特集 2018年9月13日

建設現場の角のディスプレイが進化している

さいきんこういう角を見ませんか
さいきんこういう角を見ませんか
建設現場の角が、透明のプラスチックで覆われてショーウィンドウみたいになっているのを見かける。

現場の人はなんでここをディスプレイにするのか、そしてどんな傾向があるのか。いろいろ見てみました。

建設現場の角にこういうのある

こういうのがあると教えてもらったのは去年、岡山市内を歩いていたときだ。
植物が飾ってある
植物が飾ってある
「ピクトさんの本」などの著書がある内海慶一さん(@pictist)と街を歩いていて、この角にさしかかった。そのとき「角がこういうふうになってるの最近見かけますよね」と教えてもらったのだ。

写真では分かりづらいけど、下のほうにはLEDが巻きつけてあり、夜はピカピカ光るものと想像された。凝ってる。
これも岡山で
これも岡山で
別のところにも植物があった。こんなふうにとりあえず緑を置く、というのはよくあるパターンのようだった。工事現場の仮囲い(かりがこい)が真っ白なので、緑で目を落ち着けてもらおうということだろうか。

他のもこういう感じなのかな、と思っていたある日、通勤途中にこんなのを見かけた。
角になにかある
角になにかある
ここもセオリーどおり、建設現場の角が透明のディスプレイになっている。ただし中がずいぶん凝っている。
花輪だ
花輪だ
オリンピックをイメージしているんだろうか。覗き込むとこんなのもいた。
カエルだ
カエルだ
大量のカエルがいた。表情も色も少しづつ変えてある。もちろんぜんぶ手作りだろう。凝ってる。

明らかに、ものすごいサービス精神で手間暇かけてこれを作ってる人がいる。すごいものを見ているという予感がした。5月のことだ。
6月末。建物ができてきた。
6月末。建物ができてきた。
そして一ヶ月後、ディスプレイががらりと変わった。
七夕飾りだ
七夕飾りだ
願いがかけられている
願いがかけられている
建設会社の人たちの願いだろう。「配属が田舎になりませんように」のようなものに混じって、きれいな字で「この現場の皆さんが竣工まで無事故で作業できますように」というものがあった。ちょっと泣きそう。
君はだれだ
君はだれだ
そして7月末。夏休みが始まった。
一面のひまわり!
一面のひまわり!
昆虫たちもいる!
昆虫たちもいる!
このカブトムシとクワガタムシ、ずいぶんリアルだ。ひまわりも昆虫も、そろえるのには間違いなくお金もかかるし、手間もかかる。どうしてここまでして人々の目を楽しませようとするんだろう?

そのとき、通りかかった女性会社員たちが「あの虫きもちわるくない?」と言っているのを聞いてしまった。そんな…。

まあそういう人もいるだろう。でもぼくは好きだよ!と、これを設置した人に勝手にエールを送った。

とにかく、工事現場の角がいま盛り上がってきている。そう感じた。
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なんで角をディスプレイにするのか?

ところで、なんで建設現場の角をこんなにもディスプレイするんだろうか。そのヒントは、ディスプレイのない現場にあった。
ディスプレイのない角
ディスプレイのない角
角に、赤い張り紙でなにか書いてある。
角で事故があるようだ
角で事故があるようだ
建設現場の角は、背の高い仮囲いがぎりぎりまで立っていて見通しが悪い。だから出会い頭で事故が起きやすいのだろう。それを張り紙で注意している。

ただ、張り紙よりも効果の高い方法がある。それは、そもそも角を透明にしてしまうことだ。
こういう感じ
こういう感じ
角が透明になった現場では、曲がろうとする先の道が少し見やすい。
向こうに自転車がいるの見えません?
向こうに自転車がいるの見えません?
実際に歩いてみると、透明部分のおかげで横がずいぶん見やすいのを感じる。対策としてはこれで十分だ。

ただしこの角、ずいぶん殺風景にみえる。白い囲いのままのときには何も感じなかったのに、なまじ透明になったせいでショーウィンドウっぽくなってしまったのだ。じゃあ何か置こうかな、と思うのは自然だろう。
とりあえず何か置いてみました
とりあえず何か置いてみました
とりあえず騒音計と振動計を置いてみたのがこちら。どのみち計測値を表示するのだから、透明になった角に置くのは合理的だ。

でもちょっと色が地味だ。白と灰色よりは、別の色で飾ってもいいんじゃないかな?
じゃあ緑でどうですか
じゃあ緑でどうですか
そして冒頭に戻った。まとめよう。
角、あぶない
角、あぶない
透明にしたら安全!
透明にしたら安全!
せっかくだから計器を置こう
せっかくだから計器を置こう
植物なんかいいんじゃない?
植物なんかいいんじゃない?
ここはショーウィンドウ!
ここはショーウィンドウ!
これが、ぼくが勝手に考える「建設現場の角の進化5段階説」だ。

じつをいうと、ある建設会社にここの経緯を尋ねてみたんだけど、いまのところ返事を頂けていない。そりゃそうだよね、忙しいのにすみません。

この場所をそもそもなんと呼んでいるのかも気になる。「角のディスプレイ」ととりあえず呼んでいるけれど、業界的な呼び名はなにかあるんだろうか。ご存知でしたら教えてください。
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いろんなディスプレイを見てみる

