特集 2018年3月19日

銭湯の煙突を見上げる

煙突のかたち

さて話は戻る。銭湯の煙突のディテールを見ると、個体ごとに多用な個性があることが分かってきた。どれもこれも同じ円筒形だと思ったら大間違いなのだ。
生野区の南生野温泉。銭湯の煙突の中ではオーソドックスな形状ではあるが、やはり他のどの煙突とも違った肌触り感がある
生野区の南生野温泉。銭湯の煙突の中ではオーソドックスな形状ではあるが、やはり他のどの煙突とも違った肌触り感がある
立てられた年代、施工業者、そして長年に渡る使い込みによって、煙突の個性は様々に分岐している。いろいろと見て回ったけれど、ひとつとして同じ煙突は見つけられなかった。銭湯の数だけ煙突がある、と言っていいだろう。
なかでも明確な違いがあったのは、阿倍野区にある黄金湯
なかでも明確な違いがあったのは、阿倍野区にある黄金湯
こちらは煙突の先端が先細っているのだ。文字が隠れてしまっていることから、後付けで被せられたものと推測する。ドレッシングの容器がちょうどこういう形なので、勝手にドレッシング型と名付けたい
こちらは煙突の先端が先細っているのだ。文字が隠れてしまっていることから、後付けで被せられたものと推測する。ドレッシングの容器がちょうどこういう形なので、勝手にドレッシング型と名付けたい
一方こちらは、此花区の八木温泉。今回巡ったなかでは唯一の角形だった
一方こちらは、此花区の八木温泉。今回巡ったなかでは唯一の角形だった
建物もそうだし、隣にある貯水タンクも角張っていて謎のこだわりを感じる。とにかく全体的にカッコよくて、しばらく見とれてしまった。そうなのだ、煙突は別に円筒形でなくても良いのだ
建物もそうだし、隣にある貯水タンクも角張っていて謎のこだわりを感じる。とにかく全体的にカッコよくて、しばらく見とれてしまった。そうなのだ、煙突は別に円筒形でなくても良いのだ
もし今の時代に、煙突付きの銭湯がどんどん建てられるような状況だったら……と想像してみる。きっと店ごとに趣向を凝らした煙突が建てられて、デザイナーズ煙突みたいなのも多数あらわれていたに違いない。そんな時代も見てみたかったなあ。

煙突に書かれる文字

煙突といえば、銭湯の名前がペイントされているイメージがある。まわりの建物よりも高い位置にあるので、煙突とはすなわち広告塔としての役割もあるのだ。
たとえば西成区にある日の出湯では、
たとえば西成区にある日の出湯では、
温泉マークと、その下には堂々とした銭湯名が。これぞ王道的な煙突である。赤サビも相まって、風情のかたまりみたいになっていた
温泉マークと、その下には堂々とした銭湯名が。これぞ王道的な煙突である。赤サビも相まって、風情のかたまりみたいになっていた
遠くからでも異様な存在感を放っていたのは、生野区にある極楽温泉
遠くからでも異様な存在感を放っていたのは、生野区にある極楽温泉
手書きの筆跡が感じられる「サウナ」の文字が踊っていた
手書きの筆跡が感じられる「サウナ」の文字が踊っていた
そういえば煙突めぐりを始めた当初は、このサウナみたいに「銭湯の名物」が煙突に書かれるのでは? という仮説を立てていた。しかしそんなことは全くなく……ここまでの煙突を見ても分かる通り、書いてあってもせいぜい「銭湯名」だけである。あるいは経年劣化で消えてしまっている煙突も多いのかもしれない。
名物については、表の看板に書かれている場合がほとんどだった。こればっかり集めて分析するのも、どう考えても面白そう。今度やろう
名物については、表の看板に書かれている場合がほとんどだった。こればっかり集めて分析するのも、どう考えても面白そう。今度やろう
一方で、煙突に直書きではなく看板で掲示してあるところもあった。城東区つぼ花温泉
一方で、煙突に直書きではなく看板で掲示してあるところもあった。城東区つぼ花温泉
一文字ずつ看板になっていた。煙突のまわりに支えの骨組みが付いているのも特徴的である
一文字ずつ看板になっていた。煙突のまわりに支えの骨組みが付いているのも特徴的である

