特集 2018年2月23日

石材に注目して国会議事堂を見学する

台座は温泉の成分が沈殿してできた石

中央広間である。
小学生に混じって見学しています
小学生に混じって見学しています
有名な話だが、議事堂の中央広間には、銅像の台座が4つある。しかし、銅像があるのは、板垣退助、伊藤博文、大隈重信の三体のみで、残りひとつの台座は空いている。

ひとつ空いている理由は「誰にするか話がまとまらなかった」とか「政治に完成はないということを表している」「これからもっと立派な政治家が現れるように」などと、あることないこといわれているが、なぜかはよくわかってない。
空席の台座
空席の台座
しかし、この台座の石が、富山産の『オニックス・マーブル』であることはわかっている。この石は台座だけでなく、玄関の壁にも使われている。
はっきりとした縞模様が美しい
はっきりとした縞模様が美しい
オニックス・マーブルは、生物の死骸が堆積してできた石灰岩とは成因が違っており、温泉の成分から石灰の成分が沈殿してできたものだ。
日本でも富山県の宇奈月でしか産出しない貴重な石で、西本さんの話によると、北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅の待合室にも使われているが、ここまで大々的に使っている建物は他にあまり見かけない。

幻の名石『青梅』

続いてやってきたのは、議員食堂。

この食堂は、見学コースではないのだが、窓際にある貴重な石を見せてもらうため、特別に入れてもらった。
国会議員、こんなところでめし食ってんのか
国会議員、こんなところでめし食ってんのか
窓際にあるヒーターの上が貴重な石材である
窓際にあるヒーターの上が貴重な石材である
ここにある貴重な石材とは、東京産の大理石『青梅』である。
きれいな石だ
きれいな石だ
西本さん「これは別名白倉石ともいわれる石ですね。東京の日の出町でとれた石で、砂や火山の噴出物がまざっている石灰岩です」

――同じひとつの石ですけど、場所によって色が違ってておもしろい模様ですね。窓からの光のあたり具合でまた色味がかわってみえたりして、曜変天目茶碗みたいですね。
白かったり赤かったり色だったりと、色の変化がせわしない
白かったり赤かったり色だったりと、色の変化がせわしない
西本さん「この石は、わたしも今日はじめて見ました。実に日本っぽい石灰石だと思います、割れ目(状の模様)がいっぱいあって。おそらく、国会議事堂で使うために切り出されただけで、建材として地元以外ではほとんど使われてないんじゃないかなあ」

――ということは、建物に使われている青梅石が確実にあるとわかっているのは、国会議事堂ぐらいということになりますね。

もう、聞き飽きた感もあるかもしれないが、これも貴重な石である。

都電の敷石?

見学もいよいよオーラスだ。最後は国会の前庭に案内してもらう。
この敷石、もしかしたら……
この敷石、もしかしたら……
西本さん「この石畳ですが……もしかしたら茨城県産の『稲田石』という石かもしれません」

――えーと、これは御影石ですよね。

西本さん「そうです。稲田石は、都電の軌道内の敷石に使われていた石なんです、都電が廃止されて大量に余った稲田石は、銀座の歩道の敷石なんかに転用されていますけれど、もしかしたら、この敷石もかつて都電で使われていた稲田石を再利用しているかもしれないですね」

――わー、これはロマンしかない。ぜひそうであって欲しい……。
稲田石だったらいい
稲田石だったらいい
西本さん「ちなみにリニューアルした東京駅の丸の内広場の一部の敷石が稲田石ですよ、これは笠間市がTwitterで「稲田石が使われた」ってつぶやいてたから確定ですよ」

Twitterのつぶやきで石の種類が確定される。30年前には思いもよらなかった21世紀である。

国会議事堂、本当はピンク色

改めて国会議事堂を眺めてみると、上と下で色合いが微妙に違っていることに気づく。
ちょっと見難いけれど、下と上で色が違う(中央塔の階段に見える屋根部分だけは、テラコッタ(陶製)です)
ちょっと見難いけれど、下と上で色が違う(中央塔の階段に見える屋根部分だけは、テラコッタ(陶製)です)
中庭を見てもらうと分かりやすいかもしれない。
上下で色が違う
上下で色が違う
西本さん「下の方、ちょっと灰色に見えるのは最初に見た『徳山石』ですね。で、上の白っぽい方は広島県産の『尾立石』です」

――もしかしてあの尖塔のさきっぽまで尾立石ということですかね。

西本さん「そうですね、尾立石は、国会議事堂の外装に使われたので別名「議院石」とも呼ばれるんです」

――石は別名が多いですね……。

西本さん「おもしろいのが、西日本は、徳山石、尾立石のような白っぽい御影石を墓石に使うことが多く、墓地が白っぽいんです。ところが関東の古い墓は、神奈川県真鶴産の小松石などのような黒っぽい安山岩を墓石に使っていることが多く、墓地が黒っぽい。私、広島出身なんですが、東京にはじめてきたとき、墓が黒くてびっくりしました」

いわれてみれば、たしかに東京の墓地は黒っぽい墓石が多いようなきがする……。あとで、自分の墓巡りの写真を見返してみると、東京でも古い墓石は黒っぽい墓石が確かに多い。
東京の墓。たしかに黒っぽい(写真の墓石は小松石ではないかもしれません)
東京の墓。たしかに黒っぽい(写真の墓石は小松石ではないかもしれません)

でも、よくみるとほんのりピンク色

――たしか、参観ロビーの展示物に雷にうたれて落ちた花崗岩のかたまりも尾立石と書いてありましたね。
雷の瞬間と崩れた尖塔のかけら
雷の瞬間と崩れた尖塔のかけら
実は、遠目でみると白っぽい尾立石だが、近くで見ると薄いピンク色をしており、別名「さくら御影」とも呼ばれている。御影石なので、徳山石などと成分は同じだが、粒がそろっていて長石が桃色に見えるのだ。
よく見ると、ピンク色
よく見ると、ピンク色
グーグルで国会議事堂のイラストを検索してみてみると、国会議事堂の色は黄土色かクリーム色などで表現されていることが多い。しかし、本当の色はピンク色である。
国会議事堂、本当はピンク色。色をばか正直にかいてみた。地方にあるふざけた名前の風俗店の看板っぽい
国会議事堂、本当はピンク色。色をばか正直にかいてみた。地方にあるふざけた名前の風俗店の看板っぽい

石材目線でみると新しい世界がひろがる

国会議事堂にかぎらず、地下鉄銀座線の駅や、老舗のデパートなど、石材に注目してみると、実にさまざまな石が使われていることがわかる。

ただ、大雑把にわけると、使われている石材は、ほとんどが御影石か大理石かのどちらかである場合がおおい。それだけでも覚えて「この石は御影石、大理石のどちらだろう?」と考えながら散歩すると、新しい目が備わった感覚が体験できる。

御影石、大理石の見分け方、おそらくみんな中学校の理科で習っているはずだ。うっかり忘れちゃってたひとは、いますぐ思い出して外に飛び出た方がいい。

おもしろいから。

■参考資料
『新版 議事堂の石』工藤晃・大森昌衛・牛来正夫・中井均(新日本出版社)
『街の中で見つかる「すごい石」』西本昌司(日本実業出版社)
『東京都日の出町産大理石石材「青梅石」』中澤努・上野勝美・乾睦子・鎌田光美
『徳島県産国会議事堂大理石の研究 -その 3.衆参両院における石材使用の比較-』石田啓祐・中尾賢一・香西武
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