進化した角のディスプレイ。いまではいったいどんなことになっているのか、ばばばっと見てみよう。

ザ・無難なものたち

まずはいかにも無難なディスプレイから。
海と熱帯魚
海と熱帯魚
印刷された海に魚たちが泳いでいる。印刷というところに、他でも使ってそうな無難さを感じる。とがる必要はない。殺風景でなければいいのだ。
定番、花
定番、花
花は、こういうところに置かれがちな定番だ。遠目にはなんだか寂しく見えてしまうが、近づくとそうでもない。
ほら、きれい
ほら、きれい
足元には鹿がいる。ちゃんとストーリーを作っているっぽいところがいい。

その手があったか!なものたち

なるほどそう来たか、というタイプもかなり多い。
スケスケで向こうが見える
スケスケで向こうが見える
ディスプレイしない、という発想だ。そもそもスケスケにしてしまう。まだ工事らしい工事が始まってないから隠さなくてもいいのかもしれない。
掃除道具が置かれてる
掃除道具が置かれてる
道具置き場にすることで、箒やらモップやらがなんだかディスプレイのように見える。こういうパターンもあるのか。
なにもないように見える
なにもないように見える
一見するとなにもない角のように見える。どうでもいいが、何もない角をエンプティパターンと個人的に呼ぶようになっていたので、「ここもエンプティか…」と思った。しかし夜に来るとかっこいいのだ。
照明パターンだった!
照明パターンだった!
にくいね。足元にライトが置かれていたのだ。
ディスプレイしない、という選択
ディスプレイしない、という選択
これはすごかった。分かりますか。正面が塞がれてるんです。そして横に回るとこうなってる。
横は見えてる
横は見えてる
横は見えてるので、事故を防ぐ役割は果たせてる。これ、すごいアイデアだと思う。

角のディスプレイは、半ば偶発的にショーウィンドウっぽくなってしまった場所を、いかに殺風景でなくするかという、若干後ろ向きな展示だ。

だったら、そもそもショーウィンドウっぽくしなければいいのだ。正面を塞げばいい。なるほどねー。
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独自の路線をいくディスプレイたち

オリジナリティにあふれるディスプレイもある。編集部の石川さんが報告してくれたこれだ。
だれかいる!
だれかいる!
遠目に、すでになにかが怪しい。白バイ・・?
近づくと、なんだ写真かー!(右)
近づくと、なんだ写真かー!(右)
白バイに気をとられるが、お目当ては左の角ディスプレイである。こちらも何かようすがおかしい。
稲妻の手前に、捧げ物のような何か
稲妻の手前に、捧げ物のような何か
背景に稲妻の絵、手前は祭壇のようでもある。全体的に意味がつかめない。
君はだれだ?
君はだれだ?
奥には謎の人形。これは雷神様か。というか酒って書いてあるから、高木ブーなのか?

つづいても編集部の石川さんからの報告だ。
ずいぶん側面の視界に余裕を持たせた角だ
ずいぶん側面の視界に余裕を持たせた角だ
側面の透明部分の幅が広い。

角が斜めに大きく隅切りされているので、そもそも透明部分がなくてもそんなにあぶなくなさそうにも見える。自転車で移動する人が多いんだろうか。
「けんせつ小町」とある
「けんせつ小町」とある
けんせつ小町とは、建設業で働く女性の愛称とのこと。建設業界では女性が少ないので、応援しようということのようだ。このディスプレイも女性が設置したのかもしれない。
プランターだ
プランターだ
小さな双葉が広がっているプランターが置いてあった。ここで植物が育っていくようすを愛でようということだろうか。

いまはプランターしかないからちょっと殺風景だけど、これからが楽しみだ。いいディスプレイだなあと思う。

次に、これは「角」じゃないんだけど、とても優雅だったので紹介したい。
仮囲いの途中が明らかにショーウィンドウみたいになってる
仮囲いの途中が明らかにショーウィンドウみたいになってる
こんなふうに急に窓が開いてるのは珍しい。
中を覗くとこう。池! もはや庭!
中を覗くとこう。池! もはや庭!
前を通る人に一服の涼を与えようという気遣いだろうか。そこにあるのはもはや庭園だった。

角じゃないので、出会い頭の事故を避けるみたいな意味合いはない。純粋に池を鑑賞してほしいのだ。これもまたすごいなと思った。

ところで、さっきのプランターの場所を石川さんに教えてもらって現地に行ってきた。写真のときから2ヶ月ほど経っているはずなので、現在はどうなっているか気になったのだ。
育ってましたよ!
育ってましたよ!
確実に育ってる。まったく関係ないはずなのに、なんだか嬉しい。

まとめ

角のディスプレイは、ぼくの勝手な想像が正しければ、安全対策のために生まれ(てしまっ)たスペースに、せっかくだからなにか置こうという動機で生まれたものだ。

なので、展示の内容の幅が広い。無難なものも、手のこんだものも、カオスなものもある。タイプがいろいろあるので、次はどんなのかなと思うようになった。

建設工事は期間が長いので、その間に展示内容が変わることがあるというのも面白い。とくに、プランターの植物が成長していくようすを見せるっていうのはうまいアイデアだなあと思った。
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