、大切な時間。しっかり選択して心残りのないようにしたいものだ。

取材を終えて

実は筆者には子どもがいない。自分が死んだ後、お墓を守ってくれる人もいない。

そういった事情もあって、海洋散骨には以前から強い興味を持っていた。
しかし、どうやって業者を選ぶのか。どんなセレモニーになるのか。そして散骨を選択することによって、かえって遺族に迷惑がかかるのではないか――といった不安も感じていた。
そういった疑問や不安が、今回の取材で払拭されたように思う。

ただ……

「ここがいい!」と考えていたポイントが、思いっきりルール違反の場所のようなので(陸からの距離が近すぎ)、それだけは考え直さないと……。


―終わり―
 

取材協力
株式会社シー・ドリーム
海洋散骨プロデュース珊瑚礁
住所/神奈川県座間市南栗原6-31-71-4
電話/0120-44-3540

日本海洋散骨協会
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