お気に入りの煙突ベスト3

いろんな煙突を巡っていると、私のなかの「銭湯の煙突」像が実体を帯びてきた。煙突を観察し、煙突を知ることで、「これ、なんか良いな」という判断ができる基準が確立してきた感じだ。

その成果として、最後に私が見た中で「これは!」と思ったお気に入りの煙突ベスト3を紹介したい。
まず第三位は、旭区もみじ温泉。建物の裏手に回らないと見えない煙突が多い中で、ここは正面からしっかり見える良い位置にあるのが高ポイント
まず第三位は、旭区もみじ温泉。建物の裏手に回らないと見えない煙突が多い中で、ここは正面からしっかり見える良い位置にあるのが高ポイント
そしてこの端正なフォルムが素敵なのだ。煙突というより、どこか灯台を思わせる白さが美しい
そしてこの端正なフォルムが素敵なのだ。煙突というより、どこか灯台を思わせる白さが美しい
煙突ではないけれど、表の看板にも注目したい。「バスクリン」である。今も使われているのか気になるところだが、残念ながら訪問時に銭湯は閉まっていた
煙突ではないけれど、表の看板にも注目したい。「バスクリン」である。今も使われているのか気になるところだが、残念ながら訪問時に銭湯は閉まっていた

第二位 都市部の煙突

第二位は、天王寺区にある東上温泉。鶴橋駅にほど近いところにあって、ビルが林立する都市風景のなかに溶け込んでいる。今となっては煙突の高さが足りてない気もする
第二位は、天王寺区にある東上温泉。鶴橋駅にほど近いところにあって、ビルが林立する都市風景のなかに溶け込んでいる。今となっては煙突の高さが足りてない気もする
それでいて材木置き場があることからも分かるとおり、薪式である
それでいて材木置き場があることからも分かるとおり、薪式である
すぐ横にはJRの高架線。煙突と電車を同時に見上げることができる
すぐ横にはJRの高架線。煙突と電車を同時に見上げることができる
正面に回ると、銭湯然とした店構え。良い
正面に回ると、銭湯然とした店構え。良い

そして雰囲気のある第一位

私が一番グッときた煙突、それが生野区にある林寺温泉である。立派な門の向こうにチラッと覗く、背の高い煙突の頭
私が一番グッときた煙突、それが生野区にある林寺温泉である。立派な門の向こうにチラッと覗く、背の高い煙突の頭
これがまた、何とも言えない風合いなのだ。いくつもの激動の時代を乗り越えてきた、歴戦の煙突という感じがする
これがまた、何とも言えない風合いなのだ。いくつもの激動の時代を乗り越えてきた、歴戦の煙突という感じがする
周辺の町並みも相まって、煙突の渋さが際立っている。文句なしに一位に挙げたい
周辺の町並みも相まって、煙突の渋さが際立っている。文句なしに一位に挙げたい
銭湯の煙突めぐり、今回の報告は大阪市内にある21箇所の銭湯を見てまわった成果である。これからはただ「銭湯の煙突」として一括りにするのではなく、もう少し細分化して語ることができるだろう。

数が圧倒的に多い、東京都区内の銭湯の煙突もいずれ調査していきたい。

消えゆく煙突

ストリートビューでは煙突があったのに、実際に行ってみたら廃業して跡形もなくっていた……という事態に二度遭遇した。21件まわって、うち2件が更地だったのだ。たまたま選んだ場所が悪かったのかもしれないけど、どんどん煙突が消えているというのは間違いなさそうだ。
行った先でこんな様子を見るのは結構衝撃的だった
行った先でこんな様子を見るのは結構衝撃的だった
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