特集 2018年2月23日

石材に注目して国会議事堂を見学する

貴重な石を次々と確認

本会議場を出て次の場所に向かっている途中、西本さんが急に座り込んだ。床と壁の間にある幅木の部分に使われている石が気になったらしい。
貴重な石ありましたか?
貴重な石ありましたか?
西本さん「この石は貴重ですよ……大理石ですね、徳島産かな……」
徳島県産石灰岩『答島』
徳島県産石灰岩『答島』
――産地がサクッとわかるのすごいですよね。

西本さん「産地が分かるといっても大雑把にですよ。石材の名前が分かると、産地も確定できるのですが……『答島』かな」

『新版 議事堂の石』によると、答島は「暗灰色~灰色の石灰岩で、方解石の細い脈が多い。六射サンゴ類やウニの棘などを少量含んでおり、おそらく中性代のジュラ紀のものであろう」とある。ただ、西本さんの話によると、この本が書かれた時代から研究が進み、現在はジュラ紀の前、三畳紀に形成されたと考えられているらしい。どちらにしても、もはや恐竜の時代だ。

大広間でボルテージが一気にあがる

国会内の廊下の、壁、扉の額縁などに使われている石材は、すでに同じ石材は手に入らない貴重なものばかりだ。
高知県産『金雲』
高知県産『金雲』
写真は、後で大きさを比較するため、できればスケールを入れて撮るのが好ましいが、なければ指やシャーペンなどを入れて撮る
写真は、後で大きさを比較するため、できればスケールを入れて撮るのが好ましいが、なければ指やシャーペンなどを入れて撮る
このあたりで使われている石は、はっきりいって岩石としては、どれもみんな同じ石灰岩である。しかし、同じ石灰岩、大理石でも丁場(石を切り出す場所)が違うと、色も模様も微妙にかわってくる。石屋さんが、その色や模様の違いによって、異なった商品名をつけるので西本さんでも、なんという石材なのか即座に同定するのは、なかなか難しいという。

そんななか、ひときわ目を奪われたのが、御休所前広間の床の大理石モザイクだ。
このモザイクタイルすごいですね
このモザイクタイルすごいですね
金華、茨城白、白鷹、小桜、薄雲、紅雲、鵬足、遠目鏡、美濃赤、土佐桜、新淡雪、貴蛇紋+2種類の、14種類の大理石が使われている
金華、茨城白、白鷹、小桜、薄雲、紅雲、鵬足、遠目鏡、美濃赤、土佐桜、新淡雪、貴蛇紋+2種類の、14種類の大理石が使われている
色の違う大理石を、細かく割って形をそろえ、ひとつずつ埋め込んでいって見事な模様をつくりあげている。

西本さん「まさに、採算度外視で作られたものですね、すばらしい。西村さん、ここ化石ですよ」
白っぽいところが化石らしい
白っぽいところが化石らしい
――これは何の化石ですか?

西本さん「ウミユリがサンゴかでしょうね。それにしてもすごい、これ昔の石工さんがコツコツ作ったんだろうなあ。すばらしいなあ」

この大理石モザイク模様は、14種類からなる60万個の大理石のかけらをひとつずつ組み合わせていって作ったものだ。さらに、大理石のモザイク模様の床は、ここだけではない。中央広間にもあり、そこは100万個のかけらを組み合わせているという。
これだけ手間のかかる床は、他の建物ではなかなかなない。クッションフロアをパーッと敷いただけのオフィスビルなんかとは次元が違う。国会議事堂という建物が背負っているものの凄みを感じ入るしかない。
撮影した編集部の古賀さんいわく「キューブリックっぽい写真が撮れた」
撮影した編集部の古賀さんいわく「キューブリックっぽい写真が撮れた」
幅木は、徳島県産「加茂更紗」、壁も徳島県産の「時鳥」
幅木は、徳島県産「加茂更紗」、壁も徳島県産の「時鳥」
すっかり、貴重な石材の写真を撮るのに夢中になってしまったが、ここで見ておきたいのは、皇族室や御休所の中にある暖炉の石だ。
皇族室の暖炉は北九州産『金華』
皇族室の暖炉は北九州産『金華』
御休所内の暖炉は静岡県島田市産の『紅葉石』
御休所内の暖炉は静岡県島田市産の『紅葉石』
中に入って写真を撮ることはできないのだけれど、ガラス越しにみることができる。

どちらも大理石なのだけど、なめらかな縞模様が美しい『金華』と、茶褐色の上等な陶器のような落ち着いた色合いの『紅葉石』、どちらも現在は手に入らない貴重な石である。
紅葉石の方なんかは、その色合いだけでも存在感があるのに、さらに細かな模様が彫り込んで特別感を盛っている。

テレビによく映る「小桜」

またもや衛視さんに促され移動。石ひとつひとつをじっくり観察してしまうので時間がかかりすぎているのである。
すんませーん
すんませーん
しかし、やはり石が気になる。階段の手すりや柱の存在感がすごい。使われている石はなんだろう?
小桜、といわれてもなんだかわからないが
小桜、といわれてもなんだかわからないが
――西本さん、柱のこの石は……加茂更紗ですかね?

西本さん「いや、これは『小桜』ですね……小桜は山口の秋吉台産の大理石のひとつですね」

小桜は、名古屋市役所本庁舎の玄関ホールや手すりにも使われていて、国会議事堂で使 った小桜の余りを使って作ったといわれている。名古屋市役所は、国会と同じ石を使っているということになる。もし仮に国会が名古屋に移転しても、石レベルでは問題がないのではないか。
ほんのりピンク色できれいですねー
ほんのりピンク色できれいですねー
――こういった石はいまはもうとれないのですか?

西本さん「いや、石自体は今でもあるんです。でも、例えば国立公園なんかになっちゃうと、掘れなくなっちゃうんです。だから貴重なんです」

丁場によって微妙な色の違いがある大理石、たしかにそこでの採石ができなくなると、同じような模様の石はとれなくなるから、貴重になるわけである。

西本さん「小桜は、議場の回りや議員控室なんかの壁にも使われてるので、テレビのニュースとかで、議場から出てきた議員をつかまえてぶら下がり取材する時に、後ろによく写ってるんですよ」

――やっぱり、後ろの石に目が行くのか。

ニュースで出てきたぶら下がり取材の後ろの石材はなにかを推理するのは、やってみるとたのしい。

例えばこれなんかは、後ろに小桜が写っているし、こちらの中ほどにあるこの写真は、壁が日華石で、扉の額縁が加茂更紗だ。

数年前のニュース映像だが、下の画像に写っている扉の両脇の石は加茂更紗のようにみえる。
衆議院側だと思うが、石材がうつっている(JNNニュース映像より)
衆議院側だと思うが、石材がうつっている(JNNニュース映像より)
これは、国会のニュース映像を見る楽しみが増えた。
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